外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」 第11話 グローバル企業で働く際の心構え

第11話 グローバル企業で働く際の心構え

グローバル企業で働く際の心構えを理解するために、グローバル企業と従来型の日本企業の考え方との対比をしながら考えてみます。話を進めるにあたって、以下の3項目にフォーカスしてみました。

1. 責任の所在

アカウンタビリティという言葉を聞いことがあると思います。アカウンタビリティは日本語では説明しにくいのですが、説明責任と訳されます。説明責任は責任の所在をクリアーにする意味で必ず求められるものです。

ある日本企業を買収した際、様々な場面で責任の所在が不明確だと感じました。責任の所在とは、例えば事業計画が大きく未達成であった時、そのことを社員にどう説明するか、また誰がその責を負うかということです。

一般に昔の日本企業ではプロセスを重視し、フォローします。しかしプロセスが正しくても結果がでなかった場合「頑張ったのだから」と言って良しとすることは、グローバル企業では通用しません。

確かにプロセスも大事ですが、グローバルな競争においては、結果あるいは成果にこだわることが求められています。そのことによって緊張感が生まれます。

責任の所在を明確にし、成果にこだわることは、長期的にビジネスを成功させるための非常に重要なファクターとなります。営業部門においてセールスインセンティヴをいれたこともその1つです。

セールスでないその他の社員はどうでしょうか? やはり基本的な考え方は同じです。つまり、個々の役割とその結果に対するアカウンタビリティをクリアーにし、自らの成果をフェアに受け入れることができなければ、周りの人から高い信頼を得ることはできません。

2. 仕事のスピード

一般にグローバル企業のスピードはけた違いに速いという印象を受けます。それは決裁でも、会議での議論もしかりです。企業の業績は四半期ごとにレビューが行われています。

一方、昔の日本企業では稟議という言葉に象徴されるように全体のコンセンサスを重視するため、多くの時間がとられてしまいます。これはアカウンタビリティにもつながりますが、時として誰が責任を取るのかわからなくなります。

とにかく、グローバル企業では速く決め、実行することが、ビジネス上での優位性を勝ち得ると考えられています。当然のことながら個人間でのやり取りも概して

仕事が早い = 仕事ができる

という公式が成り立っています。我々は常にまわりのスピードを意識しながら、上司の期待と同等か、それ以上のスピードで仕事に接する心構えが必要です。

もちろん、仕事の質も落とすわけにはいきません。また、スピードに偏重しすぎて過去の仕事を振り返ることを怠り、仕事の一貫性がなくなったりすることについては注意が必要です。異なる課題をにらみながら業務を進めていくことにチャレンジがあることは間違いありませんが、その上位にはスピードがあることを忘れてはいけません。

3. 個人の自立度

一般的に欧米の社会は幼い時期から個人主義の考え方が確立しているといわれます。従って、自立した個人を前提に会社の組織も成り立っています。

一方、日本の社会は集団に属し、集団と調和すること、つまりは組織的行動やチームワークが重要とされてきました。

別の言い方をすると日本企業では会社に属すること、一方、グローバル企業では専門家として集団に属することが行動の原点となっています。

組織を大事にすること、チームを大事にすることについて異議を唱えているのではありま せん。しかし、グローバル企業においては個としての存在意義を明確に主張しなくては認識されないということも事実です。

会議に参加したら必ず意見を述べること、自分の責任はどんなことがあっても果たすこと、自分で行わなくてはいけないことは、例えアドミ的 なことや自分の専門領域でないこと(コンプライアンスやISOも含め)もきっちりとこなすことなどです。

日本企業では黙っていてもすむことや庶務担当にやってもらえること、人事や総務のサポートを受けることも、グローバル企業においては個人の責任と存在においてきちっと果たさなくてはいけないということを、意識するべきでしょう。

以上、3つの切り口で日本企業とグローバル企業の考え方の違いについてまとめてみましたが、皆さんはどう感じましたか ?

ずいぶん厳しいな、ドライだな、と思ったかもしれません。しかし、グローバル企業やグローバルな競争の中にもウエットなことや情を感じる場面もあります。ただし、ベースとなる考え方がまったく違うため、情の発揮の仕方が異なるといった方が正しいと思います。

ここで述べたかったことは物事を考える視点が異なること、そしてその違いを我々はクロスカルチャー、つまり文化と文化の異なるところとその接点として受け入れていかなくてはいけないということなのです。


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