「地球そのものがシェアハウス」(コミュニティの教室第三期レポ)
「地球そのものがシェアハウス」
こんな壮大なスケールで社会を見据えているのは、今回のコミュニティの教室第2回目のゲスト、ソーヤー海さん。
(※このnoteは #コミュニティの教室第三期 のレポートになります。)
ソーヤー海さん(共生革命家、東京アーバンパーマカルチャー主催)
:コスタリカでのジャングル生活中にパーマカルチャーと出会い、アメリカでのパーマカルチャー研修を経て「東京アーバンパーマカルチャー」を主催。
今回もとても学びの多い会になったのですが、どんな話が飛び交ったのか、要所要所順を追いつつ、抜粋しながらまとめていきたいと思います。
ミンゴミンゴやっぱりすごい
第1回目のキックオフでもミンゴミンゴというワークを導入したのですが、第2回目の今回も実施!
※第1回目の様子はこちら↓
↑こちらは今回のミンゴミンゴの様子。
踊りながら偶然出会った目の前の人と、海さんから出されるお題に答えるというかたち。
「コミュニティを感じる時はいつか?」などの深い問いもなかには。
会場はもちろん関係性までも温めてしまうミンゴミンゴ、おそるべし。
菜央さんからの導入「土壌づくりと橋渡し」
まずはgreenz.jp編集長の鈴木菜央さんからの導入。
実は菜央さんとソーヤー海さんはいすみ市でのパーマカルチャー的手法を実践する仲間なのです。
↓菜央さんと海さんの対談はこちら
菜央さんからは主にいすみ市での取り組みを紹介していただきました。
印象的だった言葉は、「土壌づくり」と「橋渡し」という言葉。
1つ目の「土壌づくり」とは、コミュニティ内での土台となる1人1人の関係性のこと。その土壌があれば「これやりたいんだけど誰か手伝って!」とか「それ僕できるから手伝いたい!」とか言いやすいですよね。
2つ目の「橋渡し」とは、いくつかのコミュニティをまたぐ存在のこと。移住者とその地にいる人たちを繋ぐ人、自分の住む市と隣の市を繋ぐ人、こちらのコミュニティとあちらのコミュニティを繋ぐ人、などなど。
橋渡し役がいると、コミュニティ内の風通しが良くなり、新しいコトが生まれたり、関係性の土壌も豊かになりそうですよね。
そんな菜央さんからの話のあとは、海さんから自身の経験に基づきながら、コミュニティについての話が展開されました。
ソーヤー海さん①「コミュニティってなんだ?」
海さんからはまずこんな問いかけが。
「そもそもコミュニティってなに?英語がなんで日本でこんなに流行ってるの?」
コミュニティという言葉だけが独り歩きし、それが何を意味しているのかあまり考えず使っていることも多い昨今に警笛を鳴らし、もっと本質を捉えたいんだという思いがひしひし伝わってきました。
そしてそれは会場も同様。「コミュニティってそもそも必要なの?」「コミュニティって悪い側面もあるんじゃない?」など、参加者の皆さんからもhow toなどの即席な学びではなく、根底を考えたいという思いを感じました。
そこから、パーマカルチャーと平和道場の話、ビルの屋上にガーデニングスペースをみんなでつくった話、議員会館で議員の人と一般の人たちをごちゃ混ぜにして味噌づくりをした話などを聞きました。
ここで印象的だったのは「繋がりは、数よりも質が大事だと思う」という言葉。
SNSではフォロワー数や友達の数が可視化され繋がりが多い方が良し、とされている空気感が良くも悪くもありますよね。かくいう自分も、フォロワー数を気にしてしまう。
でも、自分が本当に助けて欲しい時、そのフォロワーのなかに何人手を差し伸べてくれる人がいるでしょうか?
誰とでも繋がれる時代だからこそ、繋がりの質にしっかりフォーカスしたい、そう感じました。
そして、繋がりの質を高めるには「人間として1人1人と接することが大切」。
当たり前だろって思うかもしれませんが、日常の中で、その人の職業の肩書きや所属、性格や見た目、話し方などでその人を判断してしまうことってありませんか?
僕たちは職業的な肩書きを背負う前に、同じ1人の人間である。デザイナーも議員も先生も当たり前だけど、同じ人間。
でもそういう前提に立てるだけで、目の前の人や事象に寛大になれる気がしませんか?
