台風がもたらしたもの
2018年、9月3日…
職場に、迷い猫がやってきました。
まだ、生後2か月くらいでしょうか。
本当に小さな子猫です。
母猫とはぐれてしまったようです。
翌日は台風との予報が出ていたので、スタッフ総出で子猫を保護しようとしました。
子猫用の缶詰を置いたり、ワナをしかけたり。
しかし子猫はすばしこく、なかなか保護することができません。
もうちょっとで…というところで、逃げられてしまいました。
そして、翌日。
子猫を保護できないまま、9月4日を迎えました。
滅多に台風が来ない大阪ですが、その年の21号は違いました。
台風の中心は紀伊水道を抜け、午後から大阪南部を直撃したのです。
幸い、夫も私も仕事が休みでした。
午後、暴風雨に荒れ狂う外を見て…
「店長(夫のこと)、あの子猫、おそらく無理やろな」
「そうやな。かわいそうやけど、生きてないやろな」
夫と二人、うなだれました。
それほど強烈な雨風だったのです。
※夫と私は同じ職場で働いております。
夫は私の上司なのです。
NHKの台風情報を見ながら、「早くどっか行ってくれ」と願うばかりでした。
台風が去ったのは、夕方4時ごろだったでしょうか。
おそるおそる外に出て見ると、色んな「モノ」が飛んできていました。
「ちょっと仕事場見てくるわ」
と夫が言うので、
「私も行く」
と言って、車に乗り込みました。
旧国道の信号は、すべて消えていました。
そうです。
周囲一帯、停電になってしまったのです。
電信柱は、ほとんどが傾いていました。
台風のすごさを物語っていました。
職場はさらにひどかったです。
飛んできた屋根瓦によって、セールスルーム(お客さんの待合室)のガラスがこっぱみじんになっていました。
子猫…
無理やろな…
と、思った瞬間。
「にゃあ」
という声が、かすかに聞こえました。
「生きとった!!!!!」
ガソリンスタンドの片隅で、子猫は泥まみれになっていました。
前日は逃げ回っていた子猫ですが、さすがに不安だったのでしょう。
私の足元にすり寄ってきました。
私は決意しました。
「店長!この子、連れて帰る!」
あの台風を生き延びた子です。
「この子は持ってる」
そう思ったのです。
顔も、手足も汚れています。
しかし私は、生きていてくれたことに感謝しました。
その頃、我が家にはすでに5匹の猫がいました。
子猫は、最初は引っ込み思案でしたが…
やがて、古株の女の子が子猫の面倒を見始めました。
子猫はすっかり、先住猫に懐きました。
子猫は、おっとりした「テン吉にいちゃん」が大好きで、いつも一緒でした。
残念ながら、テン吉にいちゃんは、昨年の11月16日に旅立ちました。
しばらく経つと、泥まみれだった子猫は、すさまじい変貌をとげました。
…なにこの子。
めっちゃ美猫なんですけど!!
それもこれも、先住猫がこぞって甘やかし、毛づくろいをしたからです。
子猫は、そんな猫たちに育てられ…
とてもヤンチャな女の子になりました。
まさに「末っ子」です。
美猫。まさに美猫。
超かわいい!!!
保護した年の冬には…
こんな光景が見られました。
あれから3年半が経ちました。
子猫は今も、元気で過ごしています。
ヤンチャが過ぎて、先輩猫に怒られるのも、ご愛敬。
あの台風21号は、とてつもない被害をもたらしましたが…
我が家に「新しい家族」を連れてきてくれました。