□景色
孤児であること、両親の顔さえ知らないこと、誰からも愛されたことがないこと、誰にも望まれたことがないこと、邪魔もの扱いされたこと、学校にもいけなかったこと、貧しかったこと、そういった他人から憐みを受けそうな、あるいは蔑まれそうなことを、すべてぎゅうぎゅうと赤毛に詰め込んでアンは孤児院を出発した。
老兄妹マシュウとマリラは、自分たちの役に立つように、男の子を引き取ろうとした。ところが、孤児院からやって来たのは赤毛の女の子だった。二人は孤児院に送り返さなければと話をする。
マシュウの発想が転換する。自分たちがアンの役に立つことができるのではないか、と思う。人間は想定外のことを受け入れて、自分の意図を超えた流れに身を投じることで、成長をとげていく。
□本
人には長所も短所もあって、それぞれが補い合って生きていると同時に、見方を変えることで長所は短所にも見えるし、短所は長所にもなりうる。短所と長所が表裏一体になったものが、人間の「個性」。個性に「正解」はない。むしろ、全ての個性がそれぞれ「正解」。
人間が生きるということは、自分の身体を含む個性を受け入れて、周囲の人たちと関係性を結ぶということ。人生の一期一会の経験から、さまざまなことを学んでいくということ。そのなかで、ほかの人は経験できないような、自分だけの人生をたどっていくということ。
『赤毛のアン』は、「普通」の日々のなかにある、底光りする幸福を描く。