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小説『エッグタルト』

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高校で吹奏楽部に所属している太田と、数学オリンピックに出場することが決まった女子高生、川野さんの話です。
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2020年11月の記事一覧

小説『エッグタルト』第二十一章

 放課後になり、部活も早めに終わり、家に帰る途中に川沿いで川を見つめながら三角座りをしている川野さんを見かけた。
「川野さん」
 そう言いながら川野さんの横に座ると、川野さんはそばにあった石を左手で掴み取り、投げ始めた。
「川野さん、左投げなの?」
「右投げよ。右投げ、右打ち」
「いや、打つほうは聞いていないけど」
 そう俺が言うと、川野さんは石を投げるのをやめ、少しこちらを見てからまた川の方に目

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小説『エッグタルト』第二十章

 夏休みが明け、二学期が始まり、教室に向かっていると、廊下に人だかりができていた。人だかりの後ろから背伸びをして覗いてみると、数学オリンピックの結果が張り出されているようだった。女子生徒の多くはもう結果を知っていたのだろうか、人だかりのほとんどが男子生徒だった。 
 何人かが教室に戻っていき、人だかりに隙間ができたので結果を見に前へ進むと、張り紙に川野さんの顔写真と、その横に数学オリンピックの結果

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