採用の原点に戻って考えた7つの原則
こんにちは。
「採用Advent Calendar 2021」11日目を担当します。石黒太一と申します。
今年も株式会社キャスターさんのアドベントカレンダー企画に参加させていただけて大変嬉しいのと同時に、手を上げておきながら若干のプレッシャーを感じています。ですがせっかくの機会をいただきましたので、自分が考えていること、採用で大切にしていることを整理し、採用の仕事に関わる方に一つでも何かのお役に立てるような内容をお伝えしていきます。
■ 自己紹介
普段のnoteと少し雰囲気も変えるので、簡単に自己紹介をさせていただきます。
私は株式会社未来で経営企画に所属し、採用・人事・総務・総務・制度立案などの間接部門全般を担当しています。以前は旅行会社や就職情報会社での法人営業を経験したのち、2014年から現在の業務を担当しています。
当社は「I'm PINCH」という基礎化粧品ブランドを主力とした化粧品通販会社です。最近の表現で言えばD2Cといわれるビジネスモデルを強みとしています。単品リピート通販、定期通販とも言われます。(12月は静岡でテレビCMも放映中です。)
■ こんな方に読んでもらいたい
今回、アドベントカレンダーのテーマが「採用」ということでしたので、「マーケティング」「ミッション・ビジョン・バリュー」「人間力」などを大きな柱として、採用担当を担う上で大切にしたい7つのお話をさせていただきます。「原則」と言っていますが、実際は自分への戒めのようなものでもあります。採用に関わる仕事を通算10年以上やってきましたが、もう一度原点に立ち戻って向き合いたいと思っています。採用のご経験が長い方にとっては、初心を思い出していただいたり、これから採用を担当するという方にとっては、更なる採用成功へのヒントにしていただけると嬉しいです。
原則1 一人の心を動かすことだけを考える
かつては求人広告で採用していたものが、ビズリーチをはじめとしてダイレクトリクルーティングに関するサービスがメジャーになってきました。それに伴い「一人」に対してメッセージを送るということがより重要になってきています。単品リピート通販では「ダイレクトマーケティング」を長く活用され、1対多ではなく、常に1対1のコミュニケーションによって人の心を動かすことを考えています。最も身近なものは、郵送で届くダイレクトメールです。一見、1対多に思える手段ですが、あたかも個人の方にお送りしているようなレターお送りしたり、購入履歴からお客様ごとにおすすめ商品を変えた内容にするといったことを昔から行っています。今でこそパーソナライズは、マーケティングツールや採用管理ツールで当たり前になっていますが、おひとりおひとりに個別のお手紙が届いていることによって、「自分あての手紙」として受け取っていただけます。明らかなダイレクトメールは開けずに捨てられてしまいますが、私信のような郵便物であれば、中を開けて確認をしますよ。ダイレクトマーケティングでは、ダイレクトメールの一通一通が営業マンであるとも言います。採用においては、自分の代わりに説明と動機形成をしてきてくれる採用担当者のようなものです。だからこそ採用管理ツールのCM(2021年12月現在はたぶん中部地区で放映)でもネタになっていますが、「宛名の違うメールが届く」というのは最もやってはいけないことです。大切な人に別の人の名前を書いて年賀状を送るなんてしませんよね。
1対多ではなく、1人の方に届けるということは、採用要件や誰を採用するかを考える上でもとても重要です。ペルソナ設計でこれもあれもと考えているうちに、そんなレア人材っているのか、ということががあります。理想の人物像もいいですが、もっと身近に自社の採用のことを知っている人がいます。それは自社の社員です。自社の採用について深く聞いてみると意外と気づいていない、魅力や刺さったポイントが出てきます。なぜ入社を決めたのか、どこに決定要因があったのか、どの企業と迷ったのか、どんなコミュニケーションが心を動かしたのか、などを聞いてみてください。発信しているのに気づかなかった、採用での取り組みによる心の変化を知ることができます。適性検査などでハイパフォーマー分析をするのもいいですが、あくまでも傾向でしかなく、一人の人間がどのように心を動かされたのかを知ることが大切です。マスで考えると無難な答えがでてきます。平均的な捉え方をすると、せっかくの個性、強みを見逃しかねません。たった一人に対して強烈に心をうごすメッセージを見つけることができれば、本当に採用したい人に思いが届きます。
〈参考書籍〉 たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング 西口一希著
原則2 自社にしかない”ウリ”を深く理解し続ける
