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民泊ゲストハウス運営の不安に対処する方法 その2<自分会議>
何もしていないと不安になる
宿業をしていて、お客さんと酒を飲んだりしているときは楽しいし、その準備のために料理作ったり掃除しているのは全然苦にならない。自分が好きで始めてやっていることなのだから。
しかし宿にいてお客さんがいない時や、平日福井市内の実家にいる時はこのままで大丈夫なのだろうかという不安に襲われることが少なくない。本業(保険とファイナンシャル・プランナー)のほうも定常的に仕事で埋まっているわけではなく時間の融通がきく仕事なのだが、自由のすばらしさを堪能するというよりはむしろ結果がなかなか出なくて不安に駆られる時の方が多い。宿も本業も頑張りが結果と収入に直結するようなものではなく基本的に待ちの商売だ。会社勤めしていた時と違って頑張りが成果に直結しない。
逆に言えば、敢えて頑張らなくても宿も本業もビジネスを回していけるような仕組みになるよう知恵を絞らねばならない。知恵を絞るためには不安に駆られた時に「俺はどうすればいいんだろう」と悩んでいるだけでは簡単に答えは出ないし更に不安が募る。常に課題が目の前にあってその解決策を考え続ける状態にすれば不安になる暇はないし成果にもつながる。そうなるようなルーティンを作ればよい。
自分の場合だが、毎日の「朝礼」と毎週の「週礼」、そして毎月の振り返りをしている。「自分会議」と呼んでいる。後で述べるがこれは自分の造語ではない。
「朝礼」でやること
毎朝、これだけのことをやっている。
1)前日のメール・SNSのDM・電話履歴のチェック(再確認)
自分の場合宿の予約をメールか電話で受けつけていて、すぐにGoogleカレンダーに登録しているが、予約の翌日にダブルチェックすることにより予約漏れやダブルブッキングを防いでいる。本業も同様に、作業漏れがないか再度チェックする。
2)前日の仕事の振り返り
自分の行動に問題が無かったか、改善の余地が無かったかを顧みると同時に、まだ完了していない仕事の進捗状況を確認、いつまでに終えるのかを考える。
3)この日やるべきことを再確認
仕掛かっている仕事の中で優先順位を決めて実行のスケジュールを考える。
4)今週および翌週やるべきことを確認
優先順位の低い仕事については、いつまでにやるべきなのかを再確認する。
自分の場合、2週間先以降のことについてはあまりガチガチにはスケジュールを入れないようにしている。予約が入ったりするなど状況は変わる。
5)クラウド会計システム(freee)のチェック
前回の投稿で書いた通り、モノの購入・支払いは極力キャッシュレス決済を使うようにしているが、それらの記録は全てfreeeに反映する。発生日・金額・勘定科目(消耗品費、旅費交通費など)は自動入力されるが、勘定科目はシステムのAIにより入力されていて修正が必要な場合があるのと、品目(備品、ガソリン代など)を入力し支出を登録する。収入も同様。何にいくら使ったのかを再度認識し、本当に必要な支出だったのかを振り返る。これを繰り返していくと、無駄な支出を抑えられるようになる。
6)資金運用している個人資産のチェック
自分が保有している株や投資信託などの値段をチェック。毎日の値動きを見ていることで相場の動きがわかる。場合によっては売却の判断を行う。
7)この日の運勢チェック
100均で買った「運勢暦」をチェックする。自分の努力とは別に運不運というものはあり、そういうものだと自分に言い聞かせるためにしている。うまくいかない時、これからずっとこうなるのではないかと考えると鬱になるが、今は流れの悪い時期なのだと割り切れば、良くなるまで待つんだという風に考えられる。
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これら全てのことをやったとしても10~15分くらいで終わる。
自分はサラリーマン時代にいろいろな会社の動きを見てきたが、企業の命運を決めるのは社員の頑張りよりも経営陣の意思決定だ。そして意思決定にのためには現状認識が大事というか必須だ。
個人事業主は自分が労働者であり経営者。朝のこの時間は経営者モードになる。これくらいの時間は惜しんではならない。
「週礼」でやること
毎週月曜日の朝、30分くらいかけて「週礼」を行っている。
1)前の週の振り返り
毎日書いた「朝礼」の記録を読み返す。自分は記憶力がそれほど良くないので、前週のいつ何をしたのかは案外忘れているものだ。
2)意識の流れを書き出す
今考えていること、思っていること、悩んでいることなどを書き出す。「予約が少ない、どうしよう」とか「状況は上向いてはいないがこれ以上は悪くならないと思う」とか、「そろそろ旅に出たい」といったようなことだ。宿だけでなく本業やプライベートのことも含めて書き出していく。どちらかというと不安や悩みごとが多い。負の感情を自分の頭の中で貯め込んでいると沼に落ちていく。書き出すことで自分に客観的になって冷静に対処策を考えられるようになる。
