見出し画像

井上恭子議員の発言や情報発信は政治倫理条例に違反していない

はじめに

常滑市議会の政治倫理審査会は、市議会議員の井上恭子氏に対して、虚偽の発言や情報発信によって他人の名誉を毀損したとして、文書による厳重注意を下した。

しかし、この審査結果は、政治倫理条例の趣旨や適用基準に照らしても、不当であると言わざるを得ない。

本論では、審査結果報告書の内容を分析し、その問題点を述べる。

本論

審査結果の問題点

審査結果報告書では、常滑市議会議員政治倫理条例第3条第6号「公人としての発言又は情報発信は、確たる事実に基づいて行うこととし、虚偽の事実を適示することによって他人の名誉を毀損する行為」について、次の4項目を述べている。

  1. 「学校給食で子供たちが病む」と言われたと繰り返し書き込んだり、また、公式の場で発言されたが、当事者との内容が食い違うことから、証明議員に書面にて確認にしたところ、井上恭子議員の虚偽であることが判明した。

  2. 「訂正しなければ議場で決着をつける」と言われたと公式の場で発言されたが、当事者との内容が食い違うことから、証明議員に書面にて確認にしたところ、井上恭子議員の虚偽であることが判明した。

  3. 決議案の提出に際し、事前に事務局に確認したら「動議が出ると言われた」と話されたが、議会事務局に書面にて確認したところ、このような事実はなく、井上恭子議員の虚偽であることが判明した。

  4. 井上恭子議員が自身で管理しているFacebook に「決議案に対し1名の方にメールをした」と記載していたが、任意提出のLINE及びメールについて、事実関係調査委員会に書面にて確認にしたところ、同様の内容で5名に送信しており、井上恭子議員の虚偽であることが判明した。

常滑市議会議員政治倫理審査会審査結果報告書 第2頁
常滑市議会議員政治倫理審査会審査結果報告書 第3頁

まず、政治倫理条例第3条第6号は、「公人としての発言又は情報発信は、確たる事実に基づいて行うこととし、虚偽の事実を摘示することによって他人の名誉を毀損する行為をしないこと」と定めている。この条項の違反を認定するには、次の三つの要件が必要である。

  1. 発言や情報発信が虚偽であること

  2. 発言や情報発信が他人の名誉を毀損すること

  3. 発言や情報発信が公人としての責務に反すること

しかし、審査結果報告書において、これらの要件が十分に検討されているとは言えない。調査の結果(第2頁)で虚偽であると判明したと述べる

(1) 虚偽の発言の認定について

審査結果報告書は、井上氏が虚偽とされる行為をしたという事実を、証明議員や議会事務局の書面によって確認したと述べているが、これらの書面は、井上氏の発言や情報発信の内容と、当事者の主張との間に食い違いがあることを示すに過ぎない。

井上氏の発言や情報発信が虚偽であると断定するには、客観的な証拠や根拠が必要であるが、審査結果報告書には、そのような証拠や根拠が提示されていない。

例えば、井上氏が「学校給食で子供たちが病む」と言われたと繰り返し書き込んだり、公式の場で発言したことについて、審査結果報告書は、証明議員の書面によって、井上氏の発言が虚偽であると認定している。

しかし、この書面は、井上氏が発言したときの録音や録画、または、井上氏が言われたと主張する人物の証言など、客観的な証拠を含んでいない。

また、井上氏が「学校給食で子供たちが病む」と言われたという事実が虚偽であるとしても、それが他人の名誉を毀損するということも示されていない。

井上氏が指摘した学校給食の問題点は、市民の利益や公共の福祉に関わるものであり、議員としての発言や情報発信の対象となりうるものである。

井上氏が自分の見解や疑問を表明したことは、政治倫理条例の趣旨や適用基準に照らしても、公人としての責務に反するとは言えない。

(2) 名誉毀損の認定について

審査結果報告書は、井上氏の発言や情報発信が他人の名誉を毀損したという事実を、調査結果では検証していない。
聞き取り調査で明らかになった議員の心理的苦悩について次のように述べている。

聞き取りした議員からは、「とても恐怖を感じた」「不安で圧力を感じた」「家族のことが心配だった」「裁判に訴えられるとの不安は今でもある」「妻に影響があるかもしれないところまで考えた」「議員活動に圧力や制限をかけられ苦痛であった」「その後の政治活動にも影響があった」「井上恭子議員と話すと、何を書き込まれるか不安になった。話すことができず、議員活動に影響が出ている」「深刻な後遺症が残っている」「精神的にも、体調不良など、もう数か月苦しんでいる」など、個々の抱える心理的苦悩が聞き取り調査で明らかになったという。

しかし、虚偽だと認定した発言や情報発信の4項目と、聞き取りした議員の心象との間には、論理的なつながりが見られない。井上氏の発言や情報発信が虚偽であるとしても、それが他人の名誉を毀損するということも示されていない。

井上氏が指摘した学校給食の問題点は、市民の利益や公共の福祉に関わるものであり、議員としての発言や情報発信の対象となりうるものである。井上氏が自分の見解や疑問を表明したことは、政治倫理条例の趣旨や適用基準に照らしても、公人としての責務に反するとは言えない。

また、聞き取りした議員の心象は、大げさに自己の感情を述べることで、被害者を演じているように見える。

交通事故における「あたり屋」と同じであると言っても過言ではない。井上氏の発言や情報発信が、聞き取りした議員に対して、どのような具体的な不利益や損害を与えたのか、その根拠や計算方法が示されていない。

