外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」 第19話「チームの中での自分の役割」
第19話「チームの中での自分の役割」
サッカー選手・長谷部誠さんの「心を整える」という本を読みました。彼の真摯な姿勢やプロのサッカー選手ならではのエピソードには考えさせられるものがたくさんありました。
プロサッカーチームに所属している彼は、常に熾烈な競争の中にいます。本人いわく、自分は技術的には他の人を凌駕するような部分が決して多くないので、どうやって組織の中でレギュラーを獲得するかを常に考えているそうです。
当然のことながら、プロの世界は優れた選手が集まっています。チーム内でも日常的に1人1人が技量を競っています。同時に、チームは常に「勝つこと」が求められます。それは、チームに貢献し、結果としてチームを勝利を導き出す、つまりベストチームを作るメンバーが求められていることを
意味します。
このことは、我々の組織についても同じです。ベストチームを作るためには、チームをリードし、組織力をあげられる人や、チームの弱点を見出し、それを補うアクションを起こせる人が必要です。
一般的に、チームをリードするには、高い専門性を持ち「この分野はお任せ」といえること、チームをポジティブによいムードに引っ張っていくこと、勤勉さやハードワークのカルチャーの模範となることなどがあげられます。
一方、チームの弱点、あるいは足りない部分を補うとはどういうことでしょうか。例えば、大きな課題が生じたとき、業務の負荷が高まった時、お互いにサポートしあうよう率先し、気運を醸成できる人は貴重です。あるいは、チームの雰囲気をネガティブからポジティブに変えられる人、皆がやらない仕事を引き受けてくれる人、業務の継続的改善や問題提起をできる人、アンオフィシャルであっても重要な情報をシェアしてくれる人などは組織にとって本当に貴重な人です。
長谷部選手はスターといわれるタイプではないものの、自分の存在感をどう発揮するかについて高い意識があり、このことからチームからの信頼を得ています。別の言い方をすれば、彼は、一流選手であってもポジションに対する危機意識が強く、ある意味、ハングリーだということです。ですから絶えず考え、意識をコントロールし、単に頑張っている人という枠を超えて、チームに欠くことのできない人にまでなっているということなのでしょう。
このような意識を持ち、きちっと存在感を出すことは、組織内で成功するための必要なコンピテンシーではないでしょうか。