また、「自分は何がしたいか」「今欲しいものは何か」を週一回この場で自問自答するようにしている。いつもスマホを見ていると他人は順調に生きているように見えるのだが、自分はそういう風になりたいのか?他人が持っているものは本当に自分が欲しているものなのか?を考える。そうであるのならどこを見習うのかを考えるし、そうでないのなら「自分は自分、他人は他人」だ。
3)先週の自分に点数をつける
自分は決してメンタルが強くないので、うまく行ってないときは「自分はダメな人間だな」とつい考えてしまう。しかし「オレってスゲー」と「自分はダメ人間」というのは二者択一なわけではなく、その間に段階がある。
先週の自分には納得できていない、じゃ何が出来たのかを振り返って点数をつけると案外60点くらいはついているものだ。今週は70点くらいになるようがんばってみようとか、逆に80点くらいつけれる時なら今週もこれを維持しようと思える。因みに世の中には「常に100点じゃなきゃダメだ」とか「120点200点を目指さないとダメだ」という人もいる。中にはイチローや大谷翔平みたいにそれを実現している人もいるのだろうが、自分が関わってきた人間を振り返ると、そのようなことを安易に口にする人の殆どは単に自分と周囲が見えてなくて、目標設定が不適切なだけだ。
宿のこともそうだし、本業や家事についても個別に点数をつける。筆者はメタボ気味なので、前週どれだけ歩いたのかとかジョグや水泳を何曜日にしたのかとかいったことも振り返って点数をつける。
仕事に関する支出は毎日チェックしているが、外食などプライベートな支出についても振り返る。前回の記事でも書いたがそうすることで余計な支出を抑えられる。
他人から押しつけられた目標は足かせでしかないが、自分で設定した目標は達成せねばと心の底から思うし、達成すると嬉しい。
月の振り返り
毎月月初になると、前月の週礼の記録やSNSの投稿や宿の集客状況を振り返る。そして半年から2年先くらいになっていたい自分の姿を思い浮かべる。月に一度の儀式だ。
本当は5年先10年先のことを考えないといけないのだろうが、正直そこまで頭がついていかないのが現状だ。
この「月の振り返り」は自分が自営業をやる少し前から毎月やっているが、たまにあの頃は何をやっていたのだろうかと読み返す。コロナの少し前の頃はとにかく試行錯誤をしていて当時はこの努力は報われるのだろうか?と思いながらやっていたが、宿を始めて運営するのに役に立った部分は多かったなと思う。もちろん失敗したことも多い。でも、人は失敗することのほうが多いし、成功よりも失敗から学ぶことのほうが多い。失敗は忘れたいし実際に忘れるが、記録をつけておけば自分の糧になる。
朝礼とか週次のミーティングは、サラリーマン時代には束縛されているような気がしてイヤだったが、自由な立場になってみると同じようなことをやっている。
「自分会議」の名の由来
筆者はあちこちのコミュニティに顔を出しているのだが、そのうちの一つに個人投資家のグループがある。リーダーはサラリーマンだったが、個別株投資で資産を築いて、いわゆるFIREした人だ。しかし悠々自適というわけではなく、今でも株式投資のために情報収集を行い株のチャートを見ている。
その人は言い切っている。「株で勝っている人間は、必ず取引の記録をつけている。何故その株を買ったのか、どの方向に値動きすると予測したのか、そして結果どうなったのか、外れた場合は何故そうなったのか記録を残している。常に『自分会議』をして、勝ったり負けたりしても、毎日自分会議をしていくことで精度が高まり結果として資産が残る。」と。
ビジネスも同じだと思う。自分のやったことややりたいことを書き出して要約して評価して記録に残す。そうしたことを積み重ねていくことで、自分が望む状況を作れるのではないかと思う。
「人間って1週間のうち7割は忘れるらしいんですよ。ということは1週間前にひらめいたことを1週間後には忘れてる可能性があるんです。だったら絶対にその日気づいたことや思ったことを書いておけば、1週間前の自分とは違うから、成長できているわけじゃないですか。やっぱり“10年日記”ってやっておけばよかったなって思いますね……」
ネット上にはある日バズって大成功を手にした人の話が溢れているが、多くの人は日々の積み重ねの結果気がついてみればビジネスが大きくなってるのだと思う。仮に突然のサクセスストーリーがあったとしてもその時の経験則でビジネスを回していくのは危うい。状況は常に変わるし運不運にも作用される。過去の成功体験にしがみついて破滅した人を何人も知っている。
個人事業主というか自営業には自由があるが、それは裏返せば不確実性ということでもある。それが故の不安は消えることはないが、日々やることを決めて記録を残して反省と改善を繰り返していくことで不安を感じるヒマを少なくすることはできるし、不安材料そのものも解消できるのではないかと思う。あくまでも自分の考えではあるが、個人事業主でビジネスがうまく行っている人は同じようなことをやっているだろう。
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