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スカイクロラを読んで

天気が良い。土手に上がり、鉄橋を渡った。そのあとは、ずっと真っ直ぐで、スクータのエンジンがこれ以上回転を上げられないのが痛ましかった。
この乗り物は、飛行機よりもずっと飛んでいる感じがする

僕もそう思う

空の上と地上
どっちが現実?
そういう話はしない
これはそこから離脱するための小説

アスファルトの道路をスクーターで走る
もう何回も走った道路
白線の塗料が摩耗してところどころで消えかけている
この白線はいつからこの場所に引かれているのだろうと考える
新しいものではないからもう何年も、十年以上は経っているんじゃないか
もしかしたら僕が生まれる前、もっと昔からかもしれない

途中にコンビニがある
相変わらずまばらな客数
駐車場だけは無駄に広い
これも昔からこの場所にずっとある
よく潰れもせずに頑張っていると思う

空が青い
その言葉がとても重要だと思う
新緑の青葉がまぶしい太陽でキラキラ光る
生ぬるい風が肌の表面をなでるように通り過ぎる

ミラーをチラチラと見て後ろから車が来ないか確認する
車が来ない内は良い
この道路を一人で独占している感じ
とても自由に
車がやって来ると厄介だ
一気に緊張感
さっきまでのポカポカな空気は破られる
あっち側にしてみればこの小さなスクーターは邪魔なだけだろう
ノロノロ走ってんじゃねーよと
優劣はハッキリしている
法定速度を守っているのはこっちの方だけど
さっさと追い越してくれと思う
すれ違う時の横顔は確認しない
追い越した車の後ろ姿を見送る
スピードが上がって一気に引き離される

ざまあみろと思う
この空気の美しさを知らないんだ
目的地に向かうだけで飛ぶことを知らない人たち

「さもないと、永遠に私たち、このままだよ」
そうだ、と僕は思った。
「ずっとこのままだ」

そうかもしれない
僕もそう思う

けれど・・・・・・、
少なくとも、昨日と今日は違う。
今日と明日も、きっと違うだろう。
いつも通る道でも、違うところを踏んで歩くことができる。
いつも通る道だからって、景色は同じじゃない。
それだけでは、いけないのか?
それだけでは、不満か?

彼女はどっち側だろうか
もう彼女は空を飛ばない
地に足のついた大人

離脱したい
一瞬そう思う
彼女の視線に晒される
露わになる僕の身体

それはきっと、防衛本能だっただろう。
僕は、
いつだって、
そうして、
生きてきたのだ。
そうしなければ、
生きてこられなかったのだ。

空が青い
山の頂の遥か向こうまで
ツバメが低く飛ぶ、植物の匂い
道端に黄色い花が咲いている
トンネルを抜ける
青い空が続く
いつまでもこの道を走っていたいと思う
空を飛んでいるようなこの乗り物で、長い助走をつけていつかこの地上から離脱できると信じている

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