【観劇レポ】音楽の宇宙へ ミュージカル「モーツァルト!」
秋の観劇ラッシュ、トリを飾るのは待望の再演・ミュージカル「モーツァルト!」大阪公演。
「モーツァルト!(以下、M!と略)」は、実は生で観劇するのが今回初めて。DVDは何度も見ているので、ストーリーや演出、曲目はばっちり僕の細胞に染み込んでいるのですが、ようやく直に味わうことができました。
しかも僕の持っている円盤は、無観客収録なので拍手がないのですが、やっぱり拍手があると感じ方も一味違うなと思いました。シカネーダーの見せ場「チョッピリ〜」が代表例。遠山さんも掃け際に「ありがとう!」って言うてたし。
今回の再演は、新ヴォルフガング(京本くん)がフィーチャーされていますが、僕が観たのは古川ヴォルフ。いやー、もう随分とヴォルフと一体となっているといいますか、代表作といいますか。
前回ゆん氏を観たのは、薔薇組トップスターによるエレクロリカルパレードで観劇界隈に衝撃を与えた(?)某ルパンだったので、個人的にはやっぱりこういう古川雄大が観たいな、と思えた観劇でした(怪盗は怪盗で良さはあったけど)。
ストーリーや背景、感じたテーマやキャラクターについては、前回公演時のレポにまとめていたので割愛。
改めて自分のnoteを読み返すことはあまりないですが、当時の僕、なんか真面目でいい子ちゃんな文章を書いてますね。
圧倒的にいい
感情的な感想から書くと、やっぱりウィーンミュージカル好きやなぁ!古川雄大とんでもなく良いなぁ!です。
いわゆるクンリー作品に数えられる本作。このドラマチックさ、湧き上がる大ナンバー。ミュージカルにも様々ありますが、定期的に摂取したくなるのがこのウィーンミュージカル。鼓膜を通り越して細胞が喜んでいるのが自覚できますもんね。
そして古川雄大。いやーあっぱれ。ヴォルフは表面上陽の者で、陰が滲み出てくる(抗えなくなる)というキャラクターだと思っています。古川雄大氏はそれにピッタリな気がするんですよね。歴代(あっきー、芳雄さん、いっくん)とも別の彼自身のヴォルフが完成しつつ、かつまだまだ成長もするやろうなと感じました。彼自身も自信がついたのでしょうかね。感じる説得力がとてつもない。
自信がついた、というのが僕の妄想でなければ、その自信がまさにヴォルフの陽の面にはストレートに、陰の面にはその複雑さと深さ、そして繊細さを描き出すのに大きな役目を果たしているように思います。
あと何かに追い詰められる闇属性の古川雄大は、良い。をかし。
レジェンド
父レオポルトの市村正親さん、コロレド大司教・山口祐一郎さん、ヴァルトシュテッテン男爵夫人・香寿たつきさん。
もう何度もこの作品で演じてこられた方々ですし、今更そのすごさを言うまでもないのですが、やっぱり生は違う。配信(映像)で通すより、絶対に生のほうが迫力も何もかもいいです、というのを感じさせてくれるレジェンドたち。
市村パパの「愛の深さ」、祐様のヴォルフに対する複雑な感情は、生で観てこそ、いや感じてこそ真価が発揮される。映像でももちろんいいけど、現代の映像技術では彼らの真価を映し出せないとすら思えます。お二人は、今回でもしかすると最後のご出演では?という巷の噂もありますが、体力続く限り演じてほしいハマり役だと思っています。
男爵夫人はかなめさん(涼風真世さん)で何度も観ているのですが、たーたん(香寿さん)の男爵夫人は「貴族の女性」というか、人間、という感じがする。ヴォルフを導くパトロンとして、あるいは社交界の権力者として。
かなめさんはまさにフェアリー、憧れの精という面が強いように感じたので、相対的にかもしれませんが。
新キャスト
今公演からの新キャスト。コンスタンツェは真彩希帆ちゃん。姉ナンネールは大塚千弘さん。コンスのママ・セシリアの未来優希さん。
コンスは木下晴香ちゃんのイメージが強く(単純に何回も観ているから)あるのですが、晴香ちゃんのコンスは「憂い」が強いのに対して、きいちゃんのコンスは陰陽のギャップを強く感じました。あるいは憧と哀。
ヴォルフの死後の雰囲気(再婚後)と、劇中の雰囲気も全く別人のようで、劇中でも、「何かが特別」なヴォルフへの憧れと、理解できない哀しみとが入り混じっていて、コンスタンツェというキャラクターの解像度と見え方が深まりました。名曲「ダンスはやめられない」のアレンジも「そんなことしちゃう〜!?」って感じでゾクゾクしました。
大塚千弘さんのナンネールは、レオポルトが亡くなったところでのヴォルフへの強い怒りが印象的。和音さんやお花様のナンネールは怒りの手前に悲しみや辛さがまずあったように思うのですが、「今までも何回も言ってきたじゃない!」という感じでしょうか。
未来優希さんのセシリアは、某マダム・ヴォルフを思い出してしまいますが、ヒール役に徹したセシリアという印象。今まであまり強くは感じなかったのですが、改めてヴォルフガングにとっての敵、という感じがしました。
名曲たる由縁
M!の名曲といえば、ヴォルフガングの曲では「僕こそ音楽」「影を逃れて」が2大巨頭かと思いますが、このキャラクターを、この作品を表す代表曲が代表曲である由縁を改めて感じました。
他にも名曲はあるけど、モーツァルト!という作品を一言で表せと言われれば、この曲を差し出すのが正解。
「僕こそ音楽」は、彼の自信と、愛への渇望(しかもありのままの自分への無償の愛)。「影を逃れて」は、才能は誰のものなのかという作品のテーマと、人間の内在闘争、あるいは精神世界という宇宙。
壮大なウィーンミュージカルの代表曲でもありますが、この「人」を分析し、音楽で魂を創り出すかなような名曲はやはり素晴らしい。
総括
ベートーヴェン以来のクンリー作品でしたが、何度も観ているからというのを差し置いてもやっぱり好き。改めて思いました。あ、クンリー作品といえば、そろそろマリー・アントワネットの再演してくれませんかね。
今回は平日ソワレでしたが、子役(若杉葉奈さん)もカーテンコール、そして古川雄大くんとの掃け挨拶まで参加されていて微笑ましかった。開演時間がちょっと早めだったゆえですが、良かったです。
新生・京本ヴォルフも観てみたかったですが、さすがにチケット戦争に勝てず、僕のM!はこれにて終了。またしばらく観劇の予定がない期間が続くのですが、しばらくM!の余韻に浸ろうと思います。
また再演してね。