外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」第31話 信条を持つこと

第31話「信条を持つこと」

多くの方が自分なりの信条、あるいはそのようなものをもっていると思います。ここでいう信条とは「自分が信じている価値やスタイル」をシンプルに表したものをいいます。「正直である」「うそをいわない」「楽しく過ごす」「笑顔を絶やさない」「友達や家族を大事にする」「悪口を言わない」「筋を通す」「独立独歩」などさまざまでしょう。

知人や友人、同僚などの信条を聞いて、意外な印象を持つこともあるかもしれません。他人からみれば「へぇ、そうだったんだ」と思うこともあれば「あの人らしいね」と感じる場合もあるのが信条というものです。つまり、信条はその人の個性ということもできます。

私は、信条を持つことはとても大事なことだと考えていますが、それにはいくつかの理由があります。

1つは、知識、経験などでも決められないようなケースにおいて、判断の基準になるということです。例えば、物事がこじれた時、決断を迫られる時に、信条が判断の拠り所になることがあります。つまりその是非を信条に反するか否かを念頭に考えるのです。

2つめは、信条がモチベーションを維持する心の拠り所になってくれるということです。信条とはその人が大切にしているもので、それにひもづく背景や歴史があります。つまりその人にとってその意味を深く考え、練ったものです。よって信条とは単なる言葉以上の意味を持ち、自分の意識を鼓舞してくれるものです。実際、辞書を調べると信条の意味の1つは宗教的意味で「信仰上の箇条。教義」となっています。

3つめは、自分自身を成長させていくために、「信条」が「なりたい自分」への道筋になってくれることです。信条とは今できていることではなく、将来なりたいことがベースになっているものです。

私が繰り返しお話ししてきた「能力開発」はうまく進むこともありますが、なかなか進まない場合もあります。一方、信条は自分が思いさえすればある程度は実現可能なものです。よって「信条」を大切にすることは誰にでもできることであり、信条を貫くことは自分を正しい方向へ導いてくれる指針になります。

ですから信条をうまく活用していくことが大切です。必ずしも人に告げる必要はありませんが、信条を日々の中で絶えず意識し、実際のケースに活用し、更に考え方を深めてください。信条を自分の中で育むことで、それは強い個性となり、自分のバックボーンになってくれるのです。


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