自社で求人原稿を作成することが今では、当たり前になっています。特にWantedlyの登場で大きく流れが変わったと記憶をしています。採用担当にもライティングのスキルは必須になっていますし、SNSを通してのコミュニケーションデザインも重要なものになっています。YOUTRUSTはまさに採用×SNSですね。かつては求人原稿はプロにお願いして、場合によって取材を通して第三者の視点で会社の強みやベネフィットを言語化をすることもできました。しかし、外部に依頼をしないのであれば、自分たちで見つけ出す必要があります。学生が自己分析で苦戦するのと同じように、自社のことなのに自分たちだけで理解するのは意外と難しいこともあります。それは自社にとってはごく当たり前になっていることがあります。外から見たら特別なことなのに、「こんなことを伝えても面白くない」とせっかくの良さに蓋をしてしまうこともあります。すでに強みも独自性もあるのに「自社の強みがわかりません」と思考停止になっていると、全てが無難になってしまいます。無難な訴求、無難な職種名、無難な社員紹介(リファラル)になってしまうのです。
USP(ユニーク・セリング・プロポジション)といわれる、「独自な売りの提案」を磨き続けることが採用においてもものすごく重要です。『サイコロで給料を決める』『取締役は社内公募で1年目からでもOK』といったわかりやすくて独自性のある制度をイメージしがちですが、それだけとはかぎりません。経営そのものがユニークで常に話題性がある企業だから売りがあるのではなく、どの企業にも必ず売りはあります。経営スタイル、創業のストーリー、優位性のある商品、社員の魅力、社内の制度、会社の所在地、などからも導き出せますし、採用担当者そのもが独自の売りになることがあります。人も一人ひとり個性や強みが違うのと同じように、会社にも個性や強みがあります。社内にいると気づきにくいということは実際あります。「3C分析」「4P分析」「SWOT分析」「ビジネスモデルキャンバス」などのフレームで考えてみると客観的に自社を理解するサポートにもなります。また、「自社で働くベネフィット」を考えることも重要な手がかりになります。こんな経験ができる、3年でこれぐらいのポジションを任せられるなど、「〇〇ができる」は「〇〇できないから転職する」「〇〇になりたい」という求職者のニーズを満たすことにも直結します。
〈参考書籍〉USP ユニーク・セリング・プロポジション 売上に直結させる絶対不変の法則 ロッサー・リーブス著
※絶版かもしれないですが、良著だったのでタイトルだけでもご紹介です。
原則3 採用の目的を忘れない
新卒採用は、採用期間も長いので特に忘れがちになりますが、採用はあくまで手段であり、目的ではないということです。採用を目的化すると、面接することやWantedlyのストーリーを更新することが仕事になってしまいます。何のために採用をするのかを常に掲げておく必要があります。新卒であれば、中長期経営計画とリンクして5年後、10年後に会社の中核となる仲間を採用することですし、中途であれば、今なぜそのポジションを採用するのかを理解する必要があります。その中心点は企業のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)です。MVVがあっての人材戦略です。何となく他社がインターンシップやっているから、インタ-ンシップをやらなければいけないとか、他社がダイレクトリクルーティングをやっているからOfferBoxを使ってみよう、だけではいけないということです。もちろん採用のトレンドや求職者の動き、ニーズを理解しておくことは必要です。ですが大切なことは、企業の存在目的に立ち戻っておかないと、状況に振り回されてしまうということです。課題解決のための手段ばかりにとらわれてもいけません。目的から考えることで、効果性の高い手段につながります。
目的と目標は必ずセットで考えます。目的がはっきりしていれば、目標の意味も考えることが出来ます。ただ採用目標数字だけを追いかけていると、目の前の応募者が目標達成のための数字になってしまいます。人はモノでも数でもありません。数だけを追うとミスマッチも発生します。内定承諾を獲得することに必死になって、入社後の活躍を置いてきぼりにしてしまうのです。また、「採用は何のために行うのか」があることで、自分自身の意欲ともつながってきます。より仕事がミッショナブルになっていくのです。そして、なぜ自分は採用を担っているのか、なぜ会社は人を採用しようとしているのか。採用は大切な人の人生に関わる仕事です。もし、ミスマッチがあれば、お互いにとって不幸でしかありません。「転職は慎重に」というキャッチコピーがありましたが、採用も慎重にならないといけません。
原則4 価値観を伝えることに徹する
どれだけスキルが高くても、過去に実績があっても、価値観が合わなければチームで仕事をした時に、パフォーマンスを発揮することはできません。京セラ創業者の稲盛和夫さんは「仕事の結果=考え方×熱意×能力」と言っています。能力が10だとしても考え方が0なら結果は0です。能力が5でも考え方が5なら結果は25です。能力が低くてもいいということではなく、考え方も能力も熱意も掛け合わせによって力が発揮されるということです。採用において、企業がどのような考え方をしているのか、何を大切にしているのかは早い段階から伝える必要があります。例えば、「効率」を大切にしているなら、生産性を高め、ムダを徹底的に省くことを重視します。「調和」を大切にしているなら、チームでの活動や合意形成のための時間などが重要です。これを理解せずに、みんなで合意をしながらコミュニケーションを大切にして働きたいという人が、効率最優先の組織に入ったら辛くて仕方ありません。慣れるように努力するかもしれませんが、価値観が合わない職場で毎日仕事することは決して楽しいものではありません。結果的に離職してしまうことがほとんどです。