そういったアクションから見えてきた「コミュニティ」の要素を海さんなりに分解したものが以下になります。
コミュニティの3要素。
①「こういうことが巻き起こるコミュニティにしたい!」といった理想のイメージ(IDEA)。
②自然とコミュニティに育っていくような、人と人が交わることで起きる体験(EXPERIENCE)。
※概念を消費(例:エコという言葉で商品を売る)するのではなく、リアルの体験を重視することが大事。売り文句ではない体験を用意すること。
③自然と体験が生まれていくように、また、自然と人と人が関係性を築けるようになる仕組み(SYSTEM)。
このどれをとっても成り立たないし、どれか一つだけ実践してもうまくいかない。そんな3つだなぁと感じました。何かを始めるときに立ち返りたい言葉たちです。
そこから海さんの話は、自身のルーツであるコスタリカのジャングルの話に続いていきます。
ソーヤー海さん②「地球そのものがシェアハウス」
海さんは以前、コスタリカのジャングルで生活していたのだそう。(しれっと言ってたけど普通にすごい)
ジャングルでの生活は動物や植物との共存が必須。
食べ物や飲み物や空間を共有することだけでなく、お互いのニーズに踏み込んだコミュニケーションが求められるそうです。
お互いのリズムを探りながら生活していく中で気づいたことは、
「地球そのものが大きなシェアハウス」だということ。
さらに生きていくうえで大事なことは、「自分と似ている人だけじゃないコミュニティで、どうみんなが心地よく過ごしていけるかを考えること」それはつまり、「対立が生まれるのは当たり前という前提に立ち、その対立を乗り越えてより深い関係性になるためにはどうすればいいのか」というスタンスになること。
邪魔者は排除する対象ではない。その人にはその人の大事にしたいニーズがあるだけ。
海さん曰く、邪魔と思う人を邪魔者たらしめる根源は自分の頭の中にあるそう。自分に都合の悪い人を無意識のうちに排除する対象としてしか見ていないということ。
お互い対立してしまうような人達でも、お互いのニーズを知り、深いところでコミュニケーションをすること、それぞれが合わないからと排除しあうのではなく、ニーズに基づいて「いかしあう」こと。
パーマカルチャーとはつまり、「いかしあう関係性をデザインすること」なのだそう。
ここから終盤にかけて、人の無意識などのシステム・構造の話に展開していきます。
ソーヤー海さん③「構造からの変革」
まず、話はシステム思考へと展開。
システム思考とはざっくりいうと、ものごとの全体像を把握するフレームのこと。
このフレームは上の図のように4つに分かれます。
表面上の行動で分かりやすく注目されやすい「できごと」。それが中長期でみえてくる「行動パターン」。それを引き起こしている「構造」。そして、その構造自体の前提になっている「意識・無意識の前提」。
これら4つでものごとを把握することで、全体像を捉えやすくなったり、自身のバイアスに気づけたり、人との関係性の在り方が変わったりするそう。
システムから変革を起こそうとした例として挙げられたのが、ポートランドのシティリペア運動。
「街の交差点を乗っ取って市民の場所をつくる」というもの。
元々は違法行為だったこの運動も、市が認め合法化へ。人びとの憩いの場になり、子供も自由に遊べ、非行も減り、関係性も生まれる。
目の前の状況や現象に文句を言うのではなく、「どうやって構造から変えることが出来るのか」を考え行動に移すことの大切さを教えてくれます。
華やかなイベントや運動を企画するのではなく、しなやかに力強く構造から変えていく。まさに菜央さんが言っていた「土壌をつくること」が大切なのではないでしょうか。
ここで土壌を作っていくための第一歩としてのヒントを海さんは教えてくれました。それが「アセットマッピング」というもの。
簡単に言えば、「その人のできることとして欲しいことを可視化する」というもの。
その場に存在する資源と可能性が可視化されれば、新しいモノや制度をつくるのではなく、人びとが「いかしあう」ことで関係性がうまれ、自然とものごとが動いていくのだそう。
これもまた、「構造」から変えていくということですよね。
そして最後に話はギフトエコノミーへ。
ソーヤー海さん④「ギフトエコノミーの可能性」
僕たちは構造に大きく支配されていることは上で書いた通り。
でもその下にはさらにその構造を形作っている、「意識・無意識の前提」が潜んでいるのです。
意識・無意識の前提とは例えば、「お金がないとできない」とか「人ってみんな利己的だよね」とか。
そんな意識・無意識の前提を覆すニップンメッタさんの「ギフトエコノミー」の試みが紹介されました。
大事な問いは、
「人々が無私に行動したがっていると仮定したら、どんなデザインが現れるのか?」というもの。
つまり、人々がみんな「誰かのために貢献・行動したがっている」という前提で世の中をデザインしたらどうなるのか?ということ。
その前提に立ってみるだけで、今の価値観がどんどん揺らいできますよね。
ディスカッションタイム
※ここでは会場ででた質問と回答をいくつか抜粋し、簡略化してまとめています。
Q1:「現実的にパーマカルチャーを根付かせることはできる?」
A1:「資本主義かパーマカルチャーかといった2項対立ではない。どちらの側面にも触れつつ自分の心のままに生きてみることが大事なのでは?」
Q2:「みんながモチベーションを保ちながら、主体的に動き続けていくためにはどうすればいい?」
A2:「まず誰のための活動なのかをはっきりさせること。まず実名で○○さんのために行動する。それがモチベーションの源泉。大義名分じゃ続かない。そして主体性は満たされることが大事。満たされる要因は人によって違うからこれも関係性を築くことから。みんながこの場にいると満たされるっていう感覚や体験を共有していることが大事なんじゃないかな。」
最後に
僕たちは常に誰かが決めた構造によって動かされていたり、自分では気づかない無意識の中で日々を送っていたりします。
ついつい目の前の人を蔑ろにしてしまったり、相手の背景を考えずに非難してしまったり、自分と都合のいい人を求めてしまったり...。
何気なく過ごしている日々の中で、少し俯瞰してものごとや自分を見てみたり、目の前の人とのコミュニケーションを大切にしてみるだけで、世界は今よりもちょっとだけ良いものになっているのかもしれない、と海さんの話を聞いて思いました。
次回はクルミドコーヒー/胡桃堂喫茶店の影山さん。
しかも現地での講義。
ワクワク。
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