【マンガ感想文】ふつうの軽音部 第42話 「輝く日々が曇る」
今回も文字にして残したい描写がたくさんあったので、感想を綴ります。
内容に触れるので、未読の方はリンクへ。
前回までのあらすじ
後夜祭の軽音部引退ライブ、たまきはかつてのバンドメンバーである夏帆がライブを聴きに来ている姿を見つける。大トリで、いよいよ性的カスタマーズの演奏が開始。演奏の中、たまきは2年前の軽音部に入部した頃を思い返す。
感想(ネタバレ注意)
夏帆の表情
今回、夏帆の表情の描き方・使い方がとても印象に残りました。
まず、カラオケでたまきの歌を聴いた時の、唖然とするような、絶望とも見れるような驚きの表情。
そして顔を紅潮させながら、たまきに話しかける喜田をみて、気づいてしまったような表情。
「ボーカルやればよかったのに」というたまきへの言葉に、自分の不甲斐なさから俯く表情。
懸命にボイストレーニングの本を読む表情。
たまきのコーラスの真横で歌う表情。
ライブ後、たまきへの賛辞をに俯く表情。
喜田のたまきへの好意を目のあたりにしたときは、目が隠された表情。
中学の時、喜田に好意を寄せている表情。
そして、たまきの大切な気持ちを利用しようとする自分への表情。
全て、文字を一切使わず、表情のみで描写されたコマでした。
夏帆は表情で感情を描写されるのは、喜田やたまきへの感情を言葉にできないからだと思いました。
それは恥ずかしさ、劣等感、自己嫌悪、嫉妬、そして2人とも大切に思う愛があるからだと私は思います。
そして夏帆は他者に向ける言葉や表情を、自分の感情を隠すために使います。
夏帆は自分の過ちにさえ犯す前に気づいてしまうような聡い人だから、言葉にされずとも他者の感情や期待に気づくし、言葉にせずとも自分の発言が相手にどんな感情を与えるかわかってしまうのだと思います。
そして夏帆にとって喜田もたまきも大切な存在だから、夏帆は何も言えず去ることを選んでしまったのだと思います。
たまきは夏帆の異変に気づかなかったのか
私は今回の最後、夏帆が練習があるのに帰ったタイミングでたまきは異変に気付いたのだと思います。
では、なぜたまきは夏帆の異変に気づかなかったのか、それはたまきは本心で夏帆がボーカルとして成長していることを感じていたから。
そして、事実夏帆は歌が上手くなっているのでしょう。ライブ中のたまきの表情や発言からそう思います。
たまきは自分たちが前よりも上手くなっていることを感じており、音楽をより強く楽しいと感じている。
たまきは自分が他メンバーよりも上手であることを自覚していない。そもそも自分と他者を比較していません。たまきは過去の自分と今の自分を比較しています。
そして、たまきにとってボーカルは夏帆であり、ボーカルが変わるという発想は微塵もない。なぜならたまきは夏帆以上に夏帆のボーカルの成長を感じているし、夏帆のボーカルが好きだから。
でも夏帆はたまきと並ぶことで、たまきと自分を比較して劣等感を覚え居ている。
同時にたまきは喜田の好意に気づいていません。
それは最初のページでわかるように、たまきは恋愛感情をバンドメンバーに抱いていません。
それに喜田への発言をとっても、たまきは仲のいい男友達として喜田を捉えていると思います。
だから、たまきにとって夏帆が練習あるのに帰ったことは突然の出来事だったのでしょう。
たまきにとって一番親密に見える夏帆が突然姿を消すのは、たまきにとって3年間の軽音部活動でずっと心の中に抱える出来事だと思います。
その感情が、前41話でライブを聴きに来た夏帆を見つけた表情に表れていると思っています。
今回登場した曲
mihimaru GT 「気分上々↑↑」
カラオケで山添君が歌ってました。鉄板カラオケナンバーですね。
SHISHAMO「恋する」
たまきたちが初ライブで演奏した曲です。
新入生らしい明るい曲調であると同時に、サビには当時の青春を懐かしむような切なさを感じました。
銀杏BOYS「夢で逢えたら」
たまきがカラオケで歌って、皆が歌の上手さに気づくきっかけとなった曲です。
これを同級生の女子が上手に歌ってたら惚れるのはわかる。
終わりに
前話で喜田がたまきを笑かした時に「いや、誰も笑かそうとしてないから」と言っていたのに、今話は「いやでもたまきに笑ってもらえたから、着てきたかいがあったな~」とたまきへの好意が漏れてしまっていて、その変化をずっと近くで見てきたら苦しいよね、と胸が痛くなりました。
引退ライブでのたまきが夏帆に向けて、どんな感情を歌に乗せるのか。
夏帆がどんな表情でたまきの感情を受け取るのか。
次週がとても楽しみです。