【アニメ感想文】 チ。-地球の運動について- エピソード4 「この地球は、天国なんかよりも美しい」

内容に触れるため、未視聴の方はリンクへどうぞ。

あらすじ

ラファウの死から十年後――。代闘士のオクジーは気乗りのしない仕事で日銭を稼いでいた。同僚のグラスは天体を観測し、ある法則を見出すことに生き甲斐を感じているが、オクジーは現世に希望を見出せず、早く天国に行くことだけを願っていた。

ある日、彼らは一人の異端者を護送する任務を負うことになる。その異端者の言葉に警戒心をもつオクジー、一方徐々に心を動かされていくグラスだったが――。

https://anime-chi.jp/story/detail.php?id=4

感想

現世を諦め天国に期待するオクジ―と現世に期待するグラス

本話、オクジ―とグラスは対照的に描かれている。
オクジ―は現世、そして自分を諦め、天国に期待する人間(宗教的正解)

「期待したら裏切られるのがオチ。これが俺の信条です。はなから諦めたほうが傷が浅くて済む」
「この世は終わってる。なので希望は天国にしかない」

一方グラスは現世に期待して生きている。

グラス「オクジ―君、この世に好きなものや事はあるかい?」
オクジ―「穢れたこの世を好ましく思うのは不適切では?」
グラス「そんなことないよ。”好き”がいけないわけがない。この世に期待しなくなると、我々の魂は瞬く間に濁ってしまう。好きとか夢とか希望とか、そういうものは捨てちゃダメだ!」

そんなグラスの世界への希望は火星の円環。

グラス「だが私は見つけてしまったのだ。絶対の信頼を置ける、希望をね。」

しかし火星は曲がる。
現世に唯一存在すると思われた完璧に裏切られたグラスは現世へ絶望

グラス「完璧な円環が壊れた。醜く歪んだ。これが私の運命か…」

グラスはオクジ―の信条が言うように、期待しただけ大きく心に傷を負う。

ありもしない天国

そんななか、2人に異端者の移送警備の仕事が入る。
移送中、異端者は2人に天国が本当にあるのか問う。

「君らはこの世の絶望から目をそらすために、あるかもわからぬ天国に逃げているだけじゃないのか?」
「人は悲劇を肥やしに時に新たな希望を生み出す。その場しのぎの慰めなんか現実を変えやしない。だが芯から湧き出た苦悩は、煮詰められた挫折は、あるいは君の絶望は、希望に転化しうるのだ」

この言葉に、グラスは自分の感じた大きな絶望は無駄ではなかったと肯定される。オクジ―は彼の発言に異を唱えるが…

「君は、異や人類は正面から向き合うべきだ。麗しの天国なぞないのかもしれないということに。」
「だが、この地球は天国なんかよりも美しいということに」

さらにグラスの心が揺れる。
失いかけていた現世への希望を再肯定されたから。

「今夜君たちはこれから少しの間だけ、恐らく人生で初めて、自らの運命を変える挑戦権を得ている。一生快適な自己否定に留まるか、全てを捨てて自己肯定に賭けて出るか。どちらを選ぶも自由だ。さあ、どうする?」

現世に希望を見つけて、現在を生きているグラス。
彼にとってこれ以上、「この世に期待できる」言葉は無かったのでしょう。

だからグラスは異端者の縄を解くのです。

オクジ―が空を見るのが苦手な理由

グラスに空を観ないのか問われたオクジ―の答えは

「空を見るのは苦手で」

ではなぜ空を見るのが苦手なのか?
異端者はオクジ―に対してこう言います。

「異端か。君がそう呼ばれるものを何故恐れるかよくわかるぞ。」
「君自身が心の底では天国を信じ切れていないからだ。」

私はオクジ―が空を見るのが苦手なのは、空の美しさによって現世への希望を見出してしまうことを恐れているから、だと思います。
もし、現世が美しいと認めてしまうと、天国を肯定できなくなってしまう。
だからオクジ―は現世の美しさから目をそらしているように思えます。

人は、夜空の美しいと感じる感情を否定できない。

君が見上げる夜空がいつもキレイなのは、この穢れた大地から見上げているからだよ

だからオクジーは自分に天国を信じ込ませるために、現世と自分を否定していると思いました。

「天国最高。天国最高。天国最高。」
「生まれてすいません。生まれてすいません。」

オクジ―のようなサラリーマン

なんだかオクジ―みたいなサラリーマンって身近にいません?
かくいう私もそうなのですが。仕事の愚痴はこぼすのに、「なんで嫌なことやってんの?」みたいに言われたら

「いや正直マジでそのとおりなんですけど、仕事なので」

と返してしまう。
仕事というやりたくないことを「安定」とか「生活」とか「キャリア」とか、何かに理由をつけて納得して受け入れて、未来に夢を描くけれど、実際は夢を実現させる行動しなくて。

今に希望は無いけれど、今の生活でいることが”楽”だから「快適な自己否定」というぬるま湯に浸かっている。


だから、異端者がオクジ―とグラスにかけた言葉は、今の自分にも強く響く言葉でした。

グラスが異端者の縄を切ったように、私も、皆が選ぶ正解を生きるではなく、自分の感じる希望や楽しさを肯定するために生きていきたい。

こうやって自分の感情や感性を書き出しているだけでも何かが変わるのかな。
そんなことを思いながら書き綴った感想でした。

終わりに

ノヴァクまだ登場するのか!ラファウの死によって彼に何か変化があったとしたら嬉しいな。
グラス、人の本音と建て前を見分けられるし、ダル絡みにも応じないいい男ですよね。
グラスみたいな人になりたい。そう思った4話でした。

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