コロナ禍から振り返る平成の竹下通り
私は小学生の頃に初めて原宿・竹下通りに来たときの記憶をよく覚えている。
ごちゃごちゃと雑多にまみれているが、まるでパレードのような明るさのごちゃごちゃ感……。
全長350m程度の一本道の出口を目指してたくさんの人がずっと続いていて、お祭りのような光景に驚いた。そして当時はタレントショップが数多く並び、またクレープ屋の甘い香りに胸がときめいた。
子供の頃、大好きだった雑貨屋さんも竹下通りにあり、今でも竹下通りを訪れると、たとえお店は変わっても、外観が当時からずっと変わらない建物もあるので不思議な気分になる。
現在はコロナ禍の打撃も大きく、残念ながら閉店を余儀なくされているお店も少なくないが、初めて竹下通りのあのワクワク感は今でもよく覚えている。
今回は90年代～00年代当時の「イラストマップ」と比較しながら原宿・竹下通りの昔と今を振り返りたいと思う。
▪若者の関心と自己表現の入り口
竹下通りの歴史を振り返ってみよう。
“竹下通り元年”と呼ばれた1974（昭和49）年、明治通りに複合ビル「パレフランセ」がオープンした。
この年から原宿の商店街化がどんどん進み、1977年にはクレープ店が開店、瞬く間に原宿名物として大人気となった。
1979年頃にはブティック「竹の子」の衣装を着て歩行者天国で踊る竹の子族が一躍話題になったことも有名だ。
1987年、日本テレビ系「天才・たけしの元気が出るテレビ」のグッズ販売専門店「元気が出るハウス」が開店したのをきっかけに、原宿は京都の嵐山と並ぶタレントショップのメッカとなった。
90年代前半の竹下通りを訪れたことがある方は、タレントショップや生写真を売っていたお店が乱立していたイメージが強いという人も多いのではないだろうか？
竹下通りの入り口にはビートたけしさんの「KItano Club」が、竹下通りの喧騒から離れた「ブラームスの小怪」に入ると、とんねるずの「セシカ」が、またそのまま道を進みクレープ屋さんを曲がると田代まさしさんの「MARCY’s」が……と、今では大御所となった芸人さんや当時人気だったタレントがショップを構えていた。
全盛期には42店舗ものタレントショップがあったそうだ。
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※1989年Seventeen3月号 / 集英社
改めて見ると、タレントショップと言えども、アイテムやグッズの展開の多さにびっくりする。
※老舗ショップ「ブティック 竹の子」は今も健在。
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それらのショップがなくなった後もこの通りの人出は衰えることなく、雑貨店「大中」や「いろは堂」の人気とともに90年代中期からさらに「安くてカワイイ」雑貨や服屋が多くなっていった。
当時の雑誌を見ると「チープでファンキー」という見出しの通り、当時の竹下通りには古着屋さんも多く、お小遣いで流行の服や小物が手に入るところも魅力的だった。
「安くてカワイイ」といっても現在のファストファッションとは違い、数多くあるお店から宝探し感覚でお手頃なカワイイ洋服や一点物の洋服を探すのも、当時の竹下通りの醍醐味。1994年のMAPと比べてみると、まだプリント倶楽部が登場する前だというのにカメラ屋さんが通りの入り口にあり、若者たちの立ち寄り場所として紹介されているのも興味深い。写真を撮って思い出として残すのは、いつの時代も若者に欠かせない行動なのだろう。
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※1994年プチセブンno.16 / 小学館
※1994年プチセブンno.16 / 小学館
拡大したMAP。現在の竹下通りと比べるとだいぶ変わってしまったのがよく分かる。94年もまだタレントショップはチラホラある。今は亡き、森永LOVEに時代を感じてしまう。
※90年代前半に主に竹下通りで買って貰ったヘアアクセサリー達。「アイドルワンダーランド」に売ってる雑貨が大好きだった。これは今でも私の宝物。
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そして1990年代後半になると今度は、日本のサブカルチャーとして誕生したゴスロリやパンクファッションに身を包む若者で賑わう。
アーティストにも人気だったパンクファッションショップの「SEXY DYNAMITE LONDON」や、90年代後半に大ブレイクしたヴィヴィアンウェストウッドのレアな古着も取り扱っている「ラグタグ」、個性的なヘアやカラーリングが得意の「GIRL LOVES BOY」、キッチュでPOPなアイテムが揃う「カニバルズ」。
