『脳の狂乱』
急ぎ足雹に打たるる心地して薬箱もちかっ食らいたり
枕辺にもののけばかり行脚する今宵の月は獅子の満月
月満ちて臓腑の圧のたかまりて脳の瑞より魔物いでしか
焼野の地我が立ち枯れた脳髄の炎の木々と六重の獄と
蜘蛛の網がんじがらめの心して這いずってくる無象の傷み
布団着てなお息できぬ屍か昨夜死んでは今宵また死ぬ
己が身の亡骸ばかり転がりて焦土となりし自我の残像
病むことの骨頂いっそめでたきかな泣き笑いする丑三つの刻
伏しては起き言葉にならぬ声を吐く闇をつんざく記憶の怒り
動悸して身はせわしなく暴れたり踊り狂いて死するに似たり
灯篭のごときめぐるは死の記憶抗い難しその鮮明さ
百八の鐘の音さえ虚しけれ業というには重き足枷
狂乱や夜毎あらわる猩々に手足もがれて食われ食われて
破損した脳の作りし牢獄に頭髪を抜き嘔吐するなり
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