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【マッチレビュー】浦和が掴んだ確かな手ごたえと可能性 - 2025 J1 #1 ヴィッセル神戸×浦和レッズ

迎えた2025年シーズンの開幕戦は、現在2連覇中の王者・ヴィッセル神戸とのアウェイマッチ。結果はスコアレスドローに終わりましたが、浦和からすると主導権を握る時間も長く、今後の戦いに向けて確かな可能性を示すことができた試合になったと思います。

ここでは、気になったシーンをいくつかピックアップしながら試合を振り返っていきます。


スターティングメンバ―

浦和は2列目に金子、松本、マテウス・サヴィオと新加入選手を並べてきました。合流したばかりのダニーロ・ボザもスタメン入り。キャンプなどの事前情報どおり、昨シーズンはトップ下(または左サイドバック)での出場が多かった渡邊凌磨はボランチにコンバートされています。

また、スタメンの日本人選手7人のうち西川を除く6人が埼玉出身というのも、ここ数年の強化方針が現れていると思います。クラブへの愛着や闘争心といった面でメリットもありますし、何より浦和レッズの黄金時代を見て育った選手たちが、その浦和レッズを背負って戦っている姿は感慨深いものがあります。

対する神戸は、怪我で宮代や井手口といった主力選手を欠くものの、現時点でのベストメンバーを揃えてきました。中心となるのはやはり大迫と武藤で、浦和にとってはここでどれだけポイントを作らせないかが重要になってきます。

【前半】主導権を握った浦和の狙い

前半は、浦和が攻守両面で神戸を上回り、多くの時間で試合をコントロールすることができていました。中盤での球際の激しさやマテウス・サヴィオ、金子などの個の力など、いいところを多く見せられた前半でしたし、特に、前半7分過ぎのマテウス・サヴィオの持ち運びから松本のポケットへの裏抜けのシーンは、お互いの特徴が出た素晴らしい場面でした。

ここでは、対照的だった浦和と神戸の組み立て(ビルドアップ)について詳しく見ていきます。

神戸のハイプレスに対し、浦和はGKの西川を使いながらうまく前進できていました。神戸は大迫と佐々木の2トップ気味で守備をスタートし、西川にボールが入ってもプレスをかけ続け、両サイドの武藤と汰木がCBまでプレッシャーをかけるというやり方でしたが、ロングボールも活用しながら効果的な攻撃を展開できていました。

特に良かったのは、空いた両サイドのスペースを効果的に活用できていたことボランチが下がりすぎないことでセカンドボールを回収できていたことです。昨シーズンまでは、ビルドアップを助けようと両サイドやボランチが下がりすぎてしまった結果かえって窮屈になり、苦し紛れに蹴ったロングボールを相手に回収される、というシーンを何度も見てきたので、今シーズンの大きな進化を感じられる場面でした。

また西川のビルドアップへの関わりも素晴らしかったです。西川も「ビルドアップが得意なGK」の1人だとは思いますが、細かいパスワークに参加するよりも、特に速く鋭いロングボールを供給できるところに強みがあると思います。そんな西川の特徴が生かしやすいようなビルドアップを展開できていました。

対する神戸のビルドアップに対しても、浦和がうまく対応できていました。前線の大迫や武藤に良い形でロングボールを供給するのが神戸の1つの狙いですが、それに対して浦和はハイプレスではなくコンパクトなミドルブロックを敷くことを選択

前線まで距離のある位置までは深追いせず、ある程度引き付けてから制限をかけることで、良い体勢でロングボールを蹴らせないように徹底していました。また大迫や武藤が競るポイントをゴールから遠ざけ、セカンドボールも拾いやすくなっていました。

特に目を見張ったのはチアゴ・サンタナの守備意識でした。スコルジャ監督のミドルブロックでは2トップで相手の2CB+アンカーをケアするのが基本で、ボールが動くたびに2人で連動してスライドするという負荷の高いタスクが与えられますが、この試合では松本とともに見事に役割を果たしていました。
パスコースを消したり、相手の方向を制限したりといった守備は苦手な印象があっただけに、素晴らしい成長だと思いますし、組織的な守備を重要視するスコルジャ監督としても起用しやすくなったと思います。

それでも、神戸は集中した守備で浦和にあまり多くの決定機を許さず、前半の終了間際にはセットプレーでビックチャンスを作るなど、神戸の勝負強さも垣間見えた前半となりました。

【後半】脅威となり続けた神戸のセットプレー

後半に入っても引き続き浦和ペースでしたが、前半から飛ばしていただけに、体力的な面もありややトーンダウンした印象です。

神戸は浦和のビルドアップに対しても、前半ほどは食いつかないように修正してきました。相手CBは2トップにある程度任せて両SHを飛び出させず、またアンカーの扇原をより前目のポジションに配置することで、浦和のボランチにもプレッシャーをかけつつ浦和の右サイドのスペースもケアしていました。

それでも浦和は、数的同数になった前線にシンプルにロングボールを入れるなど臨機応変に戦い方を変えられていてよかったと思います。

そんな中で脅威となったのは神戸のセットプレーでした。コーナーキック、フリーキック、ロングスローで何度も浦和のゴールに迫り、前半ラストプレーも含めて多くの決定機を作りました。

大迫や武藤に加えてマテウス・トゥーレル、山川といった空中戦に強い選手が揃っているいるだけでなく、ニアとファーの役割分担と使い分けや、体を当てて大きくクリアさせないことで二次攻撃につなげるなど、やることが明確で徹底されていた印象です。

神戸のロングスローの場面

神戸は怪我によるアクシデントもあり思うように交代カードを切ることができず。浦和も開幕戦であり、かつ昨年王者とのアウェイゲームということもあり、リスクを取った采配をとらず。最後まで得点は生まれずスコアレスドローという結果となりました。

81分のゴールが取り消された場面は、悔しいですが仕方がないですね。手に当たっていなくてもボールはゴールに吸い込まれていたような気がしますが、下にいた前川が掻き出していたかもしれませんし、100%こうだと断言できない以上、ルールとして「手に当たっているからハンド」という判定になるのは受け入れるしかないかなと思いました。

試合総括と今後の展望

全体としては浦和がコントロールしていたものの、神戸はセットプレーから決定機を作っており、引き分けが妥当な試合だったという印象です。

浦和としては、球際のアグレッシブさやビルドアップなど、今シーズンのベースとなる戦い方を見せられた試合となりました。特に、西川を中心とした後方からの配給や、マテウス・サヴィオが左サイドで起点を作ってからの右サイドの金子への展開など、再現性の高い攻撃の形も多くありました。

あとは、新加入選手を中心に、お互いの意図やタイミングがあっていけば、自ずと得点も取れていけると思います。またこの試合では起用がありませんでしたが、サブにはグスタフソンや中島翔哉、長倉といった個性豊かな選手たちも揃っていますので、状況に応じて采配の幅が広がってくると、今シーズンの浦和は面白い存在になるかもしれません。それほどの予感を感じさせてくれる開幕戦でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
これからもマッチレビューを書いていこうと思いますので、また読んでいただけますとありがたいです!

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