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5.ソーシャルワーク3.0 誰でも自分の力を発揮して「する」ことができる

初めて行ったときはどこにあるかわからないほど小さかったその施設は、在籍した8年半の間にどんどん大きくなっていった。
※前のお話はこちら

だんだん利用者の方が増えていき、またニーズを伺うとほんとは就職したいと思っている方もいらっしゃり、私は施設の外に出て、他の支援機関を頼ったり、情報収集したり、学んだりして、それを施設に持ち帰るようになった。

スタッフと協力して、利用者の方とかかわっていくうちに、1人、2人と実際に就職していかれたし、「ずっとここにいる」なんて言っていた方も、きっかけと必要な情報、支援があれば十分に力を発揮して就職された。
「初任給もらいました!」と持ってきてくれた給与明細の額が私たちスタッフより高い!なんてこともあった。

人と環境の相互作用

つまるところ、何か病気や障害があってもその人に必要なリハビリ期間を経た後、「何かしたいな」と思うようになって、実際にどれくらい社会と繋がれるかは、その人の力だけではなくて色んなものとの相互作用による影響が大きいのだ。

仕事がしたい、と思ったときに、
その人自身の体調ややる気以外にも、

働くに適した仕事や価値観の合う環境がみつかるか、しんどいときに頼れる相談相手がいるか、衣食住のバランスはとれているか、経済的に管理ができて見通しがつくか、

色んな要素があって、その全部が均衡をとれたときにやっと初めて社会の中で働ける、という状態になる。

でも裏を返せば、そのバランスが崩れると、たちまちうまく行かなくなって、社会が居づらい場所になり、リハビリが必要になることがある。

しんどいな、と思ったときに気兼ねなく休めるか、試行錯誤してよい方向に軌道修正ができる余白があるか、人間関係は悪くないか、衣食住をある程度整えて、自分を大切にできているか。

外からはできているように見えて、
実はギリギリのところで頑張っている人は多いように思う。

ふつうの人、がいない現代社会

スピードがどんどん上がる社会の中で、今はそれを楽しめている人であっても、少しそれがきつかったり、馴染めなかったり、クエスチョンを持ったときに、それを飲み込んで我慢しながら走っている人も多いように思う。個人の努力と忍耐によってギリギリ成立しているところがある。転職をして、採用人事の仕事をするようになって、その考えはますます強くなった。

実際、採用面接でお会いする候補者の中にはかなりの割合で実は休職経験があって、心が疲れた経験があって、と話す方がいらっしゃった。よくよくお話をを聞いていると、その方ご自身はとても優秀だなと感じることも多く、環境との相互作用がうまくいっていなかったんだな、と感じていた。

インターネットの革新のスピードと、人の心地よく生きられるスピードは違うし、定めた目標に対する効率化もよく話に上がるけど、そもそも人間はゆらぎがあって数字だけで管理できるものではない。

人は1人1人違って、価値観もどんどん多様化していて、これからは自分が生きたい在り方は?向かいたい方向は?がどんどん問われるようになる。

そこで豊かに生きていくためには、自分がどの位置にいるのかを認識しながら、分かり合える人や頼れる人、必要な情報、それらを困ったときに使えるか、学び試行錯誤していくことが必要になる。

自分らしく生きるための「 & ソーシャルワーク」

障害有無にかかわらず、スキルとしてより生きやすくなるように自分自身のことを大切にし、SOSを出せること。そして隣の誰かが困っているときに、その人に向き合い、必要な情報や支援ができること。

ちょっとした違和感や間の関係性を少し調整することで本来の力が発揮できるようにするのが、ソーシャルワークだと思う。

お互いに助け合えて、得意なところで力を発揮してありたい自分で居ながら、生きていける。私はだんだんとその方法を、より多くの人に伝えたくなった。

なぜならソーシャルワークに出会ってからの私の人生は、孤独ではなく、窮屈が和らぎ、勇気をもって休んだり、前にすすめるようになったから。

生きづらさを柔らかくして、自分の人生を抱きしめられる「体温のある生き方」をするためのソーシャルワーク。

病気や障害の有無にかかわらず、もっと楽に自分らしく生きたいなと思っている方に対して学びや機会を提供していきたいと思っています。専門的すぎず、でも役に立つ専門性は持ちつつも、私も今ここに生きる当事者として試行錯誤していることを。

そして、そのために私自身も、
揺らぎながら楽しみつつ、進む。

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かずみ|Mental Health Socialworker
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