映画にまつわる甘酸っぱい思い出
小学5、6年の頃、クラスに気の強い女の子がいた
よくいじめられていた
僕は気の弱い虚弱な子供だった
お腹を蹴られ、ウッと腹を押さえてしゃがみ込む僕の姿を彼女は面白がっていた
その時は彼女が怖かった
嫌いだった
中学生になると、彼女は別人のように変わった
急に女の子になったのだ
性格が優しくなって、かわいい子になった
そのギャップに、僕はときめいた
僕は自分の虚弱さを打ち破ろうと柔道部に入った
彼女の兄貴は柔道部の先輩だった
彼女は道場に顔を出し、僕の練習が終わるのを待っていた
帰りはいつも一緒
帰る方向が同じだったので、僕は彼女の家の方を回って遠回りして家に帰っていた
僕は彼女の奔放さというか、明るさが好きだった
相変わらず気が強く負けず嫌いで主導権は彼女が握っていたが、時々見せる女の子らしいあどけなさにキュンとしていたのだ
デートといえるか、わからなかったが、電車に乗って一緒にあちこちへ行った
ある日、彼女が映画を観に行こうと言った
「小さな恋のメロディ」
を観に行こうと、
僕はてっきり当時、流行っていた「ブルースリー」の映画でも観に行くのだと思っていたので、面食らった
しかも、近場の映画館ではなくて名古屋まで行こうと言うのだ
彼女との初めての小旅行
楽しかった
映画を見終わった時、恥ずかしくて彼女の顔が見れなかった
その時、彼女が
「ねぇキスしよう」
と唇を自分の唇に重ねて来た
スローモーションのように時間がゆっくり流れ、ふたりだけの世界
彼女の柔らかい唇の感触が僕の心臓の鼓動を激しく波打たせる
遠い昔の甘酸っぱい思い出
小さな恋