バリューや価値観、フィロソフィーを大切にしている企業は、経営の全てにおいて一貫した取り組みをしています。採用でも価値観を明確に打ち出しをしていますし、価値観に共感できない人は選考を進んで行くことはありません。以前ある大手IT企業(メガベンチャーと言われる企業)では、選考に進む条件として創業者の著書2冊を渡され、読んで考え方に合うかどうか考えて欲しいというものがありました。今もやっているかは存じ上げませんが、最もわかりやすい伝え方だと思ったのを覚えています。価値観が合わずに結果も出せず、短期間で離職してしまうのは、お互いにとって不幸なことです。会社の考え方に合わないのに無理して合わせようとするのは、苦労しかありません。採用担当として、会社が大切にしていること、価値観・バリューをまず明確に伝えることです。また採用担当自身が体現していることも重要なことです。会社の価値観は、人事評価や稟議などの判断の中にも現れてきます。会社と価値観が合わず、自分のやり方で行動をしている人は評価もされず、新たなチャンスが巡ってくることもありません。そうなれば、どんどん仕事がつまらなくなってしまいます。人それぞれ価値観は違います。だからこそ明確に伝えることが採用の仕事でもあります。
原則5 現地現物現場にしか答えはない
採用担当だけで採用を考えたり、採用はこうあるべきで机上の空論をしていると、採用した後のミスマッチにつながってしまいます。採用を現場で行わない場合は、間接部門が採用活動を行うことになります。ビジネスの最前線ではありませんから、どうしてもお客様や商品から遠くなってしまいます。しかし、採用をした方が仕事をするのは、まさにビジネスの最前線になります。現場のことをよく知らないまま、採用の都合で採用をしてはいけないのです。常に、社内で何が起きているのか、お客様や他社の動向はどのようなものか、業界で注目されているトレンドは何か、など常にアンテナを立てておく必要があります。自社のUSPを理解することも、どのような人材が今必要なのかも現地現物現場を見ないとわからないものです。
求人票でMust/Want条件に何を書くかで応募の内容が劇的に変わってきますが、具体的であればあるほどより採用成功に近づきます。しかし、現場感覚がないと社内でどのようなシステムを使っているのか、どのような仕事のスタイルなのかもイメージすることができません。例えば「マーケティング業務」といっても、世の中にあるマーケティングはさまざまなものがあります。果たして自社ではどのような仕事をしているのかを業務レベルで知っておかなければいけません。大手企業のように機能別や事業部別に採用担当がいるなら特化することができますが、複数職種の採用を担当している方が多いと思います。そうすると新規事業のメンバー募集や社内では初めて採用する職種もあります。採用は誰よりも経営方針や新規事業についても詳しくなっておく必要があります。応募者にとって、あなたは会社の代表者であり、商品もビジネスも業界のことも知っている人として見られています。そのためには、誰よりも自社に詳しくなるために現場へ足を運びましょう。
原則6 スピード・スピード・スピード
採用に限ったことでありませんが、スピードこそが運命を分けることを忘れてはいけません。今、面接をしている方が、このあと他社での内定承諾の面談が入っているなんてことは教えてはくれません。選考日程の調整が1日遅かっただけ、他社内定が決まって選考辞退になることもあります。これはマーケティングでも同じことが言えます。Facebookで見かけた広告から資料請求をすると、即座に折り返しの電話をいただくことがあります。今見ていたものですから、興味度合いは高いですし商談の予定も素直に決めていきます。しかし、オンラインセミナーを受講し、1ヶ月ぐらい経ってから「先日のセミナーのお礼のお電話で」といただくと、すでに記憶も薄くなってしまい、なかなか次につながりにくいということもあります。採用で1ヶ月も空くことはないかもしれませんが、インターンイベントで連絡先を登録してもらった方に、1週間以上空いて連絡をすると「はじめまして」のような反応になったりします。スピードを常に意識して、すぐに次の行動につなげなければ、せっかくのチャンスを逃してしまうことになります。
