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【内部監査Tips】T字型人財への進化:日米の視点で探る内部監査人の理想像
はじめに
内部監査の世界では、日米間で興味深い以下のような対比(※)が存在します。
この違いは、単なる文化の差異ではなく、内部監査人の理想像を探る上で重要な示唆を与えてくれます。
(※)本稿では日米間の比較を例示していますが、これは筆者の直接的な経験に基づくものです。他の国や地域との比較でも、類似の洞察が得られる可能性があると考えています。
日米の内部監査人の特徴比較
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2004年に米国子会社の内部監査部門に派遣された経験から、私はこの違いを肌で感じ、その後も米国の内部監査人との対話を通じて、このテーマについて深く考える機会がありました。
これらの違いは、しばしば白熱した議論の的となります。米国の内部監査人は日本の内部監査人の監査の専門性の欠如を指摘し、日本の内部監査人は米国の内部監査人のビジネスの知識・理解不足を問題視します。
しかし、私はこの対立が理想的な内部監査人像を探る上での重要な手がかりになると考えています。
1.T字型人財の重要性
「T字型人財」の概念は、1980年代に米国のコンサルティングファームで最初に使用されたと言われています。今日では、この発展系であるH字型やΠ(パイ)字型なども含め、人材・スキル領域の重要な概念として知られています。
T字型人財とは、ある特定分野での深い専門知識・経験(Tの縦棒)と、幅広い知識・経験(Tの横棒)を併せ持つ人材を指します。
内部監査の文脈では、監査の深い専門知識・経験とビジネスの幅広い知識・経験の両方を兼ね備えた人材がT字型人財と言えるでしょう。
2.なぜT字型内部監査人が必要か
そもそも、内部監査を実施する上では、ビジネスの深い理解が不可欠です。
例えば、ビジネスを深く理解することで、より的確なリスク評価が可能になります(1)。
また、ビジネスの共通言語で会話をすることで、経営陣や監査対象部門に、監査結果をより効果的に伝えられます(2)。
さらに、監査結果において、何らかの不備や課題を識別した際にも、ビジネスの深い理解によって、単なる指摘ではなく、実務に即した、より効果的な改善策を提案できます(3)。
(例)
(1)的確なリスク評価:
ある製造業の内部監査に際して、内部監査人がサプライチェーンの複雑なプロセスを深く理解していたことで、重要な調達リスクを特定し、経営陣に未然防止策を提案することができた。
(2)効果的なコミュニケーション:
IT監査の結果を、技術的な側面だけでなく、ビジネスへの影響の観点から説明することにより、経営陣の理解を得られ、的確なアクションにつなげることができた。
(3)効果的な改善提案:
ある金融業の内部監査人に際して、内部監査人が複雑な金融商品の構造を深く理解していたことで、より効果的なリスク管理手法を提案し、潜在的な損失を回避することができた。
3.T字型人財への進化
日米の内部監査人の特徴の違いは、理想的なT字型人財への進化に示唆を与えてくれています。
米国の内部監査人:監査などを通じて、様々なビジネスの実務知識を習得することで、横棒を強化
日本の内部監査人:監査の専門知識や実務経験を深めることで、縦棒を強化
→日本の内部監査人の特徴に焦点を当てると、リスクアプローチ監査などの実践により、専門性を高めていくことが求められます。
【内部監査Tips】リスクアプローチで監査リスクを抑え、内部監査の付加価値を最大化する|TAIZO (note.com)
まとめ
内部監査人の理想像は、監査の専門性とビジネスの深い理解を兼ね備えたT字型人財です。このような人財を増やすことで、内部監査の品質が向上し、組織全体の価値創造に大きく貢献することができます。
私たち内部監査人は、自身のキャリアを振り返り、T字型人財としての成長に向けて行動を起こす必要があります。それは、新しい分野への挑戦かもしれませんし、既存のスキルをより深めることかもしれません。
経営陣や内部監査部門長は、このようなT字型人財の育成をサポートする環境づくりに取り組むべきです。T字型人財への進化は、個人の成長だけでなく、組織の競争力強化にもつながります。今こそ、私たちは自らの「T」のバランスを見直し、次のステップに踏み出す時です。