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何はともあれ、まずはアイブロウから

太眉がトレンドマークの井上咲楽さんが太眉をカットした画像をアップしたところ、そのあまりの変貌に話題になったのは記憶に新しい。かのモノマネメイクの達人ざわちんも「モノマネメイクで似せるのに一番気をつけるのは眉」というぐらい「眉」は地味なパーツながらも顔の中では重要なポジションなのかもしれない。

今回は地味ながらも平成のなかで様々な変貌を遂げた「アイブロウ文化」について語ろうと思う。

◆ナチュラルとパワフルウーマンが共存した80年代~90年代前半

アイブロウ文化は時代の雰囲気と深い関わりがあるのではないか私は思う。
80年代の「アイブロウ」というとなんとなく「太眉」をイメージする方もいるのではないだろうか?

80年代をイメージすると、今では大御所のアイドルもたくさん誕生したのもあるが、当時のファンシーな衣装を身に纏い歌うアイドル達の姿からなんとなく「かわいい」イメージがある。

だがその一方で、80年代は厚い肩パッドの入ったパワースーツを着たキャリアウーマンの時代の幕開けでもあった。

そんなキャリウーマン時代ならではの「媚びない女」というキーワードから生まれた流行が「男性的な太い眉」だった。
82年にカネボウのCMでブルック・シールズが来日し、また女優の石原真理子さんの人気も相まって美人顔の条件の中に「意思的な太い眉」が入り全国的に広まる。

80年代後半から90年代前半はバブル全盛期とまたその崩壊と変動が大きい大変な時代だったが、そんな騒がしい時代の中でもディスコブームもあってからか「太眉ブーム」はずっと健在だった。
またバブル崩壊後から始まった90年代前半の「ナチュラルブーム」も相まって眉を剃ったり抜いたりする習慣は廃れ、93年頃になるまでほぼ行わられなくなった。

いじったとしても「透明マスカラで立たせる」か「足りない部分や輪郭をペンシルで太くハッキリと描きたす」と言ったようなとにかく「眉は太い方が美しい」という美意識がそこにはあったのである。

80年代から90年代前半にかけては、ピンクハウスのようなフリルなファッションでも今井美樹さんを筆頭にしたナチュラルなファッションでもイケイケボディコンギャルでも系統は違えど、「太眉」が共通して美のスタンダードだったのは面白いところである。

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※1988年CanCam/小学館
90前半まで完全な太眉時代。どの系統もリップやアイシャドウにはこだわりがあるが、眉に関してはブラシで整えるぐらいで基本的にいじらずが鉄則だった。

◆アムロちゃん、スーパーモデルの細眉ブームで改めて「眉」が見直された90年代後半

そんな太眉文化に一旦終止符を打ったのが93年。ナオミ・キャンベルから一斉に火がついたスーパーモデルブームだ。
ナオミ・キャンベルのトレードマークであるアーチ形の細眉とヌードベージュの口紅は90年代を通してトレンドになる。

95年からはより近い憧れの存在として安室ちゃんの細眉も大ブームになった。当時、安室ちゃんの極細に近い細眉はくりっと大きな安室ちゃんの瞳をより際立たせ話題になる。
93年以降、雑誌の美容ページには眉メイクを指導する特集が相次ぎ、96年には眉毛テンプレートという眉の型紙が大ヒット商品になる。

また95年、96年の「茶髪ブーム」から眉のカラーリングも一時期ブームになった。この頃から芸能人やモデルの眉メイクの注目度もより高まっていったように感じる。

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※1996年Popteen7月号/角川春樹事務所

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※1996年ViVi10月号/講談社

96年の雑誌はどれも年代問わず安室ちゃんだらけだったが、それだけ安室ちゃんの登場はまさに衝撃的だったと言える。
この時は安室ちゃんの細眉も勿論人気だったが、松田聖子さんや神田うのさんの整った「細眉」も人気だった。意外かもしれないが「眉染め」はこの頃からあり、茶髪ブームの到来とともに眉染めをしている者もいた。
80年代後半から90年代前半にかけての眉ブラシで整え、軽くペンシルで太めに描いていた眉メイクも90年代半ばには「眉カット」して「眉尻を足す」というスタイルになる。
アイブロウペンシルもポーチのスタメンアイテムになった。

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※1996年トニー田中眉毛テンプレート広告
ここ最近はすっかり、見かけなくなったが、「眉毛テンプレート」は割りと眉毛アイテムの定番商品で00年代に入っても売っていた。もしかしたら、人気ヘアメイクアーティスト監修とかで令和に入ってまた再熱するかも…なんてひっそり思っている。


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※1997年5月号POPteen / 角川春樹事務所

95年、96年の過度な細眉から徐々に形が太くなってきたが、眉尻の角度へのこだわりはまさに90年代後半といったところだろう。松雪泰子さんのモードさが漂う眉毛や朋ちゃんのキレイな曲線のエレガントな眉毛も人気だった。