「ご縁」という言葉は採用でよく使われます。目に見えませんが、大切なつながりであるも忘れてはいけません。ご縁を大切する、ご縁があったなどといいますが、スピードが「ご縁」を濃くします。ご縁は結果論ではなく、主体的な行動やアクションによって生まれてきます。この方は絶対に採用したいんだ!という思いがあれば必然的に行動も早くなります。逆に迷っているとスピードは遅くなります。検討している間にご縁はどんどん薄くなっていきます。採用は担当者の一任で決定できないこともありますが、アクションやレスポンスをすることなど、行動は変えることはできます。自分で変えることができるにもかからず、現場が遅いとか、上司の判断が遅いなどを言い訳にしていては、良い採用にはつながりません。応募してくださっている方に誠実に、スピード感をもって対応をしていくことが結果につながります。採用は鮮度が命です。
原則7 「あなたと仕事がしたい」と言ってもらえる仕事をする
新卒採用をしていると「人事がやりたい」「採用担当をやりたい」という方を多く見かけます。人事/採用担当のみなさんが非常に魅力的であることは、日頃から強く感じます。こんな素敵な方たちと一緒に仕事ができたら楽しいだろうなと思うことがよくあります。この記事を読んでいただいている方は「あなたと仕事がしたい」と言ってもらえるような仕事を普段からされているのだと思います。もちろん、新卒採用では学生にとって採用担当は一番接点の多い職種ということもありますが、自分の利益のためだけではなく、これから社会に飛び出す方に真摯に向き合い、時には役割立場を越えて接する方も珍しくありません。応募者からみたら企業の顔であり、社長以上に会社の代表として映っています。と同時に、それぐらい周囲からは見られているという意識も必要となってきます。
「なぜ自分が採用担当なのだろう」という問いを常に持ち続けることも大切です。あなたが選ばれている理由はきっとあるはずです。会社の価値観・バリューを体現していなかったり、いつも愚痴っぽかったり、「でも」の否定から入ったりするような方に採用担当として役割を持ってもらうことはまずありません。会社の顔になってほしい人、会社の顔になることができる人を任命しています。もちろん自分におごってはいけませんが、自己肯定感は高く持ち続けることも大切です。「あなたと一緒に働きたい」こうやって言ってもらえるような仕事や言動が採用にもつながります。そして、あなたが採用に関わった人は、あなたとの出会いによって、幸せな人生のきっかけを手に入れているのです。
まとめ 採用業務を担当する上で大切にしたい7つの原則
原則1 一人の心を動かすことだけを考える
ダイレクトメッセージは一通一通が採用担当者と思って発信する。
どのポイントで心が動いたのかを、まずは社内に聞いてみる。
たった1人が強烈に心動かされるメッセージを探す。
原則2 自社にしかない”ウリ”を深く理解し続ける
採用担当のライティングスキルは必須。
自社の普通は、他社から見たら圧倒的な強み。
働くベネフィットを考える。
原則3 採用の目的を忘れない
何のために採用をするのかを常に掲げておく。
数字だけを追うとミスマッチにもつながる。
採用は大切な人の人生に関わる仕事。
原則4 価値観を伝えることに徹する
学歴やスキルよりも、価値観が合う人を採用する。
「仕事の結果=考え方×熱意×能力」
採用担当自身が体現していることが重要。
原則5 現地現物現場にしか答えはない
机上の空論で採用を考えてはいけない。
社内で何が起きているかを常にアンテナを立てておく。
現場に足を運んで、自社を知る。
原則6 スピード・スピード・スピード
ライバルと候補者は待ってくれない。
スピードはご縁を引き寄せる。
採用は鮮度が命。
原則7 「あなたと仕事がしたい」と言ってもらえる仕事をする
「あなたと働きたい」と思ってもらえる仕事をしているか
自分が採用を担当している意味を理解する。
あなたと出会いが幸せな人生のきっかけとなっている。
ここに書いてあることは、ごく当たり前のことかもしれませんし、今更なこともあります。しかし、採用の手段やツールはどんどん進化していきますが、1人の人間として目の前にいる「将来の仕事仲間」と接することにおいては、普遍的な考え方、習慣、原則があります。環境の変化は全く予想ができません。だからこそスキル以上に、人間力を高めていく必要があります。リクナビ登場以前の辞典のような就職情報紙が届いて、はがきでエントリーしていた時代も、Instagramから企業へアプローチができてしまう現代でも、採用の基本は大きく変わっていないはずです。手段にとらわれるのではなく、おひとりおひとりとの出会いを大切に向き合っていくことが、選ばれ続ける採用になっていきます。採用でのミスマッチが減り、誰もがHappyになれる社会になりますように。
今回の記事は、自分への反省がほとんどです。採用は最高にいい仕事だし、奥が深い。そして、人の人生を左右するかもしれない大切な仕事です。だからこそ、忘れてはいけないことがあります。最後までお読みいただきありがとうございました。
明日は土屋鞄製造所・西島悠蔵さんにバトンをお渡しします。とても楽しみですね。引き続き採用 Advent Calendar 2021をお楽しみください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?