外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」第26話 自らの選択を自覚すること
第26話「自らの選択を自覚すること」
大きなこと小さなことの差こそあれ、常にAにするかBにするかという二者択一を行っているという意味で日常は選択の連続です。自分では選択していないと思っている場合、仮に特段のアクションをおこさなかったことも「選択しない」という選択をしたことになります。保留しているということはありません。
人生の上での大きな転機において、誰か(あるいは会社・親)に言われてそうなったという言い方をする人がいますが、これは明らかに選択を自覚しない人のセリフです。本来は自分が決断したのに、あたかも誰かの意思によって自分の人生が左右されているかのようです。「選択を自覚する」という考え方はとても本質的なことで、重要なマインドセットです。そして、人生の大事に限らず、日々の細かなことにも当てはまります。
難易度が高い難しいことや自分が嫌だと思っていることをやらなくてはいけない時「仕事だからやる」「上司に言われたからやる」という考え方で取り組むのは、既に失敗した場合の言い訳を自分のなかでしている、と言えるでしょう。
自分が納得し、自分で選択してやっていると考えれば、それは自分の意思に基づくもので、結果責任も受け止めなくてはいけません。背水の陣で取り組むことで、力を発揮することができるでしょう。誰かにやらされている、あるいは仕方なくやっていると考えたら、ここ一番のところで踏ん張りが効かないものです。
また「自分は運の悪い人間だ」と考える人は、総じて失敗を運のせいにし、自分が選択していることを受け入れていないと言えます。自分の行ってきたことを「運が悪い」と総括することは慰めになるかもしれません。しかし、1つ1つの出来事に対しその時その時に選択をしている以上、毎回ゼロベースなわけで、成功、失敗どちらに転ぶかわかりません。運が悪いとは結果論であって、そこから何も発展的なことは生み出しません。むしろ「運も実力のうち」という考え方は、結果を自分のものとして受け止めることにつながります。つまり、自らの選択によって運を引き寄せた、あるいは反対に結果を出せなかったという考え方です。
物事はいつもうまくいくわけではありません。失敗することもたくさんあります。ただし心の在り様として、選択をしているのは自分であると考えるのと、何かあるいは誰かによって決められていると考えるかは大きな違いです。自分が主人公であると考えれば、人生を主体的に何とか乗り切らなくてはなりません。現実と理想の間にギャップはつきものです。そのギャップを受け入れることができれば、どう克服するかを考える出発点に立てます。努力次第で成長できるのです。
このことは、Learning agility つまり「学ぶことのできる力」にもつながります。