福祉人材育成における研修の必要性とその価値
私が手掛けている事業「ココロラ」では、複数拠点化、言い換えれば地域問わず全国のどこからのご依頼でも対応できることを目指しているので、今後オンライン相談の間口を一層広げていくところ。ただし、オンラインが決して無敵と言うことはなく、対面であればそれに越したことはないというのが本音でもある。
そういえば、先日某企業様より内部研修の講師のご依頼を受けたが、やはりこれからの時代、点在する拠点から一同集うより、オンライン上でのセミナー形式に力を入れていきたいとのこと。
確かに移動のリスク・密のリスク・何より各事業所のスケジュール調整の簡略化を図れることが大きい。通常研修参加に時間を割くことの難しい人でも、オンラインであれば参加可能となるメリットも強い。
一方、よく言われることだがオンラインではどうしてもお互いの表情や雰囲気をとらえられず、一方通行なトークになりかねない。
例えば、私は数年前にとある大学でキャリア講座の講師を2度ほどつとめさせていただいた。
1度目は通常通り学生が講堂に集まり、彼らの表情やしぐさ・反応などを観察しながら話をすることができたが、2度目の講義では感染症対策のためオンライン形式となってしまった。
小さな別室でパソコン(カメラ)に一人向かい合う中で、案の定何か一方的にしゃべっているだけなのではという不安が途中途中でよぎってしまった。
これは「慣れ」によってだいぶ改善されることとなるが、それでも対面で行う形式のほうが正直やりやすいと言わざるを得ない。
個人的に講義や研修とは、上から目線で物言うのではなく、お互いが知恵や体験をシェアしあいながら、その後の日常(仕事)に確実に落とし込めるものとしなければならないという思いがある。そのためには話相手(研修参加者)の顔色や空気感をとらえるのは不可欠。特に私のようにHSP気質が強い人間にとっては、その空気感をつかむか否かだけでその日の講義の出来が決まってしまうと言っても過言ではない。
研修と言えば、私がサービス管理責任者やマネジャーとして福祉の現場にいた当時から現在まで、とにかく多く耳にしてきたのは
「研修もなく、現場で働かされて困っている」
という職員の声。
確かに専門性がある程度求められる現場で働く上で「研修」は必ず必要なこと。
そのタイミングも
「現場に入る前」
「入って一定期間過ぎたころ」
「1年ほどたったころ」 等
時期によって内容も理解力も変わってくるので継続的に行う必要がある。
私の(苦い)経験からお話しするが、研修をやればよいということではない。たとえ事前の新任研修を綿密に行ったとしても、現場に出てから直接対応する際に全くとんちんかんな支援をする職員がいる。絶対NGだと強く釘をさしていた行動指針もあっさり覆されることも多い。これらは厳しい言い方だろうか。
そういった「問題のある職員」(あえてこういう言い方をここではする)に話を聴くと、多くが「何も指示がなかった」「そういうルール知らなかった」「ちゃんと教えてもらえなかった」と返答される。
さらには「研修もなく現場に放り出された」と堂々と言ってのける人も実際いる。(そのような人もいるかもしれないが、ここではもちろん直前にしっかり研修を受けてる人のこと)
なぜこのような現象が起きるのだろうか。
何点か原因はあると思うが
・研修内容がずさん(薄い)だった→マネジメント側の問題
・研修に参加しただけで何も聞いてなかった→本人の問題
・実際に現場に出ると気持ちや考え方が変わった→本人+環境の問題
あわせて、研修後のアフターフォローの問題も大きい。管理職側も「研修したから当分は大丈夫だろう」と決めつけず、
ある期間は直接見守りつつも対話を設ける
何かずれた行動が見られたらその場で振り返りをする
など、細やかな配慮が必要である。
自分の反省も踏まえながらになるが、正直そこまでの時間や労力は取れないこともある。ただ、実際現場で働く人が孤立したり、自分の考えで支援を進めてしまうことは非常に危険なこと。新しい職員の入口の育成は、管理者にとってものすごく大事な仕事と思って対応すべきある。
私自身、恥ずかしながらこれまで何度か現場の支援員の信じられないような背信行為を受けたことがある。その本人を責めるだけでなく、忙しさにかまけ、現場をないがしろにしていたのではという自分自身のサポート力や指導力を振り返り、反省することが大切。
第一に対話、第二に対話
その為には
話しやすい雰囲気を作る
話しやすい存在であること。
その上で定期的な研修を適切に行うことが支援員のスキルアップだけでなく意識改革につながることとなる。
福祉現場職員の採用というのは確かに非常に難しい。ただ、事業所や利用者だけでなく、自分自身にとっても色々な意味でプラスとなるような人材と出会える楽しさもあある。
人材不足と言われ続け長い月日が流れたが、ただ人をかき集めるだけでなく、良き意欲を持って集っていただいた方々に気持ち良く、かつ適切に支援を展開していただけるよう十分なサポートに尽くしていきたい。
最後に、個人的には大勢の前で話すよりも1対1(或いはせいぜい3~4人の小グループ)での相談形式に力を注ぎたいこともあり、ここ最近はあまり積極的には研修講師のお仕事は受けてこなかったが、もちろんお相手にとって有意義な機会となるのであれば喜んで引き受けたいと思っている。
そして、繰り返すが、今後も「研修講師」という立場であったとしても「ともに学び、ともに成長する」という意識を胸に、現場の力となれるよう精進する気持ちである。
何かお力になれるようなことがあれば、お声かけいただけると光栄です。