世界を制したのはJ-POPではなく、K-POPだった3つの理由。
前置き
2019年4月、BTS(防弾少年団)はアメリカのビルボード200で3度目の1位となった。5月に開催されたビルボード・ミュージック・アワードでは、3年連続でトップソーシャルアーティスト賞、さらにはトップデュオ/グループ賞というダブル受賞も決めた。いま「K-POP」は世界で大きな注目を集めている。
今回は、世界を制したのはJ-POPではなく、K-POPだった3つの理由について徹底解説していきます!
1. 上場が基本の韓国大手芸能事務所
2. 人格教育
3. ライブ配信アプリ V LIVEの”世界戦略 ”
それでは、Let's go!
1.“上場が基本”の韓国大手芸能事務所
K-POPにあって、J-POPに足りない圧倒的な3つのポイントがある。
・世界基準の楽曲クオリティ
・完璧に揃ったダンス
・積極的なSNSマーケティング
そうしたK-POPの強さの背景に、受け入れる市場側の寛容さがある。韓国の芸能事務所はある程度事業規模が大きくなると上場するケースが多く、中・長期的に発展性のあるビジネスを生み出せるのだ。
↓BTSの事務所 Big Hit Entertainmentは、米国のオフィスを拠点に、「一流」の企業と提携し、「ローカリゼーション戦略」を利用する。
日本において上場している芸能事務所として有名なのは、アミューズとエイベックスだが、ジャニーズ事務所やホリプロ、LDHなど、著名アーティストを多く抱える事務所も上場していない。
IPO(株式新規公開)のメリットは、いろいろなトレンドを取り込んで、様々なメディア戦略を試しながらコンテンツを届けられるところ。IPOをして資金を安定的に調達することで、浮き沈みの激しいエンタメ業界でも、物づくりに集中できるところもある。
乱立する韓国の芸能事務所の中でも、大手と呼ばれる3社(SMエンタテインメント、YGエンタテインメント、JPYエンタテインメント)はそれぞれ異なる戦略を取っている。
例えば、BoAや東方神起を生み出したSMエンタテインメントは、AI(人工知能)やキャラクタービジネスなど、音楽という軸に止まらない「未来のエンタテインメントのあり方」に力を入れている。
2017年にデビューしたボーイズグループ、NCTはその典型だ。メンバーは多国籍で、発表する楽曲ごとにメンバーを入れ替える方式を採っており、「グローバル市場に向けた戦略でシステムを作り出している」と評価する。
2.今必要とされるのは『人格教育』
日本でも人気が高いTWICEなどを擁するJYPは「アーティスト本人の人格を大事にし、コンテンツにも活用している」という。
日本で大ヒットした韓国オーディション番組からデビューしたNizi Projectも評価基準の中に、「人柄」が入っていた。
↓韓国大手事務所JYPエンターテイメントとソニーミュージックによる共同ガールズグループプロジェクト「Nizi Project」
その一方で、韓国芸能界は、度重なるスキャンダルに揺れている。
BIGBANGのメンバーだったV.I氏の売春斡旋疑惑、元東方神起メンバーパク・ユチョン氏の薬物使用疑惑、元KARA ク・ハラの自死など。
こうした流れを受け、韓国の大手事務所では数年前からメンタルケアや「人格教育」に力を入れ始めている。『人柄・人格』の育成を行う協会から専門の講師を派遣し、毎週プログラムを組んでメンタルケアを行っている。
プログラムの中には、チーム同士で心を開くためのコーチングや、個別のカウンセリングも含まれる。
SNSの発展で、情報が隠せない時代になっています。アイドルとしての側面だけでなく、アーティストのプライベートも尊重するべきだという流れに今、変わってきています。煌びやかなステージの裏で、報じられ続けている”闇”な部分を、改善しつつある。
しかし、日本ではメンタルケアは愚か、大の大人や関係者自身の再教育・マネージメントすらできていない。
僕は、ここがJーPOPにおいての、重要な改善点だと思う。
歌手の育成や教育の前に、我々プロデューサーやマネージメントの人間が、しっかりとした人柄や人格を持っているのか?そして常に、成長し、再教育できているのか?
