アート鑑賞を通じて、自分の感性を知る方法

知識のいらないアート鑑賞のメリットは、自分の感性を知ることができることです。私ってこんな風に思うんだな、こんな考え、こんな視点、こんな作品が好きな人なんだな。と自分について知ることで、自己肯定感を高めるきっかけになると思います。

では具体的に、アート鑑賞で自分の感性を知るには、どのように作品を見るといいのでしょうか??

私のおすすめは、能動的に見ることです。3つご紹介します。


1 キーワードを拾ってみる

作品から何かキーワードを拾ってみると、鑑賞のヒントが得られて自分なりに作品を鑑賞することができます。

例えば、こちらの作品。(YouTubeに飛びます)

池田亮司さんの作品です。巨大な空間の床にプロジェクターで映像を投影しています。とてもかっこいい作品です。鑑賞者はこの床を歩いたり、座ったり、寝そべったりしながら体験します。
動画で見ると刺激的に見えますが、実際に体験するととても居心地の良い空間です。私も別の展示で体験したとき、30分くらい寝転んだりしていました。

あなたは、この作品からどのようなキーワードが思い浮かびましたか?

そしてそこからどう思いましたか?

以下は私なりのキーワードとそこから思ったことの例です。

キーワードは、コンピュータプログラム、色のない音、デジタル、データの集積、スピード、black&white、無機質、ネットワーク、現代、ローカルでない、グローバル、膨大、巨大な空間、平面、暗闇などです。
このキーワードから私はこう思いました。
かつては宗教や地域性、手仕事に支えられていた文化・美術だったが、多様な現代を支えるのは、変換されたデータである。全てのものはデータに変換され処理される。そこには地域性、人種、言語の違いは見えづらくなり、均一になる。世界を支えている裏側には膨大なデータの集積があって、ネットワークになっていて、捉えられない速さで流れていく。それは人の知覚をすっかり超えている。それが今を生きる時代である。居心地の良い空間と感じるのは、私たちがすっかりデータに慣れ親しんでいて当たり前になっているからだ。居心地は悪くないけれど、無機質なデータの向こうにある地域や人のあたたかみも大事にしたい。
自分の感性についてわかったことは、現代はデータによって支えられていると感じていること、それに慣れ親しんでいること、人のあたたかみも大事にしたいと思っていること。でした。

あなたも作品を見るとき、綺麗だね、かっこいいねという感想から一歩進んでキーワードを拾って鑑賞してみてください。あなたの感性をあなた自身で知るきっかけになるはずです。


2 似ているものを探してみる


作品が何に似ているかを探してみると、その作品の伝えたいことが自分なりに見えてきます。何を連想するか、そこにあなたらしさが見えてくると思います。

例えばこちらの作品(YouTubeに飛びます)

*画像は山田正亮「Work C.92」(所蔵は横浜美術館となっています)です。他にも、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館などで所蔵しているようです。


山田正亮さんのストライプの絵画です。京都で企画展があり見に行きました。会場の一部はこのストライプの絵画で埋め尽くされていていました。どこを見てもストライプの絵画、めまいがしそうなほどの物量に圧倒されました。とてもかっこいい展示でした。


あなたは、このストライプを見て、何に似ていると思いましたか?

そしてそこから何を連想し、思いましたか?


以下は、私の例です。

私は、永遠に続く世界を連想しました。
このストライプは永遠のイメージに似ていると思いました。
(そういえばこの企画展のタイトルも「endless」でした。)
そして、ものすごく不安な気持ちにもなりました。ストライプのラインは色が重ねられていて、筆致によってぶれたり絵の具の溜まりができたりしていて表情豊かです。その反面、ひたすら平行線を辿るばかりでお互いが決して交わりません。これは分かり合えないことにも似ていると思いました。そして絵画という枠によってぶつ切りになっていることが、「永遠」という怖さと、「終わる」ことへの安堵に似ているように思いました。いつか終わる、終わる幸せ、みたいな感じを連想しました。
ここでわかったことは、私は終わりがあることは怖いけれども安堵もあると思っていること。永遠というものが実は怖いなと思っていること。分かり合えないものもあると思っていること。などでした。



これに似ている、あれに似ていると似ているものを連想して見ることで、能動的に鑑賞することがました。そしてそこから、自分のものの見方を知ることができました。
能動的に見ることは、アートならではの面白さだと思います。



3 自分に引き寄せて観る


気になった作品には、きっとあなたと通じるものがあるはずです。ぜひ自分と繋げて観てください。

私の個展を観に来てくれた方が、ドローイング作品(上画像)に目を留めていました。

「この絵はなんかわかる。“私は何があっても、ここから動かないわよ!”と言っているみたいに見える。周りがどんな状態であっても、ここから動かない!て、なんか意志の強さがある。合ってるか間違ってるか分からないけど、私にはそう見える。」

と感想を下さいました。嬉しかったです。

このドローイング作品は、線だけで描くことや、画面の中に絵がぴったりとはまる場所を探して描くようにしていました。なので、この感想は間違っていないです。(そもそも鑑賞に正しいも間違いはないと私は思います。)
それよりもこの方が、私の作品に自己を投影して、今の自分と繋げて見て、作品と対話されたことがとても嬉しかったです。

きっと目まぐるしい仕事や生活に負けないように頑張っているから、このような感想を持ったんだと思います。

帰り際に、「作品が見れて良かった、あの絵が良かった。自分と似たところがあった。」と言って、朗らかに帰って行きました。

引っかかる・気になる作品を見つけたら、自分に引き寄せて、繋げて観てみて下さい。
そして作品との対話を楽しむことで、自分との対話も楽しんでください。


それでは、この記事があなたのお役に立てれると嬉しいです。

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太陽/画家
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