思うとおりに歩む
□あいさつ
わたしの絵や絵本が日本のみなさまに愛され喜ばれていることを、
とても嬉しく思っています。
わたしは、ほかの方に「どう生きなさい」と、
アドバイスするようなものは持ち合わせていませんが、
自分がどう生きてきたか、
自分はどう生きたいと思っているか、という哲学は持っています。
そんなわたしの生き方に、日本のみなさまが
興味を持ってくださるとしたら、そんな価値があるとしたら、
わたしには二重の喜びです。
□本
『思うとおりに歩めばいいのよ』 ターシャ・テューダー
メディアファクトリー 2002年
□抜粋
みんながほんとうに欲しいのは、物ではなく心の充足です。
幸福になりたいというのは、心が充たされたいということでしょう。
わたしは、ここの何もかもに満足しています。
家にも庭にも、動物達にも天気にも、バーモントのすべてに。
現代人は忙しすぎます。
夕方、ポーチのロッキングチェアに座って、
カモミールティーでも飲みながら、
ツグミが澄んだ声で鳴くのに耳を傾けてごらんなさい。
毎日の生活が、もっと楽しくなりますよ。
午後のお茶の時間はわが家の伝統で、一年中、欠かしたことがありません。
どんなに忙しくても、四時半になったらお茶にします。
とくに忙しい時など、これが、リラックスにとてもいいの。
だから、急いではだめ。
ゆったりした気持ちで、会話を楽しみます。
人には、自然との触れあいが必要です。
わたし達はみな宇宙の一部なの。
宇宙を傷めることは、自分の体を傷つけているのと同じことよ。
九歳の時、両親が離婚して、父の親友の家族と暮らすことになりました。
ボストンでスコットランド人の乳母にお行儀よく育てられた娘が、
突然、型にはまらない、ものすごく自由な雰囲気の家庭に放り込まれたのです。
あんなすばらしい経験は、あとにも先にもありません。
グウェンおばさんが戯曲を書くのに忙しくて、
手の込んだ料理を作る暇がなかったので、食事はライスにトマトとか、
オートミールやコーンフレークとか、かんたんなものばかりでした。
でもおばさんは、よく朗読をしてくれたの。
夜の十時や十一時になることもしばしばでした。
結婚して四人の子どもが生まれましたが、
いちばん下の子が五歳になるまで電気も水道もない生活でした。
天秤棒をかついで井戸へ水汲みに行き、
薪ストーブで熱したコテでアイロンがけをしていました。
だから、子ども達が小さい頃はしじゅう疲れていましたけど、
そういうものだと思っていたので、苦労だとは思いませんでしたね。
親が子どもにしてやれることで、とくに大切なのは、子ども時代に楽しい思い出をたくさんつくってやることです。
わたしは成功したと思います。
子ども達に聞いてみてちょうだい。きっと、そうだと言うでしょう。
わたしは子ども達のために、
あたたかい家庭を作りたいと思いました。
子どもの気持ちは、ちょっとしたことで楽しくなるものです。
外は雪で、寒くて静か。
家の中は暖かく、クリスマスの喜びでいっぱい。
これほど充ち足りた気持ちになれることが、ほかにあるかしら。