アクティブ運用の終焉=IR不要論時代の幕開け
以前は「株屋」さんが一生懸命株価動向を予想し、ある種投機的な株式売買が盛んであった株式市場。
他の人が知らない情報を集め(もしくは研究することによって確からしい情報を予想し)、市場を圧倒させることが楽しみの1つであった株式投資。
現在でもプロのアナリストと呼ばれる人々がマクロ経済や業界動向、企業動向を調査し、株価動向を予想している。
ただ、最近はコンピュータ運用も盛んなようで、果たして従来のアナリストが銘柄をリサーチし、ファンドマネージャーがポジションの範囲内で買うと言ったアクティブ運用自体、衰退しているとも聞く。
事実、GPIFのポートフォリオの中で国内株式運用においては約2割がアクティブ運用であり、相対的にその規模は縮小しつつある。
そもそも従来のアクティブ運用が、コンピュータ運用はおろか、市場インデックスに連動したパッシブ運用に結果的に伍することができるのか??といった疑問もある。
そもそも、ここまでコンピュータが発達した現代において、運用だって人間よりも機械の方が優れてるんじゃないか??といった実しやかな疑問が渦巻いている。
プロのアナリストすら機会運用やインデックス運用にかなわないとなると、ましてや個人投資家などがそれらを凌駕することなど、間違ってもできなくなる。
今回はアクティブ運用が不要となり、インデックス運用主流の時代。
すなわちIRが不要になる時代が到来するのでは??という点について書いてみたいと思う。
また、そういった時代においては、「IR担当者」の仕事はどのようにかわってゆくのかという点について書いてみたいと思う。
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IRは不要になる??
アクティブ運用が衰退し、今後パッシブ運用やコンピュータ運用だけが残り、個人投資家の存在意義もなくなるとなると、パッシブ運用においてはインデックスに組み込まれる対象銘柄になることが唯一の選択肢であり、コンピュータ運用においては定量的な数値情報と、テクニカル分析の叡智の集積だけがよりどころとなる。
結果的に発行体から能動的に定性情報も含めた情報発信を行うことは不要となることも想定され、すなわちIR自体が不要になるとも考えられる。
企業のIR担当者の業務の変容
狭い意味での機関投資家向けIR、個人投資家向けのIRが不要になった場合、残された「IRの仕事」とはなんなのだろうか?
まずは、コンピュータ他、パッシブ運用に必要な情報を市場に提供することだろう。
優先すべきは短信や有報等の法定開示文書をしっかりと出すこと。
市場価格に織り込まれていない情報を適時適切に市場に提供すること
くらいになるだろう。
フェアなディスクロージャーをしっかり行い、市場参加者の情報に遍在性を持たせないことがIRの最たるミッションとなることが予想される(今でもフェアディスクロージャーはIRの基本だが、定量的な情報提供に加え、定性的な情報提供を行うことがIR業務の醍醐味でもあった)。
即ち、IRの仕事は極めて定型的な仕事になってしまう可能性が高い。
現在のような1on1でじっくり投資家と向き合って経営環境について議論するなどということはなくなってしまうことが予想される。
ただ、そういった定性的な情報を一生懸命投資家に伝えるといった行動自体、実は非効率な業務だったのかもしれない。
定量的な情報だけを投資家に提供し、それをもって投資判断してもらう世の中の方が、実は極めてフェアなのかもしれない(情報の「解釈」をなくして、ファクトとしての定量情報だけで株価形成されれば極めて効率的だとも思われる)。
現在の市場は極めて非効率だといえる。
非効率が故に裁定取引の機会が生じ、そしてアノマリーによるボラタイルな価格形成がなされているが、IRが適時適切な定量情報のみを提供し、そしてそれがすべからく全ての投資家に平等に行き渡る市場環境が醸成されれば、市場は極めて効率的になるに違いない。
効率的市場の形成により、株価はファンダメンタルズのみに依存=株式投資はつまらないものになる
ただ、裁定取引やアノマリーの存在自体が市場取引に魅力を提供していることは間違いない。
株式投資の勝った、負けたは投資行為の醍醐味でもあるし、それがなくなってしまっては株式投資に意義を見出せなくなってしまう人も多いかもしれない。
したがって、効率的市場においては株式投資の魅力は鳴りを潜める結果となることが想定される。
私が予想する時代は長期的な将来の話ではない。
3年、5年という近い将来、限りなく予想するような時代となることに確信を持っている。
もしかしたら近い将来には株式投資は極めてつまらない行為になってしまっているかもしれない…