作画AIの勃興と炎上にみる「全ての作品の売り物はストーリーになる」という話

最近リリースされたイラスト生成AIサービスが炎上していた。

これの炎上理由は2つあると思う。
1つ目は規約で他人の絵を上げてはいけないことになっているが、それを判断するのが難しい点だ。他人のイラストで作ったAIイラストを他で利用する、商用する、という悪用の仕方が容易に想像できるのでその対策が必要だろう。
2つ目は生成されたイラストがサービス提供先で利用されるという点だ。これは生成されたAIがその後のサービス広告に使われたりAIの学習に使われるのだろう。規約に書いてあっても倫理的にどうなの、という話だ。これは近年のGAFAなどのIT大手がユーザのデータをアルゴリズム学習などに使うことが批判の的になっていることと同じだと思う。生成された画像を学習に利用せず、StableDiffusionのように単純なイラスト生成AIとして出しておけば良かったと思われる(StableDiffusionの方のサービス使ってないので間違っていたらすみません)。この2点が炎上の本筋だろう。ただ今回語りたいのはこの部分ではない。

もう1つ隠れた炎上理由があると思ったからだ。
それはこれまでイラストをゲームなどの素材として売っていたクリエイターたちの仕事がなくなるかもしれない、という危機感だと思う。こちらは今回の炎上の理由ではないにしろ、StableDiffusionのようなものが生まれたことで募っていた不安が、倫理的に間違っていると思われるサービスに牙が向いた形ではないか。
こちらはゲームを作っている自分にもある不安だ。イラスト、音楽、文章といったいろいろなクリエイティブの集合体であるゲームでさえ、いつか生成AIによって簡単に作られてしまうのではないか、という思いである。

ただ、これについてはあえて異を唱えたい。自分たちクリエイターが売っているのは"素材"ではないはずだ、と。
思えば、自分が今趣味の時間でゲームクリエイターとしてゲームを作れているのは色々なものが民主化されてきたからだ。Unityを始めとしたゲームエンジンを無料で使え、イラストやモデル、音楽などの素材はストアで安く買ったりできるようになった。これ自体がおそらく昔からしたらありえないくらい恵まれていることなのだろう、と。そしてその一部をAIが担うこと自体はその民主化をさらに前進することになると思う。

もちろんまだまだ圧倒的グラフィックや新しい斬新なイラストなどのアート素材だけでもAIと勝負する余地は残ると思う。結局生成AIは過去の作品の学習結果を基にするので広い文脈をとらえた新しい作品は作ることができないからだ。ただそれは資金に余裕のある個人や法人によって担われる部分が大きくなるのではないかと思う。

では、自分のような多かれ少なかれ過去の他の作品をリスペクト(オマージュ)して、新しい作品を作っていくような小さな個人はどうすればいいのか、それは「ストーリーを売っていくこと」、これに尽きると思う。ただし文章を書く、ということではない。
自分はどういう人生を過ごしてきたか、どういうものが好きなのか、どういう価値観があるのか、そういったものの中からなぜこの作品を作ろうと思うに至ったのか、を口にしたり作品に込めることで「作品」と「作者」のストーリーに共感してもらいそれを商品化していく。ストーリーを作り続け、それを紡いでいくことでその作品のキャラクターと作者をIP化することも重要だろう。それがこれから自分たちが磨かなくてはいけないものだと思う。ストーリーを売るというとなんだかちょっと野暮な感じがするが、言葉にするのが得意なら語ればいいし、得意でないなら作品にこめればいい、アート・作品はそういうものだと思う。

AIによって生成されたNFTで売り物になるのは「初物」だけだと聞いたことがある。同じアルゴリズムの作品の二番煎じ三番煎じには値が付きづらいらしい。それもつまりグラフィックや絵の美しさに価値がついているのではなく、ストーリーに価値がつくことの証左ではないか。AIの作り手のエンジニアがどういうアルゴリズムを使ったのかのストーリーに価値があり、それを買い手が他の人に語りたくなるから価値がつくのだろう。囲碁や将棋やチェスのAIが人間に勝った瞬間だけ大事になるのもストーリに価値があるということだ。

そう、全てはストーリーだと思う。毎日この世界を必死に生き、考え、苦しみ、それを作品に込め、時に言葉にする。そしてそれを人に共有することで価値を生む。価値を生み続ければ、ストーリーの源泉である作品の主人公や作者自体にも価値が付いてくる。そうして我々クリエイターは生きていくのだ。
さあ、今日も人生を全力で生き、作品を作っていこうと思う。


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