工芸品と量産品における「用の美」
「用の美」という言葉を知ってますでしょうか?
生活用品として使われていた道具は、使われているときが一番美しいと言えます。そこには装飾性などはなく、純粋な機能があるだけ。実用性の中に美しさを見出します。
1926年に柳宗悦氏らによって提唱された「民芸運動」から生まれた言葉で、日常的な暮らしの中で使われてきた日用品に「用の美」を見出し、新たな価値を称えました。これらの多くは工芸品とも民藝品とも言われています。
プロダクトデザインとの関係
用の美は、プロダクトデザインとも結びつきが強いです。「用の美」や「民藝品」は、無名の職人による手仕事による日用品を指すことが多く、工芸品のデザインにおいても実用的であるかが大事だと言えます。
一方で、量産品などのプロダクトデザインでも同じことが言えます。量産品であろうとも、モノである以上は用途をまず考えます。その次にスタイリング、色、価格などが決まってきます。
機能的なデザインが良いのか、見た目の美しいデザインが良いのか。
現代の家電や日用品などの量産品では、最新の機能やデザインをもつ新製品が生み出されていますが、数年で買い替えてしまうこともあります。一方で、長年にわたって使われ続ける日用品、道具や家具などがあります。
これらの違いはなんでしょうか?
「用の美」が備わっているかどうかだと言えます。
その量産品は本当に使えるものなのか。実用的なデザインなのか。見た目に惑わされていないか。流行りに依存していないか。単なる機能美で終わっていないのか。壊れずに何年も何十年も使えるものか。
これらを自問し、試作を作り、生活の中で検証していくのがプロダクトデザインでは求められます。量産品でも、まず用途に徹して、誰かにとって自分たちにとって使いたいものを作るのが重要になります。
建築家であるルイス・サリバン氏も、この有名な名言を残しています。
Form Follows Function(形態は機能に従う)
引用元:Louis Henry (Henri) Sullivan,
機能性を追求することで、形は自ずと決まる。つまり用が美を作るを示した言葉です。
柳宗悦氏の言葉をいくつか紹介して、終わります。
今の器が美に病むのは用を忘れたからである。奉仕せよとて器は作らないからである。奉仕の心は器に健全の美を添える。健全でなくば器たり得ないだろう。工芸の美は健康の美である。
工芸においては用の法則は直ちに美の法則である。
実用を離れるならば、それは工芸ではなく美術である。
引用元:柳宗悦 工芸の道
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