【人道支援チャド】環境を楽しめ、事象を笑え~人道支援家たちの珍言集~ Vol.1
みなさんお久しぶりです。
人道支援家Taichirosatoです。
しばらくの間、電波のないところでせっせと働いていたため投稿ができませんでしたが、一時的に首都にある拠点に帰ってきたため、久々にnoteの投稿をできることに楽しさを感じています。
さて、人道支援と聞くと過酷な印象を持たれる方もいるかもしれません。
僕の経験では、人道支援という仕事の性質上、働く環境は決して楽ではないように思います。様々な仕事面でのストレスに加えて、言語、宗教の違い、3か月で10回の引っ越しをするなど、生活環境の劇的な変化とそこへの適応には、どんなに慣れていても疲労が蓄積し、僕たちのパフォーマンスを下げます。
では、そんな環境で生活をしながら働く人道支援家たちは一体どんなことを考えているのでしょうか。
とある日の夜。
仕事を終え、ご飯を食べ終わり星空の下、団欒の時間を過ごします。
日没と同時に電気がないので外は真っ暗。
天の川までくっきりと見える星がきれいな22時です。
僕ら人道支援家4人が日ごろのフィールド生活について何やら話を始めます。
ユニークなエピソードの数々。
僕らは涙を流しながら、息をするのも苦しいほど笑い、
そこではたくさんの珍言が生まれました。
どんな環境でも楽しもうとする人道支援家たちの絶妙な感覚と、苦労をエンターテイメントに変えるメンタリティ。そんなメンバーのキャラクターを珍言と共に振り返る、そんな投稿にしようと思います。
それでは、物語のはじまり、はじまり。
<登場人物>
①ジョン・デ・デュー:通称ジョン。基本的に個人情報になるので僕のnoteでは名前はニックネームか(仮名)を使っているが、彼はOKしてくれたのでフルネームを使用。しかし、名前が長く投稿向きではないので結果省略することとする。手術室看護師で低身長、がっちり体系のマラウィの漢。笑い話が大好きなみんなのまとめ役。使用言語は英仏。
②エリィ:小柄なブラジル人。非常に陽気だが、仕事の話になると熱く、何事も決して手を抜かない情熱の薬剤師。あまりの熱さに話が長くなりがち。使用言語は英仏。
③ヴィヴィ:おてんば娘のナイジェリア人。いたずらが大好きで、人の気を引くのが上手い。臨床心理士で現場では暴力に苦しむ人たちの心のケアを担当するプロフェッショナル。使用言語は英語のみ。英語のアクセントに癖があるため、たまに聞き取れないことがあると、ぶすっとした顔をする。みんなの妹的な存在。
④タイ:そう、これは僕。日本人救急看護師。ジョンやエリィとフランス語で普段仕事をしているため、ヴィヴィが横にいると英語に切り替えて会話しなければいけないため、頭が混乱。結局フランス語をしゃべってしまいヴィヴィに怒られる毎日。使用言語は英仏。
~ 名言 其の一 ~
大概の原因は○○○だ! ピーこらの原因を突き止めろ
ほどんどの場合、どこにいっても一番最初にお友達になるのはゲーリー。
えっ、ちょっとまって。ゲーリーなんて登場人物に出てこなかったけど?
そう思った方もいるだろう。慌てずに読み進めていこうじゃないか。
ゲーリーは、トイレが恋しくて恋しくて仕方がない。
ゲーリーのことをピーこら、ピーこらとすると表現することもあるそうだ。
僕らは夜中にゲーリーについて真剣にディスカッションすることとなる。
ジョンがうつむき加減にしゃべり始める。
ジョン)、、おれ、実はぁ、、昨日からピーこらピーこらしてるんだぁ、、
エリィ)えぇっ!あたしもよ!
エリィは「ここにも仲間がいたのね!」と言わんばかりに嬉しそうだ。
ちらっと横を見ると、ヴィヴィが(私はまだ来てないわねと)勝ち誇った顔をした後に(明日には来るかもしれない、というあきらめが彼女を襲ったのか)鼻と口がくっつくくらいクシャっとした表情に変わったのだった。
僕はというと、、、
ばっちり 昨日からピーこらしているのだった。
ジョンは深刻な顔をし、暗闇の中で怪談話でもするかのようにヴィヴィ、僕、エリィの順番で顔を覗き込み、怪談話を続ける。
ジョン)やはりなぁ。。昨日~おととい食べたものを、、みんなで整理しようじゃぁないかぁ、、ゲーリーの犯人がこの中にいるはずだぁ。
タイ)なぁジョン。整理するも何も、僕らはここ3日間、コメ、パスタ、鶏スープ、トマトサラダしか食べてないじゃないか。
そう、僕らは毎日この4つを決まったメニューを、決まった時間に食べている。ほかにレパートリーなどないのだ。コメとパスタは、保存系の食べ物の為ゲーリーとの関連性は限りなく低い。僕は名探偵コナンのように(このメンバーの誰もが知らないだろう)頭の中で推理してみた。
ヴィヴィ)犯人は鶏スープとトマトサラダのどちらかね。
エリィ)どちらも♡ ってこともあるわよ、ヴィヴィ。
ヴィヴィがまたもや勝ち誇った顔をしたのも束の間。
すかさず最年長のエリィがヴィヴィに割って入る。
ジョンが困った顔をしながら苦笑いをする。
ジョン)おいおぃそれじゃぁ、
俺たちはコメとパスタしか食えないじゃないかぁ、、
ゲーリーとお友達にならない為には、犯人を見つけるしかない。
食事のレパートリーが主食、スープ、サラダの3品しかない僕らにとって、一品食べないと決めること、ましてや二品が怪しいと断定してしまっては、食べるものは主食のみになってしまう。
さすがにコメとパスタだけは、きつい。
ガタン!!
