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小説『三分間』

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高校生の「僕」が異次元で出会った不思議な青年「ロングコート」と紫色の世界で過ごす話です。
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2019年9月の記事一覧

小説『三分間』第六話

 駅のホームにつくと、僕はやはり、時間という概念があるのかどうかが気になり、時刻表を探したが、やはりなかった。そんな素振りを見せる僕のことがやはり気になったのか、ロングコートが話しかけてきた。
「何を、やっているんだい?」
「いや、時刻表はないのかなと思って。そういえば、時計なんかも見当たらないし」
「時間を確認するものかい? ないよ、そんなもの。機関車が、来たときに乗るんだ。そういうものだろ?」

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小説『三分間』第五話

 紫色の世界の海は、真っ黒だった。まるでゼリーのように、ゆらゆらと揺れている。
「そんなところで倒れているから、びっくりしたよ」
 ブルーの眼の青年が話しかけてきた。
「列車が到着しても全然起きないもんだから、どうしたもんかと思ったよ。しかしまあ、君もなんだ、変わったやつだな」
 そう言って彼は手を差し出した。僕はその手を取り、ようやく立ち上がった。彼は、列車で見たときと変わらず、洋服を着たままだ

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小説『三分間』第四話

 車内で目が覚めると、周りの乗客はもういなくなっていた。ブルーの眼をした彼も、すでに降りてしまったようだ。ふと窓際に目をやると、置き手紙と共にクッキーが置いてあった。手紙には、こう書かれていた。
——親愛なる友人へ、君と少しの間話せてよかった。お礼にクッキーをあげるよ。食べてみるといい。また、どこかで会えるといいね。
 クッキーには、青や赤の模様が施されていた。独特な見た目をしていて、この世界で作

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小説『三分間』第三話

 白ウサギに別れを告げた僕は、この世界での街に向かうことにした。街はいつも賑わっている。サンバカーニバルが開催されていることを期待したが、ここでも開催されていないようだ。空を見上げると、シロナガスクジラがふよふよと浮かんでいた。どうもこの世界では、生き物が宙に浮かべるようなのだ。
 僕も以前浮かべるかどうか試してみたのだが、無理であった。その代わり、宙を走れる自転車があり、それに乗って空中散歩をす

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小説『三分間』第二話

 街へ降りると、すでに家々の明かりが点々としていた。サンバ隊が、サンバを踊っている。とても楽しそうだ。ブラジルではきっとこんな光景を毎日見られるのだろうなと思うのだが、現実はそんなに甘くはない。
 僕の街では、サンバカーニバルが毎晩開かれてはいないのだ、という事実に気づくまで、二、三分かかった。なんとまあ愚かな人間がいたものだ。サンバを踊っていたのは、僕の空想の中だけであった。脳内では、いつもサン

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小説『三分間』第一話

 夕日が沈んでゆく。夕日が沈む際は、空がオレンジ色に見えるよな、とふと思った。昼頃には、空は青く見える。夜は、太陽が昇っていないから黒だな。そんな当たり前のことを思うのだが、理由はなぜだろう。きっと世界のどこぞの国の科学者がその理由を解明していて、インターネットで調べたりしてみたら、その理由が出てくるのだろう。ただ、僕はそんなことで理由を知りたくはなかった。理由とは、人間がでっちあげた概念にすぎな

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