一方で原宿系では90年代後半は「ちび眉」が流行っていた。服装の系統関係なく、「角度をつける」ことや「細さ」は流行だったが色素の薄さや後に07年辺りで流行る「薄眉」に近いトレンドを一足先に取り入れていたのはなかなか興味深い。

00年代に入ると90年代後半のような極端な細眉ブームは去りつつも、「眉をキレイに整える」というのはもはやメイクにおいてスタンダードになっていく。00年代に入ってからアイブロウもAYUのような髪色に合わせたより明るいカラーが好まれ、への字にキュッと角度をつける「への字眉」が支持されるようになった。

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※1998年Zipper11月号/祥伝社
基本的に90年代後半は系統関係なく「細眉」と「眉尻」の角度は人気だったが、そんな中でもZipperの「チビ眉」はカジュアルな服と相性がよく原宿系に人気だった。

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※2001年POPteen4月号 / 角川春樹事務所

00年代に入ると眉頭から角度をつけたへの字に見える「への字眉」が定番となる。カラーリングもさらに進化が進み、眉毛を明るくするのは定番となった。この辺りからアイブロウパウダーも定番となる。また色付きの眉マスカラも定番になった。

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◆時代とともに進化していく「眉」

平成のなかでも太眉から細眉まで様々な変貌を遂げたが、2013年からアイブロウメイクも空気が変わる。現在でも人気の「オルチャンメイク」の登場である。

白くて透明感のある肌と自眉を生かした平行の太めのナチュラルな眉毛が特徴的なこのメイクは、第2次韓流ブームがピークを迎えたこの頃から、美容系のWEBメディアや若年層向けファッション雑誌などで「オルチャンメイク」として定期的に取り上げられて話題になった。

一方で07年あたりの原宿系ではカラーリングでさらに薄くした色素が薄い系の眉がオシャレな「垢抜け眉」として定番化していった。

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※2007年Zipper7月号 / 祥伝社

私の周りではまさにこの「薄眉」をトライしていた者が多く、遠方から友人達の全力な悲鳴が聞こえそうだが07年の流行として忘れ去られぬよう記しておく。
彼女達にとっては黒歴史かもしれないが、私から見ると「眉毛」をただ「顔」の中にあるパーツとして捉えているのではなく、ファッションから全体のバランスをみて「引き算」として「眉毛」を薄くしているのがとても斬新で前衛的だったと思う。98年の「ちび眉」もだが、原宿系女子の服を含めた全体のバランスで「眉毛」のポジションを変えるというのはまさにオシャレさんの証だといえる。

2010年代あたりから全体的に「次の時代への進化」を感じるが、アイブロウに関しても反映されていると思う。
また眉サロンや「美眉」という言葉がと認知されたのも2010年あたりの特徴だ。

最近のyoutubeや雑誌を見ていると相変わらず「モテメイク」は人気で興味の対象だが、平成から令和にかけてより「柔らかさ」や「ナチュラル」や「ヌケ感」が見直されていてそれが眉にも反映されていると思う。

特にアイブロウに関しては近年だとパウダーをふわっとのせたり、自分の骨格に合わせ眉の形を決めていく手法が定番だ。

そんな中でもつい最近まで「困り眉」といった眉尻をあえて若干オーバーに下げて描く眉毛も流行っていたから眉毛の流行はその時の時代を感じて面白い。

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※2014年ざわちんMake Majic / 宝島社
モノマネメイクの達人がどれだけ「眉毛」に重点を置いているか全力で分かる。
2013年辺りから徐々に注目されたオルチャンメイクだが、特にざわちんのオルチャンメイクはとても取り入れやすく分かりやすい。
ちょっと大げさな涙袋や黒カラコンも含めて見ると、つい最近のことのように思えても時代の流れを感じてしまう。
オルチャンメイクの定番の「平行眉」も昔は太い一本線のような眉だったが、最近はナチュラルで眉尻が少し下がったような「平行眉」に進化しているからオルチャンメイクの流行も追っているとなかなか面白い。

定番になりつつある、自分の骨格に合わせた最近の「太めなナチュラルな眉」を見ると、平成に迷走しまくっていた私の「眉メイク」も紆余曲折を経て「令和」になり一周以上回ってやっとちょうどいいバランスになってきたのかもしれない。

改めて「平成の眉メイク」の歴史を振り返ると、私が下手くそながらにもメイクをし始めた90年代後半から今までと時代の流れとともに色々自分の顔を演出してきたなと思う。

平成で特に大したことをしたわけではないが、この顔とメイクとともにまさに「平成」という時代を生き抜いたのである。

そう思うと、「年をとる」ということのネガティブな気持ちはどこかへ行ってひとつの時代を過ごした自分に対してなんだか少し誇らしくなってしまう。

ひとつの流行を終えるごとに私たちはアップデートされ、またひとつ発見や改善をして美しくなる。

年を重ねるごとに増す、女の顔の歴史は侮れない。




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