皆がビクッ!として体に力が入る。
僕の右隣りにいたヴィヴィは、僕の服を反射的につかんでる。
一瞬の出来事だった。
瞬発的に立ち上がったエリィは、
おしりを両手でおさえたまま、無言で暗闇の茂みの奥へと消えていった。
皆何が起こったかわからず、ぽかんとしている。
ジョン)ありゃ、ゲーリーだぁ。ゲーリーが来たんだよ。
残された一同は、ごっくっと唾を呑み込む。
恐ろしや、ゲーリー。。
数分後にエリィが帰ってくる。
僕は、少しホッとし、エリィはすっきりとした顔をしている。
エリィ)ったく、危なかったわよー。ゲーリーよ。今にもフライングしそうだったわよ!突然来るのよね!あいつ。前触れもなく、痛みもなく。
今回はセーフね。
。。。ん?今回は。。?
僕は聞かなかったことにした。
恥ずかしそうに、でも ガハハっ と笑い飛ばすエリィ。
その横でハッひらめくジョン。
ジョン!もしかして気が付いたか!エリィが今回は、セーフだったといったことに!真実を言っちゃだめだ!!ジョン。いくら明るいエリィでも、レディにアウトの事実を突き詰めちゃだめなんだ!!僕の鼓動が早くなる。
早まるな!!ジョン。
ジョン)俺が、思うに。。エリィ。。。
ジョン!そこから先は開けてはいけない秘密の扉なんだ!ジョーーーン!!僕は、ジョンの口元を抑えようとしたその時、
ジョン)犯人は、、タマゴだぁ。
サラダに入っていたな、ゆでタマゴ。それだぁ。
エリィの痛みがない、突然来るピーこらで分かったぁ。
傷んだ卵を食べた時に起きやすい症状だぁ。
僕は見当違いの焦りと、自分の妄想に笑っていて、そこから先の話をほとんど覚えていない。
エリィが色の悪いタマゴを使っているとか、混ぜ方が悪いとか、タマゴの扱いがわかっていないとか、あることないことをマシンガントークをし、最終的に僕らはタマゴを食べないことに決めた。
翌日以降、3人+1人、全員の体調は見事に回復し、名探偵ジョンの犯人捜しは見事な推理で幕をとじたのである。
ジョンは言う。
大概の原因はタマゴだぁ、と。
僕は未だに、エリィの「今回はセーフ」が頭から離れない。
~ 名言 其の二 ~
トイレのベスポジを回答せよ
僕らのトイレの話は続く。
ここでの僕らのトイレは、深い穴タイプ。
夜になると、暗闇の中、穴の奥底から上がってきた、見なくていいものがたくさん動いていて、夜間はできればトイレに行きたくない。
どうしてもの場合は、できるだけ下を見ないようにして事を済ませるのが習慣的になっている。
では日中はどうか。
それはそれで、そこには僕らの天敵がいるのだ。
ハエだ。
とにかくハエがすごい。
ブーンブーンブーン。
この音からトイレの間中、逃れることはできない。
音だけならまだいい。
あっちに止まり、こっちに止まり。
頼むから僕には止まらないでくれ。
そんな願いもむなしく、ハエは僕めがけて飛んでくる。
せめて止まる場所だけでも気を使ってほしい。
そんな願いも悲しく、ハエは僕の顔に平気な顔をして止まる。
ジョンがベスポジ(ベストポジション)について語りだす。
ジョン)いいかぁ、人間の体は、四股を踏む(明らかに僕の意訳だ)体勢で力が入り、出るものが出るようになっているんだぁ。
はぁ?ハエ?そんな奴ら知ったことか。集中するんだよ、集中ぅ。
そしたらすべてがあっという間さぁ。
なんだか話しただけなのにジョンがすっきりした顔をしているのは気のせいだろうか。。
エリィ)私は、四股の体勢ができないのよ。
安定しない。後ろに倒れちゃう。
だから、両手で両サイドの壁に必死につかまってんのよっワタシ。
こうよ。こうやって支えてんのよ!と、エリィはみんなの前でそのポーズをやって見せる。ヴィヴィは、腹を抱え笑う。
ちょっと解説をすると洋式トイレとの付き合いだけで育ってきた人たちにとって、四股ポーズは、簡単なことではない。
正座ができない、四股ポーズができない、こんな人は世界に案外たくさんいるのだ。そんな人たちにとって、四股ポーズトイレは、なかなか大変らしい。
続いて、僕の番がやってくる。
タイ)エリィの苦労は僕にはない。相撲は日本の国技だ。四股ポーズもできる。ただ、僕の勝負はそこじゃない。
「タイ 対 ハエ」だ。
穴の奥底から出てきたハエが、僕の顔に止まらないように。
用を足している最中におしりに止まらないように。
僕は必至で、両手を前後左右にひたすら振りまくる。
顔もおしりもハエから守る!守るためには動き続ける!!
