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マダムシンコ求人詐欺事件のまとめ

2022年10月に発覚したマダムシンコ求人詐欺事件について、その経緯と顛末、採用企業と求職者が学ぶべきポイントをまとめました。マダムシンコ側にも理由や背景があったと思うのですが、記事に出てた内容では求職者を騙す意図があったと思われても仕方ない内容とも思われるため、求人詐欺事件という言いかたにしています。
 

マダムシンコ求人詐欺事件とは

ざっくり説明すると、

マダムシンコが応募を集めるために、実際の金額よりも高い給与額を記載した給与額で求人広告を掲載。それに惹かれた男性が採用されるが、実際の給与額とは異なる雇用契約を結ばれ、実際に支払われた金額も少なかった。怒った男性が裁判を起こしたら、マダムシンコの非が認められ、男性に未払いとされる給与が支払われることになった。

つまり、求人広告に応募者を集めるために多めの金額を書くといった虚偽の記載を行なうと負けるよ、という事件でした。
 

経緯

ある男性が求人検索エンジンindeedを使って仕事を探していたところ、マダムシンコの工場で菓子製造をする仕事を見つけ応募した。その求人には「月給35万円以上(残業代含む)」と記載され、人事担当者との面談でも試用期間(3ヵ月)後の月給が35万円と口頭で説明され採用される。

ところが、勤務開始1ヵ月後に示された雇用契約書には「基本給16万~25万円」と記されていたが、残業代の明確な記載がなかった。男性は上司に「月給35万円」と口頭で確認し、雇用契約書に署名をする。

しかし、試用期間中は25万円だった月給が、3ヵ月の期間終了後に約17万円にとさらに下がることになったという。これ怒った男性は1年間勤務したのちに退職する。

男性は、求人サイトの内容で同社と合意したと主張。雇用契約書に署名した際、労働条件の変更について、明確な説明がなく、同意も成立していないとし、求人広告に書かれていた金額と実際自分に支払われた金額の差額分、1年分の未払い賃金約200万円の支払いを求め、マダムシンコの運営会社である株式会社カウカウサービスに労働審判を申し立てた。

これに対して、株式会社カウカウサービスは、「インディードの広告は閲覧者を増やすために給与額を高く表示したものに過ぎない」などと主張。「雇用契約の労働条件ではない」と争う姿勢を示した。
 

結果

2022年11月25日付けで、大阪地裁は株式会社カウカウサービスに対して90万円の支払いを命じた。

マダムシンコの運営会社である株式会社カウカウサービスについては、2022年4月、男性が淀川労働基準監督署に相談。同署は同月、雇用の際に労働条件を明確に示していなかったとして、労働基準法違反で同社に是正勧告していたことも分かった。
 

ソース

求人サイトで「月給35万円以上」、実際は約17万円…マダムシンコ元従業員が労働審判申し立て/読売新聞オンライン

求人サイトより月給10万円減 洋菓子のマダムシンコに支払い命令/毎日新聞


どういうことか

「求人広告は、雇用契約書ではないものの、そこに記載されている情報は雇用契約の労働条件として認められる」ということ。

つまり、実際の労働条件とは異なる高い給与額を記載した求人広告を出して閲覧者数を増やすことを狙い、実際は記載金額よりも低い給与額で雇用契約を結ぶと、労働基準法違反になり、裁判でも負ける可能性が高いということです。

奥歯にものが挟まった言いかたをしているのは、今回の判決理由は、「雇用の際に労働条件を明確に示していなかった」という点であり、もし、株式会社カウカウサービスが男性相手に、「今回の求人では〇〇レベルのことができる人を想定しての採用だったがあなたは条件を満たしていない。したがって求人広告に記載している条件で採用することはできない。しかし、それよりも職位を一つ落とした条件でなら採用できる」という話し合いをして、労働条件の中に試用期間後の給与額についてもきちんと記載されていて、その上で相手も納得していたなら、このようなことにはならなかったかもしれないからです。
 

個人的な感想

今時、「求人広告は閲覧者を増やすために給与額を高く表示したものに過ぎない」「雇用契約の労働条件ではない」という考えの企業がいたことに、僕は正直驚きました。

故意なのか過失なのかは当事者から話を聞いてみないことには何とも言えないのですが、未経験者歓迎の求人広告の書きかたを見ると、未経験者歓迎の募集で、「求職者を騙して釣る気満々」と見られても仕方がない書きかただったようなので、なんというか、悪い意味での見本になってしまった感はありますね。仕事内容を見て月給35万円以上の仕事なわけがないだろうと、僕なんかは分かるのですが、不確定な残業代が月給に含まれている書きかたも含めて、いろいろ問題がある求人内容だったと思います。
 

採用企業が学ぶべき点

閲覧者を増やすために給与額を高く表示する求人広告はダメ。

「いい人がいたら最高でこれぐらいは出す」という金額を求人広告に書くのはNGです。応募条件を満たしているすべての人が最低限もらえる金額を記載するのが常識と覚えておきましょう。でないと、「求職者を騙そうとしている」と思われても仕方ありません。

施工管理やITエンジニア募集といった採用難易度の高い職種で同じようなことをやっている企業様は結構ありそうですが、大丈夫でしょうか。
 

求職者が学ぶべき点

indeedの求人広告は基本的に信用しないほうがいいです。

indeedに掲載されている求人広告の多くは、企業の採用担当者が書いています。採用慣れをしていない中小企業、ブランド名の認知度だけは高くてこれまで採用で苦労したことがない企業の場合、採用担当者が労働基準法を知らない、NG表記をしたときのデメリットを分かっていない、ということは結構当たり前のようにあります。

これはindeedをディスるのではなく、自衛のために「求人検索エンジンの場合、こういうこともあり得る」と知っておいたほうがいいと考えてのアドバイスです。

あと、

求人広告に書かれていた内容と、雇用契約時の労働条件が異なっていた場合は、採用担当者にきちんと確認をしてください。今回の件のように、口頭の説明だと証拠になりにくい面もあるため、きちんと書面に残るようにメールで確認するといった方法も有効です。
 

いろいろと学びの多い事件でしたので、今回はこのようにまとめさせていただきました。企業様の健全な採用活動の、求職者の健全な就職活動の学びになれば幸いです。


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