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著作権法って最近大きな動きがありましたね

平成30年末から平成31年初めにかけて、著作権に関して2つの大きな法改正がありました。また、今年は、コロナ対策の一環として、教育の情報化に対応した改正法が施行されました。

1 TPP11発効に伴う著作権法改正
  → 平成30年12月30日施行
2 デジタル化・ネットワーク化に対応した著作権法改正
 (教育の情報化に対応した著作権法改正を除く)
  → 平成31年1月1日施行
3 教育の情報化に対応した著作権法改正
  → 令和2年4月28日施行

平成28年改正法 平成30年12月30日施行

平成30年12月30日にTPP11協定が発効したことに伴い、同じ30日から平成28年改正著作権法が施行されています。

著作権の保護期間がすべて70年になりました(平成28年改正法

著作物等の保護期間は、以前は、映画の著作物が70年、それ以外が50年でした。

平成28年改正著作権法の施行により、映画の著作物以外の著作物についても、すべて70年に延長されることとなりました。

意外に周知されていないのですが、著作権の保護期間は70年となりましたので注意が必要です。

実は、この保護期間の延長、世界的に著名な画家である藤田嗣治 Léonard Foujitaの著作物の保護期間が大きな影響を受けました。

藤田嗣治といいますと、日本では、ポーラ美術館に藤田嗣治の作品が多数所蔵されています。

さらに、昨年、後期の代表作である「二人の祈り」と「夢」が、名古屋市美術館に寄贈されました。

藤田嗣治は1968年(昭和43年)1月29日にパリで亡くなっています。

改正前は著作権の保護期間は死後50年でした。

死亡した年の翌年の1月1日から起算しますから、保護期間は、1969年1月1日から起算して、50年後の2018(平成30)年12月31日までとなっていました。

ところが、平成28年改正法が平成30年12月30日に施行したため、藤田嗣治作品の著作権の保護期間は、さらに20年、2038年12月31日まで延びることとなりました。

一部が非親告罪化(平成28年改正法

それまで告訴が必要だった著作権侵害罪のうち、海賊版を販売する行為やネット配信をする行為など、対価を得る目的又は権利者を害する目的で、有償著作物について原作のまま譲渡、公衆送信、又は複製を行い、本来得ることが見込まれる権利者の利益が不当に害される場合には、告訴が不要となりました。

平成30年改正法 平成31年1月1日施行

さらに、デジタル化・ネットワーク化に対応した平成30年改正著作権法が(教育の情報化に対応した規定を除き)1月1日に施行されています

人工知能開発のための学習用データとして著作物をデータベースに記録するように、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用、一定のキャッシュやバックアップの作成など電子計算機における著作物の利用に付随する利用等については、通常であれば権利者の利益を害さないと考えられる行動類型であるため、権利者の利益を不当に害さない限り、権利者の許諾なく利用できることが明確になりました。

既存の著作物を利用した情報検索サービスや情報解析サービスなど、新たな知見・情報を創出する電子計算機による情報処理の結果の提供に付随して著作物について軽微な利用をする場合などについては、権利者の不利益が軽微な行動類型であるため、権利者の利益を不当に害さない限り、権利者の許諾なく利用できることが明確になりました。

教育の情報化に対応した著作権法改正 平成30年改正法

教育の情報化に対応した規定についてはすでに書いています。

これまで、学校教育の現場では、先生と生徒の対面授業で著作物を著作権者の許諾なくコピー(複製)したり譲渡したりして使うことや、対面授業の様子を離れた場所に中継することは認められていました。

しかし、著作物の内容を遠隔授業でネット配信する場合は、利用の都度、個々の権利者の許諾とライセンス料の支払が必要でした。

平成30年の著作権法改正では、教育の情報化に対応した規定等が著作権法の中に整備され、権利者の許諾は不要で補償金を支払えばよいという内容になりました(著作権法35条1項、2項)。

しかし、この規定は、補償金の額などを巡って折り合いがつかず、施行の目処が立っていませんでした。

ところが、新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、オンラインでの遠隔授業等のニーズが急速に高まったたため、令和2年4月28日に施行し、令和2年に限り緊急かつ特例的に、補償金を無償とする形での運用をすることになりました。

令和2年改正については改めて。

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