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【マッチレビュー】ここから這い上がるために必要なもの - 2025 J1 #4 浦和レッズ×柏レイソル
第4節で迎えたホーム開幕戦は、かつて浦和をACL決勝に導いたリカルド・ロドリゲス監督率いる柏レイソルとの一戦。かつて浦和に在籍した小泉佳穂、逆に昨シーズンまで柏のエースだったマテウス・サヴィオにも注目が集まる試合でしたが、蓋を開けてみれば浦和の完敗。ただ試合内容はそこまで悪くなく、特に先制点が決まっていなければ分からない試合だったと思います。ただ一方で、ここ数試合で出た課題に改善の兆しが見えないところは大きな問題でした。
前節のマッチレビューでも触れましたが、今の浦和に足りないものは、狙いの共有と意識の統一、そして柔軟な戦い方です。サッカーの戦術に正解はなく、今のやり方を大きく変えた方がいいとは思いませんが、全員が攻守ともに同じ狙いをもってプレーできているのか、そもそもチームとしての狙いがはっきりしているのか、試合中にも選手同士ですり合わせや修正が行えているのか、この根本の部分が解決していかないと組織として戦っていくことはできません。
ここでは、気になったシーンをいくつかピックアップしながら試合を振り返っていきます。
スターティングメンバー
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浦和は前節からスタメンを3人交代。グスタフソンの代わりに原口を入れて松本をボランチで起用する、前節・湘南戦の後半の形となっています。また長沼に代えて荻原、金子に代えて前田は連戦の中のターンオーバーでしょうか。
対する柏は前節から1人交代。前節は渡井と小泉の2シャドーの3-4-2-1でしたが、この試合は垣田と木下の2トップに熊坂をアンカーに配置する3-1-4-2のような布陣でした。
【前半】攻守ともに組織として機能しない浦和
前節の湘南戦では、3バック+アンカーに対して2トップの2人でプレスをかけるも全くはまらず。この反省を受け、浦和が用意してきた方法は次のようなものでした。
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これは11分30秒あたりのシーンですが、3バックに対してサンタナ、原口の2トップに加えて左サイドのサヴィオも加えた3人でプレスをかけ、相手右ウイングバック、右シャドーにはそれぞれ左サイドバックの荻原、左ボランチの安居がスライド。これはある程度機能していて、実際にこの場面では相手のミスからボールを奪い前田のシュートまでつなげました。
ただ、このように役割は一定程度明確になったものの、チーム全体として狙いが共有できていたかという点では疑問が残ります。チームの守備は、すべてが相手に襲い掛かる守備、ボールを奪う守備ではありません。どこで奪いたいのか、逆にどこはリスクがあるのかをチームとして明確化し、パスコースを限定しながら狙った場所に誘導、あるいは危険な場所から遠ざけ、最後は一気にギアを上げて奪いきる。それがチームとしての守備だと思います。
浦和は、ただ自分のマークに圧力をかけているだけで、そこに全体としての共通認識はあったのでしょうか。例えばアンカーの熊坂を背中で消せずに簡単に使われていたり、片方のサイドに閉じ込めきれずに逆サイドに展開されたり、こういった全体の意識が揃っていないところが前半の2失点につながってしまっています。
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攻撃に関しては、浦和の4バックに対して柏の2トップとウイングバックでマンマーク気味に対応され、全くと言っていいほどビルドアップができませんでした。それでも、ある程度引き付けてからロングボールを蹴ることで、スペースのある状況で前線に個で勝負させる、という狙いはあったと思います。ただ、競った後のこぼれ球を回収できるポジションにあまり選手がおらず、プレスバックしてきた相手に回収されるという展開が続きました。
サッカーはあくまで11対11の同じ人数である以上、どこかで数的優位あるいは最前線で数的同数という、チームとしてボールを届けたい場所があるはずです。そこをスカウティングで見つけチームとしての機能を設計する、またゲームをしながら相手の対策にも柔軟に対応していく、このような姿勢がなかなか見えてきませんでした。
【後半】前へ前へだけではなく
浦和はハーフタイムでグスタフソンと金子を投入。一方の柏は木下に代えて渡井を投入し、2トップから1トップ2シャドーに変更してきました。このことで、浦和はある程度ビルドアップができるようになり、ボールを保持して攻撃を仕掛けることができるようになりました。
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柏は浦和の4バックに対するマンマーク気味のハイプレスを続行。ただしセンターバックはFWではなくシャドーの選手が担当し、浦和のボランチには垣田1枚という形になりました。ロングボールを蹴ってくる浦和に対してより中盤を厚くしてセカンドボールを回収しようという狙いがあったのかもしれませんが、比較的スペースのある状況でグスタフソンがうまくボールを引き出せるようになり、浦和はスムーズに前進できる場面も作れるようになりました。
しかし、時間が経つにつれ焦りからか重心が前に行き過ぎてしまい、窮屈な攻めとなり決定機を作ることができず。そのまま0-2で敗戦となりました。
特に気になったのはサイドバックの位置取りです。監督の指示かは分かりませんが、両サイドともにサイドバックが高い位置を取りすぎてしまい、センターバックがボールを持っても出しどころがない、あるいはそこからボールが入っても後ろ向きで詰まってしまう、という場面が目立ちました。右サイドは代わりに金子が落ちてきてドリブルで打開したり左足で展開したりという選択肢もありましたが、左サイドの荻原は左利きで逆足がそこまで使えるタイプではないため、かなり苦しそうにプレーしている印象でした。
自分たちがプレーするスペースを確保するという意味でも、また相手をゴール前から引き出すという意味でも、前に前にだけでなく適切で効果的なポジションを取ることが重要になってきます。
まとめと今後の展望
浦和としては、選手1人1人は与えられた役割を遂行しようとしているものの、全体として意思が統一されておらず組織として機能していない、という状態でした。これは湘南戦から何も変わっていません。
監督を中心にトレーニングを通じて自分たちのやりたいことを整理することも非常に重要ですが、それと同じくらい、ピッチ上で起こっている事象をリアルタイムで共有し、チームを動かしていけるような選手が必要だと思います。ミシャ時代の柏木や阿部、また最近では岩尾など、こういった選手が出てこないと、後手を踏み続ける状況からなかなか脱することができないと思います。それが渡邊凌磨だったのかもしれませんが、彼が離脱している以上、今いる選手でやっていく他ありません。
最後に
苦しい試合が続いている中、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
これからもマッチレビューを書いていこうと思いますので、また見に来ていただけますとありがたいです。次回はレッズの良かったところを中心に振り返る、楽しい記事にしたいところです…!