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初めての散策マップづくり:その過程と気づき

2021年の5~7月の間の2ヶ月にかけて、初めて散策マップを作るという経験をしました。先日作り方を聞かれたことがあったのですが、半年前のことなので、「どうやったんだっけ?」と、思い出すのに時間がかかりました。この記事では、次作る時により良いものにするために、そのプロセスを記録としてまとめてみたいと思います。これから散策マップを作る人、作成に興味がある人の参考になれば嬉しいです。

散策マップを作るという決定をする

私はプロジェクト型の授業に参加しました。地域の神社を盛り上げるというテーマが与えられた中で、周辺のお店と協力して企画を行う、という共通認識を持ったチームが形成されました。この過程については地図作成には直接関係ないので省きますが、楽しいメンバーに恵まれました。その上で私たちは、散策マップを作ろうと決意しました。チームで行ったので、チームの目的を定めて共有された状態になる必要があります。そのために2つの行動がありました。

上賀茂神社の細殿と立砂。地域の神社だが、世界遺産でもある。

1点目は、散策することです。メンバーで予定を合わせて、あるいは個人的に何度も歩きました。ここでは特に何も意識せず、いろんなお店で買い物をしたり、お話を伺ったりしました。むしろチームメンバー同士をよく知ることを大切にしていました。そんな中で印象的な出会いというのは必ずあるものです。私たちはある煎餅屋さんで、大変なおもてなしを受けました。突然訪れた私たちに対し、見事なお庭を案内していただいたいり、煎餅とお茶までご馳走になりました。お庭のルーツや煎餅について話を伺う中で、ちらりと抱えている課題についても垣間見えました。このような散策を通した体験の共有と出会いが、目的の共有化に繋がっていきます。

京雷堂の「雷煎餅」。自然由来の優しい甘さ。

2点目は、目的と成果物の設定のための話し合いです。私たちの場合は、具体的なアイデアを元にそれについての意見を出し合いました。じっくり話し合う中で、チームとしての目的が見えてきました。そして、目的と実現可能性を照らし合わせて、散策マップを作ることになっていきました。一緒に散策をしていたことで議論が活発になったり、お店側の課題をリアルに共有できたと思います。

また、神社を盛り上げることが授業のテーマだったので、どのような貢献ができるのかについても議論しました。個人的にはこの授業を神社が好きだという理由で履修していたので、最も大切に考えていました。

京都なり田のすぐき漬。一度食べたらクセになる味。

お店とのやりとり

散策マップ作成にあたり、掲載するお店の選考基準として「学生である自分たち自身が良いと思ったところ」としました。そのため、良くも悪くもお店を巡りまくりました。いろんなお店に行ったりお話を伺ったりするのはとても楽しいです。その一方で、とても忙しいですし、交通費・食費もかさみました。でも、私はこれからも散策マップを作る時はこの基準で作ると思います。メンバーの振り返りで、散策する癖が身についた、という話がありました。自分の足で歩いて、自分で発見して、それを伝えるというのは苦労をはるかに上回る良さがあると感じています。

また、お店を選ぶにあたり、どの範囲まで地図にするかも重要でした。載せたいお店と紙面の大きさを吟味して決めました。

いくつかの候補を出しながら話し合っていく。

掲載するお店を決定したら、その許可をいただきに行きます。私たちの場合は断られることはありませんでしたが、反応にはばらつきがありました。宣伝になってありがたいという反応か、どうぞ好きにやってちょうだいという反応がほとんどでしたが、中には付き合ってやってるんだぞという反応もありました。全てのお店は宣伝になるのは嬉しいことだという目論見は外れ、お店ごとに背景や課題も異なることを痛感しました。1店1店を回って交渉をし、その後も紹介文や掲載情報の確認、写真撮影などで何度も訪問しました。ここはかなり大変でした。

にしむら食堂のオムライス。目の前の畑で採れた野菜を使用。

マップのデザイン

上述と平行してマップのデザインを考えていきます。と言いつつも、ここに私はほとんど関与していません。デザイン担当者のセンスに完全に任せていました。ちなみに、任せた2人とも全くの素人です。

そのうちの1人に作り方を聞いてみました。地図にはiPadを使い、アプリは「Adobe Illustrator Draw」を使用したそうです(もう1人は媒体はスマホ、アプリは「アイビスペイントX」)。私もiPadで地図を書いたことはありますが、紙よりも加筆修正がしやすく、とてもやりやすかったです。お手本はなく、雑誌に掲載されているような手作りマップをイメージして描いたとのこと。難しかったことは、情報の取捨選択だそうです。道や目印となるものは、歩く上ではあった方が良い一方、ごちゃごちゃしてしまうとそもそも見たくなくなります。できるだけシンプルに、でも必要なことは載せる、という線引きは、きっとデザインをする上で常にある葛藤でしょう。最終的な地図のイメージを、描く前にもっと話し合っておいた方が描き手に優しかったなと思います。

散策の拠点、いけだフルーツのパフェ。新鮮フルーツがたくさん。

最後に

ここまで、散策→目的と手段の決定→お店の選定→交渉→デザインという流れについてお話しました。最後に、周囲の反応から今後の散策マップ作成に活かせる気づきを2つお伝えします。1つ目は、写真は最重要だという点です。私たちの地図は14店舗のお店を掲載しています。使用者の感想から、この中から情報を得る時、まずは写真がそのとっかかりになっていそうです。特に色や分かりやすさが大切でしょう。2つ目は、手に取ったり実際に使ってくれる人は、学生や元々アンテナを張っている人が多いということです。これについては地図のテーマによって変わることもあると思います。誰にどう使って欲しいかによって、作成する地図のイメージも変える必要があるでしょう。私が集めた特徴的な地図をいくつか紹介します。

道は線だけのシンプルな地図。説明文を読むと思わず行きたくなる。
散策に必要な情報がまとめられた観光案内地図。手に持って歩くなら、A4でこのくらいの大きな縮尺が限度か。
情報はQRコードのみのマップ。手に取りたくなるデザイン、サイズ感(B6より少し小さい)。

色々と書いてきましたが、散策マップ作成はほとんどの作業が遊びの延長です。「工程」ではなく「過程」と捉えて、楽しんで作るのが大切なんだと思います。この記事を読んで、地図の作成に興味を持っていただければ幸いです。

新大宮商店街にある「新大宮広間」。地図の南と範囲外ですが、置いてくださっています。

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