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映画の闇:日本色×ハリウッド製×中国映画、というカオス

日本映画、ハリウッド映画、中国映画、という区分は幻想。映画界の闇だ。
いわゆる“超大作エンターテインメント映画”の闇は、特に深い。
見せてしまおうか。

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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 国際映画興行収益Top3、の怪 』

国際興業収益の週末集計が発表された。

第1位「モータルコンバット」、第2位「鬼滅の刃:無限列車編」、第3位「ゴジラ vs コング」。いわゆるエンターテインメント作品が並ぶのは国際映画マーケットの通常運転だ。“ドラマ”、頑張れ。むしろ観客が、アタマとココロ使うのがんばれ。いや頼む。お願い。

このTop3作品だが、お気づきだろうか。“日本色”に。

第1位「モータルコンバット」。ミッドウェイ社の大ヒットゲームの実写版だ。真田広之さんと、浅野忠信さんが出演している。のみならずミッドウェイ社は、日本のアーケードゲーム機「スペースインベーダー」「パックマン」をライセンスして成長した会社。キャラクター デザインからも判るとおり、日本大好き映画だ。

第2位「鬼滅の刃:無限列車編」。説明無用の大ヒットアニメ。国内では400億円目前!! などと呷りマーケティングを展開しているが国際興業を加えるとすでに4億ドル(430億円)を越えている。国内ローカルの一過性流行ではなく、国際でもその強さを証明したかたちだ。

第3位「ゴジラ vs コング」。言わずと知れた東宝キャラクターゴジラの新作。世界の誰もが知る巨大な存在が日本発祥だという誇りは、海外で活動してきた映画人の喜びでもあった。現在では、“トランスフォーマー”とともに元々が日本のキャラクターだということは忘れ去られているが。

『 ハリウッド工場、中国銀行 』

さて議題にしたいのはこの、ご存じHOLLYWOOD超大作にしてパンデミック以降の最大ヒット映画、「ゴジラ vs コング」。

この映画は、“中国映画”だ。

諸事認識に齟齬はあるだろうが、この映画を製作したハリウッドの“リジェンダリー ピクチャーズ”は、中国の巨大金融型商社でコングロマリットの大連万達グループに買収されている。

同社との共同製作を続けてきたハリウッド最大の映画スタジオワーナー ブラザーズとの連携を続けているように見えるが、両者はめちゃくちゃ仲が悪い。共同出資(※両社で権利を分割する)などしない。なんなら、敵対している。

中国と北米のTop2のマーケットを共有するためにしぶしぶ、連名になっている。なお、先日発表されてわちゃわちゃやっている「ハリウッド版実写 ガンダム」も、このスキーム。

「パシフィック リム:アップライジング」「ジュラシック・ワールド/炎の王国」「名探偵ピカチュウ」も、中国映画だ。

『 嘘をつかない、という闇 』

なお、まだハリウッドの映画スタジオだったリジェンダリー ピクチャーズには“ソフトバンク”が270億円出資しており、このことが引き金となって中国に買収された、とされている。そのため純血のハリウッド映画人は、リジェンダリーを中国に売ったソフトバンクを恨んでいる。

超大作エンターテインメント映画の観客マーケティングは、闇が深い。
“あおり”、“誤解”、“勘違い”によって維持されている。
しかし、けっして「嘘」ではないのだから、罪ではない。法的には。

純血が守られているのは、売れない小作ばかり。インディペンデント映画とプロパガンダ以外に、自国製作×自国制作×自国販売映画というのは、成立しない。「だから何だ?」という天才と若者には、関係のない話。
わたしが、日本の地で死ぬ映画監督なだけだ。

あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際News:英国の映画産業が、自信を持って未来を見据えられる理由

英国映画協会(BFI)の統計は、英国映画産業がパンデミック前の水準に回復していることを伝えている。FilmLondonおよびBritishFilm Commission(BFC最高経営責任者が語る。「私たちは独自の存続方法と回復プロセスを設計し、実行したんです。それは“業界として結集”することでした。実現しましたよ」BFCはコロナ禍における 映画撮影の基準「Covid プロダクション ガイダンス」を作成、実行を推奨し、プロダクションの安全性を実現した。これにより、英国は撮影するのに最も安全な国の1つになり、英国での映画とハイエンドの制作費は39億ドル(4,200億円)を超え、対内投資は33億ドル(3,560億円)に相当した。また、BFIは、2020年3月以来緊急Covid-19基金を設立し、政府が支援する6億9,700万ドル(750億円)の撮影再開補償スキームを確保。 保障されていない英国の映画やテレビの制作を保護。これまでに、3,000人以上を支援した。BFI国際問題担当ディレクターが語る。「これは私たち英国の利益だけでなく、ヨーロッパのパートナーの利益にもなります。英国は素晴らしいヨーロッパとのパートナーシップ、資金提供団体、州政府機関、フィルムコミッションとの関係を持っている。私たちは今、未来を見据えています。」 - APRIL 02, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 編集後記:』

アイツらは国からの支援があるから良いよな!!怒!! という話を耳にするが、すこし違う。日本を含め、国はどこも、“支援したがって”いる。言い切れるのには、理由がある。

我々が属している映画業界は、コンテンツ産業の中のいち部門だ。コンテンツ産業はデジタルハイウェイの黎明期から、先進国のみならず各国が主力商材にしたい産業だった。車や家電と違い、コンテンツは「安価」で「世界販売」が可能であり、「量産コストがかからない」のだから当然だ。

地球上でもっとも製作費の高額な映画は、250億円程度。一方、郊外に残る渋滞の名所“開かずの踏切り”を立体化するためには、350億円かかる。1カ所で、だ。

つまり、世界最大の映画を創ることなど、どこの国にでも可能なわけだ。

ではなぜ、日本は自国の映画を支援してくれないのか。
利益が少なすぎるから、だ。

日本映画すべての年間興行収益はおよそ、1,430億円。この収益を稼ぎ出すために尽力している企業の数は、およそ400社。400社が1年間に1,430億円しか、生み出せていないことになる。1,430億円という巨額だが、ソフトバンク1社で5兆6千億円、トヨタが29兆9299億円 に対して日本映画の収益は、端数に満たない。この比較は極論、だと感じるだろうか。では。

2,450億7,000万円、これならどうだろうか。「豆腐業界」だ。
日本国内だけで販売されている“とうふ”、その業界に1,000億円負けている。主な国内豆腐業者は591社。日本映画界は、400社。日本映画界が政府の支援を得るために目指すべき相手はまず、「とうふ」だ。

政府が支援したがる業態を実現するために最重要なのは、高収益だけではない。
ブランド力、認知度、国際ネットワークなどつまり、
「支援したくなる影響力」を持つことだ。支援されている国の映画界は、そのどれか、または複数を実現した。それにより、政府がその国の映画界を、支援する価値に達した、と判断したわけだ。調べてみれは、なるほど、納得できる。

食卓を支えることはできないが文化を支える映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記