小説『エッグタルト』第二十章

 夏休みが明け、二学期が始まり、教室に向かっていると、廊下に人だかりができていた。人だかりの後ろから背伸びをして覗いてみると、数学オリンピックの結果が張り出されているようだった。女子生徒の多くはもう結果を知っていたのだろうか、人だかりのほとんどが男子生徒だった。 
 何人かが教室に戻っていき、人だかりに隙間ができたので結果を見に前へ進むと、張り紙に川野さんの顔写真と、その横に数学オリンピックの結果が載っていた。
 結果を見ると、一問目は、七点満点中の七点。二問目は、四点。三問目は、二点。四問目以降は白紙解答であったのか、すべてゼロ点だった。
 川野さんのほかの五人の日本代表の生徒たちを見るとすべて男子生徒で、学校名を見ると関東や関西などの、どこかで聞いたことがあるような名門校ばかりだった。
 金メダルが二人、銀メダルが二人、銅メダルが一人、と代表の男子生徒たちは全員メダルを獲得しているようだった。張り紙の隣に新聞記事も張られており、読み進めてみると、日本代表の一人がメダルを獲得できなかったのは七年ぶりのことであったらしい。
 教室に戻ろうと右の方を向くと、階段から登ってきた川野さんの姿が見えた。普通に登校してきたようだったので安心したが、川野さんは俯いたままこちらを見ることなく、すっと教室の中へと入っていった。
 きっと落ち込んでいるんだろうな、と思っていると、朝のホームルームが始まるチャイムが鳴ったので、俺も教室に戻った。

いいなと思ったら応援しよう!