四股ポーズを変えるわけにはいかないから、僕の両手は、ものすごい高速運動を続けるのだ。
僕はそのポーズをやって見せる。
ヴィヴィは呼吸ができないほど爆笑している。
ジョン)お前ぁ凄いバランス感覚と器用な集中力だなぁ。
エリィ)アタシそんなことしたら、穴に落っこちるわ。。
未だに集中力にこだわるジョンと人間業じゃないと僕に尊敬のまなざしを送るエリィ。死ぬほど笑うヴィヴィ。
何の話を夜中にしてるんだろうか、僕らは。。
僕は続ける。
タイ)勝つためには、動きつづけるんだ。
~ 名言 其の3 ~
フランス語では何というの?
「Wi-Fi」。今のご時世、知らない人はいないだろう。
「ワイファイ」だ。これはヴィヴィの苦労話である。
ヴィヴィは母国語と英語しかしゃべれない。
ここでは、ほとんどの僕たちのような外国人スタッフは、英仏の2言語を標準装備している。
しかし、現地スタッフはフランス語しか話せない人が多い。
ヴィヴィが日中に現地スタッフにこんなことを聞いて回っていたそうだ。
ヴィヴィ)ここってWi-Fi入るの?
現地スタッフ)はぁ?
ヴィヴィ)ワイファイ、よ。 ワ、イ、ファ、イ。
現地スタッフ)・・・はぁ?
きっとヴィヴィのことだからちょっと上から目線であんたそんなことも知らないの?みたいな感じで聞いて回っていたのだろう。想像ができる。
そして、現地スタッフはそんなヴィヴィの質問にあきれていたのかもしれない。
真相はわからないが、結果、誰にも伝わらなかった。
これは僕も経験あるが、僕がアルジェリアで活動していたとき。
「ワイファイ(Wi-Fi)は、ありますか?」の質問が通じず、苦労したものだ。
ジョン)いいかぁ。ヴィヴィ。フランス語では「うぃーふぃー」っていうんだぁ!
ヴィヴィ)うぃーふぃー!!なにそれ!!馬の鳴き声じゃん!!
エリィがすぐ様、馬の鳴き声を皆の前でやって見せ、
そのあまりのクオリティの高さに笑うタイミングすら失った我ら。
いずれにしても、
僕らの活動するこの地では電波塔などなく、
4Gでも3Gでもなく、携帯の電波は2Gを表示している。
Wi-Fiなんてあるはずがない。
ヴィヴィ)まぁでも、結局ここにはWi-Fiなんてないから、
ワイファイって呼ぶってことでいいわね!よろしく!
はい、決まり―!
おぉ、マジか。
これがこの地を生き抜くための意思決定の強さか。
我が道を行く、我が道こそが正解なのだ、のヴィヴィなのであった。
いかがでしたか?
人道支援家たちのキャラクターが少し見えたのではないでしょうか?人道支援に携わる人たちも一人の人間です。身近に感じてもらうきっかけになったら嬉しいです。
尚、人道支援家たちの珍言集 其の4~6は、次回に続きます。
次回もお楽しみに。
Best,
Tai
※投稿内容は全て個人の見解です。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございます!
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また次回お会いしましょう。
✎2022年5月より✎
皆さんの「知らない世界🌎」を少しでも身近に感じてもらうきっかけになったら幸いです。
みんなで応援し合える場所づくりとして「🏝Naluプロジェクト🏝」サークルを立ち上げました!また、国際看護師をサポートするSNSコミュニティ「🌏NurseTerminal✈🌎」(通称ナスタミ✈)も仲間と一緒に立ち上げています。https://instagram.com/nurseterminal
投稿は全文公開にしていますが、有料記事設定しています。
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