大企業を対象に4月1日にスタートした「同一労働同一賃金」制度 中小企業は来年4月1日から適用されます
正社員と非正社員との不合理な待遇の違いを解消する「同一労働同一賃金」制度。
大企業については、既に4月1日から適用となっています。
同じ企業内で働く正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差が禁止されます。
また、パートタイム労働者・有期雇用労働者が待遇差の内容などについて事業主に対して説明を求めることができるようになりました。
コロナ対応に追われるところが多いかとは思いますが、中小企業についてもこのルールが来年4月1日から適用されますので、準備しておく必要があります。
[1]待遇の違いを是正する「改革」の背景にあるもの
1985年から2010年の25年間、労働需要側の人件費コスト節約、仕事の繁閑への対応等のため、多くの産業で非正規雇用労働者(非正社員)が増加し、非正規雇用労働者比率が上昇していました。
その後、2013年以降からは正規雇用労働者(正社員)の数も増加傾向にありましたが、非正規雇用の職員・従業員の数は趨勢的に増加傾向にありました。
令和元年版 労働経済の分析 第1部第2章第4節 就業者・雇用者の動向
このように、非正社員が増加傾向にある一方、正社員と非正社員との待遇の差が深刻な問題として取り上げられていました。
そこで、働き方改革の一環として、雇用形態にかかわらず従業員の待遇を公正なものにするため、様々な法改正がなされることになったのです。
ここで、正社員(正規雇用労働者)とは、事業主と期間の定めのない労働契約を締結している、フルタイムの労働者を指します。
非正社員とは、正社員ではない労働者のことですが、パートタイム労働者(短時間労働者)、有期雇用労働者、事業主に直接雇用されていない派遣労働者を総称したものです。
パートタイム・有期労働者法では、パートタイム労働者(短時間労働者)、有期雇用労働者を次のように定義しています。
~短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期労働者法)2条の定義~
短時間労働者
1週間の所定労働時間が、同じ事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間と比べて短い労働者
有期雇用労働者
事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者
[2]待遇の違いを是正する「改革」とはどんなものか?
働き方改革の一環として、雇用形態にかかわらず従業員の待遇を公正なものにするため、様々な法改正がなされています。
まず、同じ企業内で働く正社員と非正社員との間の不合理な待遇差が禁止されます。【不合理な待遇差の禁止】
また、非正社員が待遇差の内容などについて事業主に対して説明を求めることができるようになりました。【待遇差に関する説明義務の強化】
このように、従業員の待遇を公正なものにするため
不合理な待遇差の禁止
待遇差に関する説明義務の強化
が推し進められることになりました。
さらに、行政による事業主への助言・指導や裁判外で紛争を解決する仕組み(ADR)の整備も進められます。
こうした内容は、パートタイム労働者・有期雇用労働者についてはパートタイム・有期労働者法で、派遣労働者については労働者派遣法で、明確に定められることになりました。
[3]不合理な待遇差の禁止とはどのようなものか?
それでは、不合理な待遇差の禁止とは具体的にどういうものなのでしょうか。
均衡待遇と均等待遇の2種類が謳われています。
まず、企業は、基本給・賞与といった待遇について、非正社員と正社員の待遇との差についてバランスがとれていなければならない。これを均衡待遇といいます。
より具体的には、
(1)職務の内容、
(2)職務の内容・配置の変更の範囲、
(3)その他の事情
の各要素から、
その待遇の性質・目的に照らして適切と認められるものを考慮して、
不合理と認められるような待遇の差を設けてはいけない、
というものです。
これは、パートタイム労働者・有期雇用労働者についてはパートタイム・有期労働者法8条で、派遣労働者については労働者派遣法30条の3第1項で明確に定められることになりました。
次に、
職務の内容、職務内容・配置の変更の範囲が同じであれば、差別的取り扱いをしてはならない。
これを均等待遇といいます。
これは、パートタイム労働者・有期雇用労働者についてはパートタイム・有期労働者法9条で、派遣労働者については労働者派遣法30条の3第2項で明確に定められることになりました。
[4]この話の続き、詳しいお話は……
コロナ対応に追われるところが多いかとは思いますが、中小企業についてもこのルールが来年4月1日から適用されますので、準備しておく必要があります。
中小企業が「同一労働同一賃金」どのように対応すべきかについては、こちらをご覧ください。
具体的にどのような場合に不合理な待遇差といえるのか、どのような場合に差別的取扱いといえるのか解説しています。
新型コロナウイルスの感染拡大真っ只中だった4月1日、改正労働基準法が施行されたことについては、6月7日にお伝えしています。
またパワーハラスメントに関しては、職場におけるパワーハラスメント対策を義務化する改正労働施策総合推進法が来月1日(令和2年6月1日)に施行されます。中小企業については、2年後の令和4年3月31日まで適用が猶予されます。
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