名誉毀損とは、他人の社会的評価を低下させるような虚偽の事実を公然と伝えることであり、民法第709条や刑法第230条1項によって禁止されている。名誉毀損を認定するには、次の三つの要件が必要である。

  1. 公然と事実を摘示すること

  2. 人の名誉を毀損すること

  3. 故意または過失があること

審査結果報告書は、これらの要件を満たすような事実や証拠を示していない。井上氏の発言や情報発信が、他人の社会的評価を低下させるようなものであったのか、その基準や判断方法が不明確である。

また、井上氏の発言や情報発信が真実でないことを客観的に証明することもできていない。さらに、井上氏が故意または過失によって他人の名誉を毀損することを目的としたという事実や動機も示されていない。

(3)公人としての責務違反の認定について

さらに、審査結果報告書は、井上氏の発言や情報発信が公人としての責務に反したという事実を、政治倫理条例の趣旨や適用基準に照らしても、明確に示していない。政治倫理条例は、市民の信頼を損なう不適切な行為を防止することを目的としており、公人としての発言や情報発信は、市民の利益や公共の福祉に関わるものでなければならない。

井上氏の発言や情報発信は、市民の利益や公共の福祉に関わるものであったのか、それとも、個人的な感情や思想に基づくものであったのか、その区別が曖昧である。

また、政治倫理条例は、議員の自由な議論や表現を保障することも重要な観点としており、公人としての発言や情報発信には、一定の裁量や容認が認められるべきである。

井上氏の発言や情報発信は、その裁量や容認の範囲を超えたものであったのか、それとも、その範囲内に収まるものであったのか、その基準が不明確である。

例えば、井上氏が「訂正しなければ議場で決着をつける」と言われたと公式の場で発言したことについて、審査結果報告書は、証明議員の書面によって、井上氏の発言が虚偽であると認定している。

しかし、この書面は、井上氏が発言したときの録音や録画、または、井上氏が言われたと主張する人物の証言など、客観的な証拠を含んでいない。また、井上氏が「訂正しなければ議場で決着をつける」と言われたという事実が虚偽であるとしても、それが他人の名誉を毀損するということも示されていない。

井上氏が報告した他の議員とのやりとりは、議員としての正当な権利や義務であり、市民の利益や公共の福祉に関わるものである。

井上氏が自分の立場や主張を表明したことは、政治倫理条例の趣旨や適用基準に照らしても、公人としての責務に反するとは言えない。

このように、審査結果報告書は、井上氏の発言や情報発信が政治倫理条例第3条第6号に違反するという認定について、事実調査や法的根拠を欠いており、恣意的であると言わざるを得ない。

2 審査結果の取り消されるべき理由

以上のように、審査結果報告書は、井上氏の発言や情報発信が政治倫理条例第3条第6号に違反するという認定について、十分な事実調査や法的根拠を欠いており、恣意的であると言わざるを得ない。

このような審査結果は、市民の信頼を損なうだけでなく、議員の自由な議論や表現を妨げるものであり、政治倫理条例の趣旨に反するものである。

したがって、この審査結果は、取り消されるべきであると考える。
審査結果の取り消されるべき理由は、次のとおりである。

  • 審査結果は、井上氏の憲法上の基本的人権である言論の自由や表現の自由を侵害するものである。井上氏は、市民の利益や公共の福祉に関わる問題について、自分の見解や疑問を発言したり、情報発信したりしたに過ぎない。これらは、議員としての正当な権利や義務であり、政治的な活動の一環である。審査結果は、井上氏の発言や情報発信を虚偽や名誉毀損として非難し、文書による厳重注意という形で制裁を加えることで、井上氏の言論の自由や表現の自由を制限するものである。これは、憲法第21条によって保障された井上氏の基本的人権を侵害するものであり、許されない。

  • 審査結果は、市民の知る権利や参加する権利を損なうものである。井上氏は、市民の利益や公共の福祉に関わる問題について、自分の見解や疑問を発言したり、情報発信したりしたことで、市民に対して、議会の議論や決定の過程や内容を開示したり、市民の意見や要望を反映したりする役割を果たした。これらは、市民の知る権利や参加する権利を実現するものであり、民主的な政治の発展に寄与するものである。審査結果は、井上氏の発言や情報発信を虚偽や名誉毀損として非難し、文書による厳重注意という形で制裁を加えることで、井上氏の市民に対する情報提供や代表機能を阻害するものである。これは、市民の知る権利や参加する権利を損なうものであり、許されない。

  • 審査結果は、政治倫理条例の趣旨や適用基準に反するものである。政治倫理条例は、市民の信頼を損なう不適切な行為を防止することを目的としており、公人としての発言や情報発信は、確たる事実に基づいて行うこととし、虚偽の事実を摘示することによって他人の名誉を毀損する行為をしないこととしている。しかし、審査結果報告書は、井上氏の発言や情報発信が虚偽であるということや、他人の名誉を毀損するということを、客観的な証拠や根拠に基づいて示していない。また、井上氏の発言や情報発信が、市民の利益や公共の福祉に関わるものであるということや、議員の自由な議論や表現を保障することを考慮していない。このように、審査結果報告書は、政治倫理条例の趣旨や適用基準に反するものであると言える。

結論

以上のように、常滑市議会の政治倫理審査会による審査結果報告は、事実調査や法的根拠を欠いており、論理的にもつながっておらず、恣意的である。

井上恭子議員への文書による厳重注意は、井上氏の憲法上の基本的人権である言論の自由や表現の自由を侵害するものであり、市民の知る権利や参加する権利を損なうものであり、政治倫理条例の趣旨や適用基準に反するものである。

したがって、この審査結果は、取り消されるべきであると主張する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?