『あなたと行ったヴィーナスブリッジ』続【~ アシュラノゴトク ~】
そのまま激しい夜が明けた。
明けましておめでとうございまーーす!
そんな気持ちの僕と彩愛…
インターホンのスイッチは付けっぱなし。
ガラケーの電灯は毎秒パラパラピヨピヨと点滅している。そんなパラピヨな叫びが雅のワメきだと思うと…笑いが止まらなかった。パラピヨと時々視界に入るくらいのレベルなんだから。何て言うんだろ…ガキがギャーギャー遊んでても小さいし可愛いからいっか的な感じ。
着信は79件。
雅らしく言うのであれば『頑張ってはんなぁ~。』
雅はよくmixiを自撮りであげている大学の女の子の投稿を蔑むように見てはこの台詞を口にしていた。
いつの間にか僕は雅のことを気にも止めない領域まできている気がした。
もしこの後、彩愛と一緒に外に出て、雅が玄関口で膝をつき待っていたとしても。
僕は全力で無視して裁く。
そんなことに罪悪感もなんにも感じないだろうとすら考えていた。
彩愛が起きる。
『おはよー』
『おはよ。ねれた?』
『うん!ぐっすり…まだいてはんのー?』
『知らん。』
彩愛はインターホンのスピーカーに向かう。
『昨日気持ちかったーーー!』
彩愛はオモシロイ
www
ハハハ
あなたと行ったヴィーナスブリッジ
『ハハハハハハっ!』
『笑笑』
『お前わるいなー』
僕はインターホンの電源を切る。
雅がいるのかどうかは知らない。
居たら居たでオモシロイし、
外に出るときの楽しみが増えるだけ。
今日も楽しくなりそうだなぁー
そんな気持ちだった
もうネジは2、3個ぶっ飛んでいるww
そーか。。。
このまま彩愛とどこかにデートしに行こー!
彩愛オモシロイし
なんか楽だし
楽しいし
けど…
それは雅と言う宛先があるからだろうか?
雅と言ういつも二人で共有できるネタがあるからかもしれない。
もしー雅が
いなくなったら
…
僕と彩愛は仲良くしているのだろうか。
まぁいい
支度だ
支度。
『出掛けよか。』
『え、ほんま?』
『うん。』
『そんなんめっちゃ嬉しいねんけど。陵さんとデートするん?ウチ。』
『なにそれww』
『行く行くー!』
『お前かわいいな。傷大丈夫?』
『…なんでそんな優しいん?』
『笑笑、は?』
『陵さんは女をダメにする人やできっと。』
『なにいってんの?で大丈夫なの?傷。』
『大丈夫。』
『結構痛々しいな。』
『かさぶたなるまでは時間かかるもんやで。ハートの傷もいっしょやろっておばあちゃんが昔ゆぅてたww』
華やかでわんぱくな娘
田舎育ちでおばあちゃんコだと勝手に妄想して
なんとなく
彩愛いいかもとか思い始めていた
『おいで。』
そんな言葉を浴びせ
僕らはまた1つになった。
昨日もそーだったなぁ
相手が違うと感覚も違う
想いも違えば
自身の気持ちの入れ方が違うんだ
音が違う
カーテン越しの逆光からなるシルエットが違う
…
彩愛を下から上へと徐々に
彩愛の音は最高に聴き心地がよい
彩愛はまたインターホンのスイッチを入れる
そうだ
彩愛はオモシロイんだ
この娘に任せれば全てが思い通りになるのかもしれないな。
…
終わってホッと一息
着替えて、めかし込んで
家を出る
エレベーター内
なんとなく僕から彩愛にキスをする
『どこいくん?今日』
『…ヴィーナスブリッジ。』
エレベーターが一階マンションロビーに着いた。
なぜが期待している
…ドキドキ
…ワクワク
…
ビンゴ!
彩愛は僕の腕に手をかける。
雅がいた。
自動ドアが開く
雅『…陵。お願い。』
陵『(無視)』
彩愛『…』
雅『なぁ。なぁって。』
最高に気持ちいい状態だ…
陵『また連絡するわ!お疲れ様。』
雅『どこいくんよ!』
彩愛『ヴィーナスブリッジ!』
彩愛オモシローーーーイ!!
僕と彩愛が歩く後ろを雅はついてくる。
なんか
なんか
またふと思った
…
僕には雅に差し出す(演じる)僕がいる
彩愛に差し出す僕がいる
雪乃さんに差し出す僕がいて
両親に差し出す僕がいる
雅のママに差し出す僕もいるし
慧斗に差し出す僕もいる
それぞれ僕に対するイメージは違っていて
僕の接し方やキャラは異なるのだ
で、
本当の僕はどれ?
どれが本物なのだろうか。
どれも本物っちゃ本物かもしれない。
…
けどこうすることによって得る物もあったり
…
『陵ー!』
…聴いたことのある声
視界の奥には慧斗がいた…
こちらに向かって楽しそうに走っててくる
…
『あーー。やばい。まぢか。あ、うそーーーん。』
(続く)
ご一読頂きありがとうございました。
戸松大河
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