埼玉県追検査|公立高校入試統計問題2023
(1)度数分布表から平均値(※要注意)
埼玉県でこの問題を出題するのは,23年度入試までぎりぎりセーフ。24年度以降は出題すべきではないのではないか,という疑惑の問題になります。
というのは,埼玉県の公立中学校で採択されている教科書のうち,東京書籍の教科書ではこの学年まではコラムとして扱われていて,次の学年(24年度受験生)から使用する新しい版の教科書では削除されている内容だからです。
また,指導要領やその解説にも,度数分布表やヒストグラムから平均値を求めることを扱うことにはなっていません。
同様に,少なくとも県内公立中学で東京書籍を採択している地域がある都道府県では24年度以降,ほかの教科書で学習した方が有利になるのではない問題,ということになります。
という御託をお伝えしておいて,実際に度数分布表から平均値を求める方法はどうなっているか,というと,
(1)各階級について階級値(階級の真ん中の値)を求める。
(2)すべての階級について(階級値)×(度数)を求め,合計する。
(3)(合計値)÷(度数の合計)=(データの個数)
細かいデータの値はわからないので,それぞれの階級にあるデータをすべて階級値だとみなして平均を取りましょう,というやり方です。言われてみれば,まあいい考え方かも。でもこのやり方を習っていなければ,この求め方が自然に出てくるということはないでしょう。
では,度数分布表に書き込みながら計算してみましょう。
660÷30=22ですので,求める平均値は22。
(2)標本の選び方
傾向を知りたい集団全体(母集団)の傾向を知るために,全体を調べるのではなく,母集団の一部として取り出して実際に調べるのが標本調査です。そして,取り出したものを標本といいます。
標本をもとにして母集団の傾向を知るためには,母集団と同じ傾向を持つように,標本を偏りなく取り出す必要があります。
それができているかどうか,アとイそれぞれ見てみましょう。
アは,母集団は「日本人」となりますが,標本を取り出すための集団は「あるサッカーの試合の全観客」から選んでいます。これでは,「サッカーが好き」という答えが多いのが予想されますね。これでは日本人と「同じ傾向」とは言えません。適切ではありません。
イは,母集団は「ある市の(ごみを出す)市民」で,そこから無作為に選んでいますので,母集団と同じ傾向が出ることが期待できます。適切です。
解答は不適切な方を答えますので,注意を。
答
(参考)階級値による平均について,各教科書の記述
啓林館 本文「1人1人の具体的な睡眠時間はわかりません。このような時でも,度数分布表に整理すると,平均値を求めることができます。度数分布表から平均値を求めるときには,1つの階級にはいっているデータの値は,すべてその階級の階級値であると考えます。」
東京書籍 なし
学校図書 本文「もとの値の代わりに,ある階級に含まれる値は,どれもその階級値を取るとみなして計算する。度数分布表から平均値を求めるには,次の手順で行えばよい」
数研出版 コラム「・・・のデータをヒストグラムに表したものです。このデータの平均値を,大まかに予測する方法を考えてみましょう。・・・ひとつひとつのデータの値がわからないとき,各階級に属するデータの値は,すべてその階級の階級値をとるものとみなすことがあります。階級値を使うことで,平均値の大まかな値を求めることができます。・・・一般に,データの値から求める平均値と,度数分布表から求める平均値は一致しませんが,その差は大きくありません。・・・」
教育出版 なし
大日本図書 本文「度数分布表が与えられているときは,もとの資料の個々の数値がわからなくても,階級値を使っておよその平均値を求めることができます」
日本文教出版「データの個々の値がわからないとき,度数分布表やヒストグラムからおよその平均値を求める方法があります。・・・度数分布表がヒストグラムから平均値を求める場合,その階級の取り方次第で得られる値が変わります。・・・」
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