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抽絲勁

抽絲勁(ちゅうしけい)とは太極拳の体の使い方を表現した言葉。
シルクの糸を引っ張っても切らないような繊細な体の使い方というのが一般向けの説明。本当に説明する時はもっとわかりやすい説明の仕方が存在する。

たぶん言葉は知っていても、詳細を理解していない方は多いように見受けられる。ちゃんと理解している老師の説明を受けるか、自力で頑張って究明するか…。それとも、単なる雰囲気程度の理解であきらめてしまうか…。

抽絲勁を習得しても、途端に強さが増すという訳でもないし、ラジオ体操代わりに取り組むだけならこういうことは知らなくても特に問題もないだろう。

私は格闘技として太極拳をやっている訳ではないので実際の戦いなど知らない。私が中国で習っていた時は師兄弟は20歳前後の若者ばかりだった。私も22歳だった。ただ、私以外の人は大体別の武術を長年やっていたりして、太極拳は健康体操ではなく、伝統的な徒手格闘武術と考えていたようだった。老師は大学の先生だったが、長期休暇になるとあちこちに出かけては武者修行していた。

私は腰痛治療のつもりで始めた太極拳だったが、練習内容はかなり厳しいものだった。健康法とかの話は一切なく、姿勢を整えて力を発する方法と太極拳の体の動かし方を教えてもらった。武道的な練習だったが、結局腰痛は治ってしまった。

この時習った太極拳の姿勢や体の動かし方は武術的な力を発揮するだけでなく、体を整えたり「氣」を整えたりできることが分かった。単なる健康法ではなく、瞑想的な効果も感じられるようになり、スピリチュアルな能力まで目覚めてしまった。

氣が感じられたり、見えたり、壁の向こう側が透けて見えたり、人を取り巻くオーラが見えたり…。兄弟子に何かおかしなことが起こっているけどと尋ねてみたら、「気にするな。俺たちの太極拳ではありがちなことだから。そんなことより太極拳の修行に気持ちを集中しろ」と言われた。

私はなるほどありふれたことなのかと納得して太極拳の練習に意識を集中した。実際、太極拳の練習の方が驚きがいっぱいで楽しかった。

私は今、週一回70代の女性のグループに太極拳を教えている。気功をやったり、太極拳をやったり。皆さん、練習初日で氣を感じ取れたようだった。最近は武術的な使い方や力の発し方などを語ると皆さん興味津々。先日は抽絲勁の説明と初歩的な練習もやってみた。こういうことが少しずつ理解できてくると太極拳の型をやる時の動きの質が変わってくる。そうなってくると型の一部分だけ取り出して自己調整体操として行うこともできるようになる。

このあたりが、私が太極拳を教えるメインの目的。肩が凝ったり、腰が痛かったり、何だか気持ちがふさいだり…。そんな時に太極拳の動きで自己調整ができるようになれば、人生がもっと楽しくなるのではないだろうか。

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