地方でアーティストと暮らすには
みなさんこんにちは。tag.近藤です。
今年は色々大変でしたが、立ち止まって考える時間が多い一年でした。
自分が残せるものは一体何かということも考える時間もありました。
そこで今までの経験を東京に行く資金やあてもない、でもプロのアーティストとして食べていきたいと思っている人、アーティストのマネージャーをやってみたいという人に少しでも役に立つかもしれない、何かのヒントになれればと思い今までの経験や感じたこと、地方でアーティストと暮らすことのメリット・デメリット、これからの時代を生き抜くには、を記しておきます。
■まずは自己紹介
下記に上京してからorigami PRODUCTIONSを経て地方移住までの経歴を書いておりますので参考にしてください。
■地方でアーティストと暮らすには
・TSUNEIとの出会い
上記のプロフィールから続きますが、フリーで活動していくなかマネージャーがいなくなるから業務委託で手伝ってくれないかと当時TSUNEIが所属していたナオプランから連絡をいただきました。
彼女自身元々活動拠点は東京で数年前に地元新潟に拠点を移したアーティストだ。
シンガーとして活動する傍タレントとしてもレギュラー番組に出演していたりナビゲーターを務めたりもしている。キャラクターも明るいし、何より僕が地元に戻って会ってきた中では最もプロ意識が高いし、常に仕事に対して本気で高みを目指してどうしていくか、ここでとどまらないためにはどうするべきかということを第一に考えている。それがいかに大事かということを彼女に会って再認識できた。
そんなTSUNEIとは2018年12月から業務委託という形でマネジメントをはじめ、現在は2019年7月に本人が独立して以降二人三脚で活動を共にし、アルバム制作に向けて1から動き2020年2月には全国流通のアルバムをリリースする事ができました。年明けにはようやく感染対策を実施してお客さんを入れたワンマンライブも開催できます。
・プロ意識を持つことの大切さ
東京で暮らしているとプロ意識がない人間や上を目指さない人間はあっさりふるい落とされるので当たり前のようなことですが、意外とここが足りないし、どうやってプロとしてのモチベーションを保つかという部分に悩んでいる可能性もある。
そこそこのレベルで地方で少しでも収入を得る事ができるようになったり、周りの環境がぬるま湯でなあなあだとどうしてもその部分がおざなりになってしまいがちだし、そもそも本気でプロとして地方を拠点にして生活していくという考えより先に、ある程度意識が高く切磋琢磨しあえるライバルに会う確率が高い東京へ行こうとするのは当然だ。
しかしながら、こんな状況で活動場所を都心に移すことが難しくなってしまった。とはいえ、これは怪我の功名の可能性もあって居住地をわざわざ移さなくてもそれぞれの地方でみんなが意識を高く持つことで文化レベルをさらにあげることはできるのではないかと思う。ビジネスモデルがきちんと確立できれば、の話ではあるが。
まだまだ東京は音楽的な部分に限らずビジネスという観点でも一極集中していると思う。ただ、ガラパゴスな戦略を取らず10年20年かけて地方も底上げしていけば音楽は言語を超えるものだし世界と戦えるはず。
続いてメリット・デメリットについて考えていこうと思う。デメリットに関しては解決策も考えてみた。
■メリット
・ライバルが少ない
まず最大のメリットでもありデメリット。人材不足に関しては東京一極集中の状況が続いているので地方はただただ良い人材が流出していくのを指をくわえて見ているという状況を変えていくしかない。
裏を返せば飛び抜けた部分を活かせれば一人勝ちできる。
この人材不足はマネジメント側も一緒のように感じるが、アーティストは地方在住でマネジメントは東京というアーティストも意外といる。とはいえ、お互い近くにいた方がコミュニケーションは取りやすいし理想は同じ居住地域にいることだ。
・生活水準はある程度低くても生きてはいける
車がないと何かと不便だったりするがこだわりがなく少しの荷物さえ運べればいいというアーティストなら軽でもいいのでそこまでコストはかからずに済む。バンドであれば流石に厳しいが。。
また、土地は都心に比べれば安いのでスタジオ付きの戸建てを建てやすいはず。
・集中した環境を構築しやすい
都会に住むと何かと周囲の雑音などが気になるところ。付き合いも多くなる。物理的にも距離さえ遠ければ誘われることもないし断ることも容易だ。
・幅広い活動ができる
ライバルが少ないという部分につながりますが、アーティスト以外にもタレントとして活動しやすかったり体験してきたことを子供達に伝えるための講演が可能だったりします。これはアーティストの意思の部分なのでやりたくないならマネジメント側は無理にさせる必要はないし、無理強いはお互いにとって不健康だ。音楽のみに集中したい、させたいというなら無理は禁物。
とはいえアーティストもビジネスセンスが問われる時代だ。新たな才能を見出すのもマネジメントの仕事と言えるだろう。
・行政絡みの仕事が意外と多い
ここは地元に戻ってきて感じた面白い部分ですが、意外と県庁や市役所とかの行政の方々と仕事をさせていただいたり会う機会が多い。これは東京ではなかなか経験できなかったことだ。地方で行政を味方につければメディアもついてくる場合も多いので一気にアーティストとしての知名度を押し上げてくれる可能性が高まる。小池都知事にたどり着くにはいくつものハードルを乗り越える必要があるんじゃないだろうか。
■デメリット
・これだと思うアーティストになかなか出会えない
マネジメント側からするとここは結構ネックで、自分に合ったアーティストに会うには運に近い部分もある。アーティスト側にとっても自分に合うマネージャーに会えるかどうかは運もあるかもしれない。
