沖縄新アリーナ 3つの日本初 ~Bリーグ決算考察⑧ 琉球ゴールデンキングス営業収入その他(アリーナ管理)編~
どうも。プロスポーツがどうやって稼いでいるのか、おはようからおやすみまで四六時中考えているTaiyoです。
前回のnoteは、沖縄新アリーナの指定管理者に指定されたキングスですが、そもそも指定管理者とはどんな仕組みなのかをまとめてみました。
今回は、沖縄新アリーナがいかにして完成したか、そしてその収益性について掘り下げてみます。
沖縄アリーナにおける3つの「日本初」
沖縄アリーナでは3つの日本初となる取り組みがあります。
1. コンテンツホルダーが計画設計段階から参加したアリーナ
2. コンテンツホルダーがアリーナ運営を担う
3.「スタジアム・アリーナ改革指針」策定後初の1万人規模アリーナ建設
順に見ていきましょう。
1. 沖縄アリーナはキングスが描いたアリーナ
キングスは「設計監修アドバイザー業務」として沖縄市から業務委託されて計画設計段階から積極的に参加しています。これは非常に画期的な事です。
公共施設はどうしても多目的用途にしたくて機能を詰め込み、結果として実際に使うプロスポーツ球団クラブ(コンテンツホルダー)が使いづらい施設になってしまうというのはよく聞く話です。
屋外スタジアムでは広島マツダスタジアム、大阪吹田スタジアムなどがコンテンツホルダーの意見を設計段階から取り入れて建築されています。私が知る限り屋内施設として沖縄アリーナはコンテンツホルダーが設計に参加した初の試みです。
参考までに、沖縄アリーナ建設にはECI方式を活用して、基本設計を基に実施設計者と施工者が協力してさらに付加価値を上げた実施設計にしたとの事です。実際に基本設計時点から、経営・運用面を重視した実施設計に変更されています。
2. 沖縄アリーナは日本初の「主がいる」”アリーナ”
アリーナスタジアムの最大の懸念点は「使われない」事です。つまり稼働率の低下です。大規模施設は維持管理だけで年間数千万~数億円がかかりますので、使われなければただのコストです。新国立競技場は最初から完成した現在でもこの「稼働率」が最大の懸念点です。
アリーナスタジアムを定期的に利用するのはプロスポーツ球団クラブです。年間数十日は確実に利用してくれます。この主たる利用者であるプロスポーツ球団クラブが使いやすく収益を上げやすくすれば、その収益を使い公的資金を極力使わずに施設の維持管理ができます。
ここで!体育館とアリーナの違いを明確にしておきましょう。これはただ呼び名が違うわけではありません。そしてその違いは「稼働率」に大きく影響してきます。
最大の違いは、「床」の違いです。
体育館の「床」はフローリング木材
アリーナの「床」はコンクリート土間
フローリング木材の床面は屋内スポーツには有利ですが、その他の大規模イベントには不利です。理由は床面に大型トラック・重機が乗り入れ出来ず興行日以外の設営撤去日が多くなり、結果として施設回転率が下がります。フローリングを傷つけない床面の養生も毎回必要です。
コンクリート土間なら、直接大型トラック・重機の乗り入れが可能になり設営撤去にかかる時間が大幅に短縮されます。さらにスポーツイベント以外の展示会や大規模会議でも床面養生を行わずに開催できます。もちろん沖縄アリーナは土間コンクリート、大型搬入搬出口も備えています。
床面の違いから考えると、現在Bリーグで使用されている試合会場はほぼ全て「アリーナ」ではなく「体育館」です。唯一仙台89ersが使用しているゼビオアリーナ仙台はコンクリート土間の「アリーナ」ですが、その施設管理はゼビオアリーナ有限責任事業組合であり仙台89ersには管理イニシアチブがありません。
高稼働率が見込めるアリーナ施設、その主となったキングス。ではその優秀なハコを上手く活用できるのでしょうか。
日本一のアリーナになるべく、その体制は着々と整っています。大きなニュースとしては沖縄バスケットボール株式会社とエイベックス株式会社の業務提携です。
スポーツと並ぶアリーナ利用者である音楽ライブ。日本トップクラスのライブエンターテイメント企業であるエイベックスがパートナーとなることはすなわち沖縄アリーナは日本最先端のライブアリーナとなる可能性が高いと言えます。さらには株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、株式会社電通といったエンターテイメント関連企業とも業務提携・協業関係を構築しています。
また、沖縄バスケットボール株式会社取締役であるジュン安永氏はNBAニュージャージーネッツ(現ブルックリンネッツ)で1995年から12年間働き、最終的にオペレーション部の現場最高責任者を務めた方で、当時NBA雑誌のHOOPでもよく紹介されておりNBAに詳しい日本人なら名前は聞いたことがあるような人物です。つまり、アリーナビジネスの何たるかを知りアメリカの現場で活躍してきた人物がついに自分達のアリーナを運営していくのです。期待しかありません。
アリーナ運営に知見あるキングスがアリーナの「主」として運営し、スポーツ事業だけではなくライブその他エンターテイメント事業もそれぞれのプロフェッショナルと協力体制を組む状況は日本初ではないでしょうか。
3. 官民の強固な協力体制から生まれたアリーナ
大切なのは、沖縄アリーナは公共施設であり所有は地方自治体である沖縄市であること、その沖縄市といかに協力体制を続けていくかです。
沖縄市は2014年からアリーナ構想をまちづくりの核として捉え、積極的に調査研究を行ってきました。その調査資料を読むと海外を含めアリーナを核としたまちづくりをとても細かく分析されており、資料の端々にキングスとの強い協力体制が伺えました。
スポーツ庁・経済産業省が推し進める「スタジアム・アリーナ改革」でもこの沖縄アリーナには大きな注目をしており、次世代アリーナのベンチマークとしている事は確実です。
具体的なアリーナ運営収入予測はさらに次回へ
いかがでしたでしょうか。沖縄アリーナは設計段階・運用面・自治体との協力体制と今までとは大きく異なる次世代型アリーナであると言えます。
長くなってしまったので、書くつもりだった具体的なアリーナ運営収入予測はさらに次回にします。よかったら次回も読んで下さい。ありがとうございました。
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