また竹下通りの路地に入り少し小道を進むと「カリスマ美容師」と言う言葉を世に知らしめた「アクア」……と、流行のみならず、メイクや髪型ファッションを通して自由に自己表現ができる場へと進化していった。
また当時の「ラフォーレ原宿」は大人気のスーパーラヴァーズを始め、「アルゴンキン」「プトマヨ」「ピースナウ」「BA-TSU」と人気ショップが並び、竹下通りはその自己表現の「入り口」的な役割を果たしていた。
この時代の個性的なファッションは海外でも大変人気が高く、後に外国人観光客が原宿に増えるきっかけのひとつにもなった。
90年代、竹下通りは若者の流行とともにさまざまな変貌を遂げたが、お小遣い範囲内で買えるお店が多く、通りを歩いただけで流行が分かり、また自由な自己表現もその入り口として常に若者の関心とカルチャーに寄り添って存在し続けていった。
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※1998年KEROUAC(ケラ！)no.2 / バウハウス
※1998年KEROUAC(ケラ！)no.3 / バウハウス
細かく店舗を記載しつつも、ゴミのポイ捨てや住宅街の騒音の注意喚起を見ると流石「ケラ！」と思ってしまう。
※1999年プチセブンno.19・20 / 小学館
ティーン誌にある渋谷&原宿MAPはいつの時代も初々しい感じがして良い。
▪ゼロ年代は日本が誇る世界のカワイイカルチャーへ
ゼロ年代に入るとまた少し、時代の空気も変わり竹下通りの流行も変わっていった。
00年にはそれまで渋谷にいたギャルの間でも原宿人気が高まり、ファッションの系統の垣根は徐々になくなり、いろんなタイプの人が行き交うようになっていった。
そして90年代の「原宿系」は00年代には「原宿KAWAII」へと徐々に進化していった。
2013年には「東急プラザ 表参道原宿」の出店や「ラフォーレ原宿」の改装、そしてクレープをしのぐパンケーキブームなどによってさらに賑わっている中、カワイイを集めた新商業施設「CUTE CUBE HARAJUKU 」がオープンした。
「CUTE CUBE HARAJUKU 」にはカワイイカルチャーの第一人者であり、90年代から人気のショップ「6%DOKIDOKI」のプロデューサー増田セバスチャン氏が手がけたオブジェも設置してある。
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そして竹下通りの「安くてカワイイ」はさらに変化を遂げ、韓国コスメの専門店が続々とオープン、またアパレルショップ「WEGO 1.3.5」やダイソーの横に「ビックカメラセレクト原宿店」もオープンした。
※韓国コスメの中でも人気の「3CE」。
近年の竹下通りの進化は目を見張るものがあるが、いまだ竹下通りの入り口には「パリスキッズ」があり、あれからたくさんの進化を遂げた「プリクラ」の場所も、路地を入れば老舗の古着屋さんが変わらずそこにあるというのが面白いところだ。
お店は変われど、時代が変われど、昔と今がうまく混ざっているのが竹下通りの大きな魅力だと私は思う。
※写真・全て2020年撮影。パリスキッズは今も変わらない。一番最後の写真は「大中」跡地。お店は変わってしまったが、空間自体はあの頃のままで不思議な気分になる。
※2007年4月号Seventeen / 集英社 /
00年代に入ってからも色んなお店が様変りした。食べ物の流行も振り返ると面白い。
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▪新たな竹下通りの期待
コロナ禍で「竹下通り」もまた人出は以前より少なくなってきているが、それでもなお、スィーツを食べてはしゃいでいる学生や買い物を楽しんでいる若者を見ると「あぁ竹下通りだなぁ」と実感する。
やっぱり原宿駅から竹下通りのアーチをくぐったあのワクワク感や原宿に来たという実感は、竹下通りだからなのだろう。
90年代の頃と同じように、幾多の自己表現やカルチャーに寄り添い、またそれに対し人々が寛容であるというこの場所の価値に変わりはない。
私が90年代に出会ったファッションやカルチャーの「入り口」であり、たくさんの素敵な雑貨との「出会い」の場だった竹下通りが、次世代の若者にとっても素敵な「入り口」と「出会い」の場であって欲しいと切に願う。
今現在は長期化するコロナと戦っているが、コロナ明けの新たな竹下通りに希望を持たずにはいられないのだ。