この質問に対して、誠実に答えられる関係者はどれくらいいるのだろうか?
常に自分と向き合い、成長し続けることは、歌手だけでなく、事務所やレーベルなどの関係者全員にも言えることだと思う。そして、僕もその一人として成長し続けたい。
3. ライブ配信アプリ V LIVEの”世界戦略”
熱狂的なKーPOPファンなら、『V LIVE』を知らない人はほとんどいないだろう。
LINEの親会社としても知られる韓国の大手ネット企業・NAVERが運営するライブ配信アプリで、BTSをはじめとする韓国の人気アーティストがここで動画コンテンツを配信している。
V LIVEは、2015年に立ち上がった当初からKーPOPのスターを世界に向けて売り込むことを目的としていた。開設時から韓国のメジャー芸能事務所と連携し、アプリ内の言語はデフォルトが英語だ。
累計ダウンロード数は、3年で約6000万。
その約8割以上が海外からだという。
世界数十ヶ国語へ翻訳される「ファンサブ」
V LIVeの世界戦略を考える上で、「ファンサブ」(ファンによる字幕)の存在は避けて通れない。
この「ファンサブ」こそがBTSを世界に押し上げた重要なキーポイントである。
BTSを例にとってみよう!2019年1月1日、BTSがV LIVE場で配信しているバラエティ番組「Run BTS!」の新しいエピソードが公開された。
メンバーは全て韓国語で話しているが、記者が配信翌日の1月2日に確認した時点で既に20以上の字幕が付けられていた。
その多くに「ファンサブ」と注意書きがされている。数えてみたところ、20の字幕中、18がファンによる字幕だった。しかも、1言語あたり1字幕ではない。トルコ語などは、コミュニティごとになんと5つのバリエーションのファンサブが存在した。
この字幕を実現したのは、「V Fansubs」という、V LIVEが提供するファンによる字幕コミュニティだ。
V LIVEの動画は、登録すれば誰でも簡単に字幕をつけることができる。
V LIVE側も、ファンサブを促進する。多く字幕をつければ、レベルが上がり「バッジ」が与えられ、優れた翻訳者はサイト場で「ベストメンバーズ」として紹介されたり、V LIVE上で使える通貨(V COINS)が与えられる。
↓「V Fansubs」のトップページ。「Best Members」の紹介のほか、「あなたの翻訳を待っています」の文字も。
なぜ、V LIVEのファンサブが重要なのか。一つにはシンプルにV LIVEが「非英語圏のアーティストがグローバル市場で戦うとき、言語の壁をどう乗り越えるか」の課題解決ができているからである。
海外の日本のアニメ、ドラマ、J-POPが口を揃えて言っているのは、「公式の翻訳が出るのが遅い」という不満だ。
現在では、Netflixのように初めから他言語対応でコンテンツを提供するプラットフォームもできているが、やはりサービスがわが他言語翻訳を提供するにはコストもかかるためその数は限定的だ。
V LIVEの各申請は、ファンサブを公式化することで「非英語圏のファン」に対して、デメリットを感じさせないところである。
こうした、プラットフォーム主導でのファンダムへの訴求が重要なポイントである。
まとめ
日本では、音楽ストリーミングやライブ配信など、流れとしては加速しているものの、日本のアーティストのSNSでのコミュニケーションはまだまだ国内に閉じ込められている。
縮小し続ける音楽業界として小さくなるシェアを取り合い、潰し合う日本に比べて、上場が基本の韓国大手芸能事務所。
まだまだ昔の栄光を捨てきれず、ポジショニングする大御所が多い日本に比べて、「人柄・人格の教育」に力を入れる韓国。
そして、言語の壁を乗り越えられない日本のライブ配信アプリに比べて、プラットフォームとアーティストが連携することで、グローバル規模のファンダムを構築することに成功し、そこから世界の音楽チャートへ食い込んでいったK-POPの”世界戦略。”
もう、僕らは彼らから学び、真似て、応用していくしかない。
謙虚に、誠実に、僕ら自身の再教育をしないと、世界戦略の前に、日本人同士の潰し合いだ。