ただのカバン持ちには会えたとしても本当のマネージャーに会うことは意外と至難の業だ。
ここは根気強くライブハウスに足を運んだり、ライブハウスの店長さんに聞いたり、人づてに紹介してもらったりなど何かきっかけを掴むしかない。
ちなみにこの部分は結構直感が大事だし自分の聴いてきた音楽や好みに大きく左右されるので、これだというアーティスト以外はダメなアーティストとは限らない。
・ライバルがいない
メリットにもあげた通り。切磋琢磨しあえる関係が近くにいないというのはアーティストにとっては酷だ。しかし、これは意外とすぐに解決できる。ライブなどで地元から県外や海外など外に出ることだ。あとは自分たちが下地を作ったフィールドに企画して呼び込めばいい。外に出る以外にも遠隔でコラボするなど今やデータでやり取りできる時代だ。別に居住地まで移す必要はない。
・その地方の色に合わない
それぞれの地方の特色があるはずだ。ロックが盛ん、パンクが盛ん、ヒップホップが盛んなど。こればっかりは仕方がない。活動地域を変えるか、自分を変えるかしかない。あとは唯一無二のアーティストになるしかない。
以上あげてきたデメリットは地方のレベルさえ上がれば余裕で解決できる問題ばかりな気がする。
アーティスト全体のレベルが上がる
↓
お客さんの耳がいい意味で厳しくなる
↓
選ばれたアーティストがしのぎを削る
↓
地方の文化レベルが高まる
↓
日本全体の文化レベルが上がる
↓
世界に負けない一大カルチャーができあがる
↓
世界と戦える企業が増える
ここで勘違いして欲しくないのが、レベルが上がる=敷居が高いではない事。こうやって入門編が必要なリスナーを排除していった結果が今の業界に繋がっているのではないだろうか。リスナーにとって音楽は楽しむものであり、難しく考えさせないで体で感じる要素が非常に大きい事だ。とはいえ知っているとより楽しめる側面も音楽にはあるのでライト層でも入りやすい入り口を作る工夫も必要だろう。
この流れが各地で発生しだすと日本全体の文化レベルが上がって世界と余裕で戦えるようになる。言語の問題も多少はあるかもしれないが、それよりもガラパゴスなことをやっているから世界と戦えていないだけで、各アーティストやミュージシャンのレベルは非常に高いと思うし、やり方さえ変えればすぐに日本は世界と戦っていけると思います。
■これからの地方アーティスト、マネジメントの行方
つらつらと書いてきたが地方を拠点にしながらのチャンスはまだまだある。というより今後地方の可能性は広がる一方な気がしている。
・サブスクの台頭
地方在住アーティストでも活躍できる可能性が高まっている一番の理由にはこれがあげられる。今までは多くのメディアに出て、各地をドサ回りしてお店に大きく展開してもらってCD(ハード)を売るという流れ(ちなみにここは国内マーケットも見ていく上では今でも結構重要ですし今後も必要なことでしょう)がいまだに根強かったが今や世界中に発信でき、マネタイズできることをメジャーもようやくわかってきた。
サブスク強化の波が国内でもきており、リスナーやファンもどうすればアーティストにお金が落ちるかを理解してきているので、うまくSNSやUGCを利用して世界中のファンを獲得できればサブスクの再生数だけでも生活できる地方アーティストが増えていく可能性はある。プロとして常に高みを目指して集中して活動ができる環境が地方在住アーティスト単位で増えていけば文化レベルも自然と上がっていくはずだ。
・海外との距離
先に挙げたようにサブスクの台頭により海外との距離も近くなった。今はこんな状況だが今後状況が以前みたいに出れるようになってくれば、東アジア、東南アジアやヨーロッパでチャンスを掴むアーティストも出てくるだろう。
また、なぜ世界をマーケットにすべきかというと答えは一つ。分母が一気に増えるから。もうすでにサブスクではたくさんの国の人が聴いてくれているデータが出ているのに、このチャンスを見逃すことほど勿体無いことはない。
・より多くのことや知識が求められる時代
地方で活動しているアーティストを支えていくためにマネジメントは規模を大きくしづらい側面もあるのでやることが多くなるはずだ。東京に出向くだけではなく海外戦略も視野に入れていかなければいけないし、当然今まで同様アーティストがどうしたら輝けるかを常に考える必要がある。
時にはカメラマンになる場面もあるだろうし、スタイリストにも舞台作家にもなる場面もあるだろう。
また、重要なのはアーティストとマネジメントはたとえ二人であってもチームなのでアーティストの言いなりになるだけでは本当のマネージャーとは言えない。それは逆も然り。
また、マネージャーはアーティストにアドバイスできる音楽的な知識やトレンド、脈々と受け継がれているエヴァーグリーンな曲も知識として取り入れなければならない。
とにかくアーティストと同じぐらい音楽を好きになること、そのアーティストを好きになること。そうすれば答えに近づいていくはず。好きなことを仕事にするというのは大変なことでも乗り越えられるという事。そうじゃないなら仕事にするほど好きじゃなくて趣味でいいと思う。
origamiの対馬さんはユースカルチャーとビジネスは密接な関係にあると言っていて、加えて僕が思うにユースカルチャーと政治も密接な関係にあると感じています。(当然ここも対馬さんは思ってると思います)いつまでも文化が未熟なままでは人も未熟なままで知らぬ間に諸外国に抜かれて日本は取り残される状況が続いていくでしょう。
今こそ、ここに和を見出す必要がある。
本気で世界を獲るアーティストが日本から続々と出てきますように。
ちなみにまだまだ地方でマネジメントだけで食べていくというのはなかなか厳しい現状だと思います。こんな状況になると一気に無収入になりますし。。
でも光は見えてきた。
負けずに頑張ります。