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2章 スイデン夫妻、モクレン館へ⑵


モクレン館は、商店街の裏手にある。
建物は、鉄筋コンクリート5階建で、3階から5階は、建物の真ん中が、真四角に空いた構造になっている。
大雪が降るとその空間に雪が降り積もり、2階部分の四面ガラス屋根の周辺に雪が溜まる。
3階から上の階には、居室の外にベランダがついている。
そこに各部屋のエアコンの室外機が置かれている。それを隠すように、白い板状のものが3階から5階まで貼り付いている。
それがデザインとなって、建物の外観を豊かにしている。
その板の横に、
空室あり 入居者募集中 の無粋な垂れ幕が下がっている。
スイデンとイチョウは、5階に入居した。

入居の契約時に席に着いたのは、片口施設長と岩田ケアマネ、(介護職員)仲田チーフの3人である。
その時、施設長から忠告があった。
「自宅は急いで売らないでください。施設の暮らしが合わない、と思っても帰る家がないと、つらいですから」
実際、2人は入居してからも、モクレン館と自宅を、何度となく往復して、季節の衣類などを持ち出すことになった。

しかしスイデン夫婦は、自宅が空き家になると火災保険の加入を断られた。
それを機に、スイデンは、大事なものを売却した。
絵画数点、段ボール箱一杯のカメラ、故郷から送って貰った大皿、古いメジロ籠などを売却した。業者は、イチョウが後生大事に持っていたマンドリンまで引き取った。
2人の宝物は、あらかた消失し、家の中はみすぼらしくなった。


こうして、スイデンとイチョウは、モクレン館の新しい暮らしを始めることになった。


いよいよ、次は3章へ突入!
次の章では、モクレン館での奇妙な出来事が次々と展開される。
入居してすぐ、イチョウは、自室の壁から不思議な音を聞こえることに気が付く……
→(小説)(小説)笈の花かご #11 
3章 モクレン館5階の怪音⑴  へ続く



(小説)笈の花かご #10 2章 スイデン夫妻、モクレン館へ⑵
をお読みいただきましてありがとうございました
2023年10月21日#1 連載開始
著:田嶋 静  Tajima Shizuka
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