外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」第4話 一期一会

第4話 一期一会

先日、あるお寿司屋さんに行ってきました。1年ほど前に知った店です。親方が1人で握るそう大きくない店ですが、素晴らしいお寿司を出してくれます。

4月のある日、いつものように店に行くと1枚の張り紙がありました。そこには6月末で店を閉めるということが書かれていました。親方はたぶんもう70歳に近い年でしょう。跡継ぎもいません。親方の気力も体力も限界に近づいているように見えました。

そして6月の終わり近づいたある日、最後のお寿司を食べに行きました。他のお客さんも帰り際それぞれ親方に声をかけていきます。
「まだやれるんじゃない?」
「今度再開する時は連絡してよ。」
店にはお客さんの発案なのか1冊のノートがあり、店を再開した時の連絡用にとお客が自分の住所を書き連ねていました。

ただ、私はそのノートに住所を書く気にはなれませんでした。親方はもう十分に頑張ったと思ったからです。最後の挨拶としてもっと他にいうべきことがあるのではないかと思いました。

禅語には一期一会という言葉があります。その言葉の意味は、その時その時を大切に生き切る、ということだと思っています。その言葉の意味は理解しても心の底から身についている人はとても少ないと思います。

日々の出来事にはその一瞬一瞬が大きな意味を持ちます。しかし私たちは、日々のコミュニケーションの中でその大事な一瞬をはぐらかしてしまったり、漫然と過ごしてしまうことがあります。そのため、少し経ってから「あの時、ああすればよかった」と後悔することになります。

大切なことは、その瞬間にいることです。そしてその本質を素直に考える習慣をつけることだと思うのです。そして、大事な一瞬を逃さないようにすることです。そしてその時に一番大切なものを的確に捉えられるようになることが、私の目指しているところです。

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