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三度目の殺人で誰が殺された?
三度目の殺人(2017:是枝裕和監督)
〜あらすじ〜
勝利にこだわる弁護士・重盛(福山雅治)はやむを得ず、30年前にも殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を担当することになる。解雇された工場の社長を殺し、死体に火をつけた容疑で起訴された三隅は犯行を自供しており、このままだと死刑は免れない。重盛は、どうにか無期懲役に持ち込もうと調査を開始する。三隅は会う度に供述を変え、動機が希薄なことに重盛は違和感を覚える。やがて重盛が三隅と被害者の娘・咲江(広瀬すず)の接点にたどりつくと、それまでと異なる事実が浮かび上がっていく。(moviewalkerより引用)
予告編
ネタバレ、考察を見たい方はわかりやすい説明を載せている記事があったのでリンクを貼っておきます。
https://ciatr.jp/topics/307928
上のリンクに、一番伝わってくる三番目の殺人の被害者は書いてあります。
けれど、それだけじゃないだろうと観て思ったので、
これから観る人の参考程度にでもなればいいなと思うことだけ羅列します。そういうとこだけ太文字で。
①十字架
この映画、十字架模様が印象的に何度も出ます。
主題となる事件の死体は十字架の形で燃やされていたり、三隅の飼っている鳥のお墓に十字架模様が描かれていたり。リンクにも書いてありますが、雪景色の中で、重盛、三隅、咲江が横たわるシーンでも三隅と咲江だけが十字架の形で横たわっていたり。十字架は裁かれるべきもの、十字架を背負うべきものというメッセージとして出ています。
だとすると、ラストシーン彼はなぜ十字路で立ち尽くしていたのか。
②面会室
弁護士と被告のやり取りは基本的に拘置所の面会室で行われます。
冒頭の面会、重盛は勝訴のためなら感情も捨てるしかなりドライな完璧人間のようなだけに、被告の三隅の礼儀正しさが逆に親和性を感じてしまうほどです。
面会シーンは、間に透明なアクリル板がもちろんあり、そのアクリル板によって弁護士と被告は明確に世界が違うことがわかります。
ところが途中、映画の中で二回だけ特殊な撮り方がされます。片側のアクリル板に斜めから撮るのです。
すると、アクリル板の向こうにいる人の顔はクリアに、手前側の人の顔はアクリル板に反射したものが、向こうの人の顔に重なるように投影されます。
1度目は、重盛が自分の父親と殺す人間とそうでない人間の違いを語ったすぐ後。
その特殊な撮り方があった後、面会のシーンはガラリと変わります。アクリル板の真横のから撮るようになり、まるで二人の間に板などないかのようになります。
こんな感じ。二人ともかっこいい。。
同時に、重盛は人間が変わっていくかのように三隅のような発言、行動をしていくようになるのです。
重盛が事務所でさりげなく食べるパン。彼が塗っているのは。とか。
そして終盤に特殊な撮り方がもう一度。
そのときようやくこの撮り方の意味がわかります。
「自分は器でしかない」
そして、重なっていた二人の顔が離れていく。
③ポスターの謎
予告でもでる、雪景色の中、三人が雪合戦をするシーンは実際に起きたことではなく夢の中の話です。
雪の中で横たわる三人。十字架の姿で寝ている二人と、大の字で寝ている一人。
その間には足跡が刻まれています。
ちなみにそのシーンの直前、重盛の父親の言葉が。
「人を殺す人間と殺さない人間の間には大きな溝がある」
雪国の景色のなかでは、雪合戦をするシーンしか有りません。
では、ポスターはなぜ三人には血がついているのか。
なにより、映画で血がつくなんて考えられなかった彼にまでなぜ血がついているのか。
以上です。
すごく偉そうになってしまっていてもご容赦です。
この映画の中で、事件の真相は描かれません。
観た人がどう捉えるか、です。
少なくとも僕は、三度目の殺人で殺された、殺されるのは一人ではなく、三人なのだと思っています。
それが命をやり取りするという意味だけでないとして。
〜余談〜
国家の司法に勤める知人から聞いた話。
同じような(似てないけど)裁判映画で、「HERO」が映画化された時は、裁判所にも検察にもポスターが貼ってあったけど、三度目の殺人は貼られてないとか。タイトルのせいだけかも知れないけれど、
裁判長の描き方とか、、そりゃ諸手を挙げてオススメとはできないよなって思いました。
裁判長。。ニヤリとした時は怖かった。
あと、斉藤由貴さん。
現実社会でのスキャンダルも相まって、見事に話してる言葉が、ことごとく信じられない感はもはや3Dのような感覚でした。
終わり。