グレート・ギャツビーを読んで
時間は一方向にしか流れないという物理的な現実。
そのつまらなさ。
彼は本気だ。
その言葉に一点の曇りもない。
それが全面に溢れている。隙間なくきっちりと。
自分はそれだけのために存在しているんだと一点の疑いもなく。
過去も未来もないその時点だけで存在しているような人物。
まるで光の反射だけによって映し出されている幻影のような。
そこにあるのは美しさではなくて破滅の予感。脆さ。
ハッピーエンドはあり得ない。
懐かしい音楽を聴いた時みたいに。
最初の数音を聴いただけで一気に蘇るもの。
しっかりと掴もうとすればすり抜けていく。
それでも懲りることなく僕らは手を伸ばし続ける。
あの有名な最後の一文。この名文にたどり着く為だけでも一読の価値がある。
胸の辺りがスーッとする爽快感。読み終えた後に変わる光の見え方。
あの夏という季節そのもののように。
それを感じるならギャツビーという人物は今も何処かで存在し続けている。