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小学校算数「問題解決学習」は小学生にはキツイ

小学校の算数の学習スタイルに「問題解決学習」というものがあります。

個人的にこの算数の問題解決学習、ちょっと「問題」があると思っています。

今回は、「だれでも天才になれる 脳の仕組みと科学的勉強法」(池谷裕二著 ライオン社)から、脳の仕組みを通してこの「問題」を考えてみます。

学習する年齢に適した得意な記憶の種類がある

著者によると、記憶の方法には3つあるのだそうです。

「知識記憶」「経験記憶」「方法記憶」です。

「知識記憶」とは、「何かきっかけがないとうまく思い出せない知識のような記憶のこと」です。人や物の名前、算数の公式などです。

「経験記憶」とは、「自分の過去の経験が絡んだ記憶のこと」です。楽しかった思い出や、フラれた思い出、旅行先での出来事などです。

「方法記憶」とは、「ものごとのやりかたを覚える記憶」です。体で覚えている記憶と言ったほうがいいかもしれません。箸の持ち方や自転車の乗り方などです。

この3つの記憶方法はピラミッド状になっていて、下から、

方法記憶

知識記憶

経験記憶

となっています。

方法記憶が原始的な記憶、経験記憶が高度な記憶です。

このピラミッドは人間の成長にも当てはまり、最も早く発達するのが方法記憶、次が知識記憶、最後が経験記憶です。

この記憶の発達、中学生くらいまでは知識記憶がよく発達して、その後経験記憶が優勢になってくるのだそうです。

小学校では10歳になる前に、掛け算の「九九」を教えます。これは、知識記憶がよく発達しているこの年頃を狙って暗記させようという教育計画なのです。この年齢では、論理的なことより、かえって意味のない文字や絵や音に対して驚異的な記憶力を示します。しかし、中学生になることには経験記憶が完成され、論理的な記憶力が発達してきます。ですから、成長するほど九九を覚えることは困難になります。(P.60より引用)

確かに、私自身も経験があります。

年齢が上がるにつれて、「丸暗記」ができなくなってきました…。

つまり学習スタイルというのは、小さい時から大人になるまでずっと同じではなく、学習する年齢に適した記憶の仕方をする必要があるということです。

1時間かけて1問しか解かない授業

さて、わたしが「問題」だと思っている小学校算数の「問題解決学習」。

この授業スタイルの特徴に、自力解決と練り合いというものがあります。

自力解決とは、一つの問題(例えば「25×3の筆算のやり方」など)を、それまでの自分の知識を基にして考えていくものです。

これを20分くらい行うことが多いように思います。

クラスの中に一定数いる、いわゆる「賢い子」は、当然20分もいりません。すぐに終わります。

残りの時間は暇です。

「ほかの方法も考えてみてね」と先生に言われることもありますが、そちらもすぐに終わります。

やはり退屈な時間が過ぎていきます。

一方、やはりクラスに一定数いる、いわゆる「算数の苦手な子」はこの20分うんうんと頭をひねりますが、解決方法がまったくわかりません。

先生が様々ヒントを出しますが、それでも「わかった!なるほど!」となる子は少ないように思います。

だんだんとやる気をなくし、残りの時間机に突っ伏したり、手いたずらをはじめたりします。

その後、練り合いです。

それぞれ考えた解決方法を発表して、「なるほど~」とか、「この方法がわかりやすいね」とか、そういったことを期待している時間です。

何人かが発表するわけですから、こちらも15分から20分くらいかかることが多いように思います。

子どもですから、みんながよくわかるように論理的に説明できる子は当然少ないです。

「賢い子」が説明をします。

聞いている子の多くは、なんとなくわかったような、わからないような感じです。

先生は焦ります。

小学校の授業時間は45分ですので、自力解決と練り合いで使った時間を考えると、残りの時間はわずかです。

子供たちが分かったような、わからないような感じなので、先生が無理矢理「こういうことなんだね」と言って、練り合いは終了です。

残り時間はそんなに残っていませんので、数問練習問題をやるか、時間オーバーとなってしまいここでおしまいということもあります。

つまり、1時間の授業中に扱った問題は、たったの1問なのです。

これで、子供たちは算数ができるようになるのでしょうか。

できるかできないかは置いておいたとしても、「算数楽しい!」「オレ、頭よくなった!」とはなっていないような気がしています。

教科書には他にも練習問題があります。

そのやりきれなかった練習問題は?

多くの場合、宿題です。

もしくは、やらなくてもそのまま・・・ということも。

知識記憶優位の特性をいかした授業を

前述のように、小学生は知識記憶がよく発達しており、論理的な記憶力はまだまだ未発達です。

それならば、その特性をいかすほうがよいのではないかと思うのです。

上記の「25×3の筆算のやり方」を、「う~~~~ん」と考えるのではなく、筆算の手順をマスターすることに重点を置く授業にすべきなのではないでしょうか。

当然1問だけでは、筆算のやり方はマスターできません。

ですから、教わったやり方を練習問題何問か繰り返して説くことでマスターすればよいのです。

脳の発達から言えば、小学生のうちはこういった学習スタイルのほうが向いているのではないでしょうか。

「できた!」が積み重なれば、「算数好き!」「俺、頭よくなったかも!」というポジティブな感情も高まってきそうなものです。

そして、知識記憶をもとに中学生、高校生くらいから論理的に学ぶことに重きを置いていくというのはどうでしょう。

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