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白黒二分法とリスクコミュニケーション:常滑市議会における井上恭子議員発言に関する決議の再考
はじめに
2023年9月、常滑市議会は、井上恭子議員が一般質問で提起したオーガニック学校給食の予算化に関する問題に対して、発言撤回と猛省を求める決議を行いました。この決議は、議員の質問権・意見表明権を侵害するものとして批判を集め、リスク分析とリスクコミュニケーションの観点から重要な問題提起をしています。
井上議員の発言と教育委員会の反応
井上議員は、オーガニック給食の導入に向けた予算化を求め、子供たちの健康に対する食の重要性を訴えました。
しかし、教育委員会は原材料高騰を理由に、栄養確保を優先すると答え、井上議員の提案に否定的な姿勢を示しました。この後、教育委員会の安藤教育部長は、「決して子供たちが病むような給食は提供していない」と再答弁しました。
これに対し、井上議員は「病むとは言っていません。牛乳を今、飲まないでと言って運動しているお母さんたちもいます。いろいろそれぞれです。病む人もあります。だから、それは私は否定したいと思います。」と発言しました。
市議会の決議と批判
常滑市議会はこれらの発言を単純化し、「病む」と一方的に断定したかのように扱い、発言の撤回と反省を求める決議を採択しました。
https://www.city.tokoname.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/416/ketugian1.pdf
この決議には、議員の質問権・意見表明権を侵害するものとして、批判が集まっています。
リスク分析とリスクコミュニケーション
この決議は、「白黒二分法」的な反応の典型例として、リスク分析とリスクコミュニケーションの観点から問題があります。
常滑市議会の3月議会での一般質問において、安藤教育部長の答弁を通じて、「食の安全」についての議論が、単なる「白黒二分法」ではなく、「リスク分析」というより洗練されたアプローチを要するものであることが明らかになりました。 国の食品安全基本法にも定められているこの「リスク分析」は、問題の「程度」を考慮に入れる手法です。
9月議会の議事録を再検証したところ、井上議員が「病む」と断定的に述べたわけではなく、「病む人もいる」「いろいろそれぞれです」「病むとか、いいとか悪いとか分かりません」「100%も分からない」「100%とは言えない」と、問題の「程度」について言及していたことが判明しました。 さらに、「病むとは言っていない」「私は否定したい」と明確に否定していました。
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しかし、常滑市議会はこれらの発言を単純化し、「病む」と一方的に断定したかのように扱い、発言の撤回と反省を求める決議を採択しました。 これは、議論の核心を見失い、多面的なリスク評価の重要性を軽んじる行為であると言えます。
リスクコミュニケーションの重要性
リスクコミュニケーションとは、リスクを科学的根拠に基づいて理解し、関係者間で共有し、意思決定に役立てるためのコミュニケーションです。
常滑市議会における井上恭子議員の発言に対する撤回と猛省を求める決議は、議論の本質を見失う白黒二分法的な反応であり、リスクコミュニケーションの重要性を軽視していると言えます。
多様な意見の尊重と建設的な議論
議員の意見表明権は民主主義の基本であり、多様な意見やリスクに対する適切な評価を阻害する白黒二分法的な反応は、建設的な議論を妨げるものです。
常滑市議会は、リスク分析とリスクコミュニケーションを通じて、市民の健康と安全を守ることを最優先とすべきです。
結論
常滑市議会における井上恭子議員の発言に対する撤回と猛省を求める決議は、議員の意見表明権を侵害し、リスクコミュニケーションの重要性を軽視しているという問題点を抱えています。
常滑市議会は、井上議員の発言を一方的に断罪するのではなく、多様な意見を尊重し、リスク分析とリスクコミュニケーションに基づいた建設的な議論を行うべきです。