改造詩人十玖号「Measly Spider」

雨に濡れた
メガロポリスのアスファルト
細い脚をシャカつかせる
俺はスパイダー 肉食生物

ビルの間に巣を張って
まぬけな獲物を待っている

空を飛ぶやつらを絡め取り
その羽根を引き裂く

ひと仕事終えて街を見りゃ
蟻の行列 死んだ顔
つばを垂らしても気付きゃしない

六本脚はまぬけばかり?
俺の脚はみんな知恵者
羽つきはめくらばかり?
街の上には俺ひとり

鳥が横を飛び去って
俺は地上に落っこちた

俺の脚は
地上を歩くには長すぎた

網を張るには地上は狭すぎた
空を墜ちた俺は
家をもたない放浪者

空の上では
蝶がひらひら舞っていた
蜻蛉が空気を切っていた
蜂が蜜を探していた

俺の背中には 羽がついてなかった

ビルの隙間に
傷ついた蛾がバタついていた

俺はそいつの羽をもいで 背中につけてみた
こいつが糸を吐けるなら 網の張り方を教えてやってもよかった

ビルを這い登って 13階から飛び降りたけど
羽の動かし方なんて 俺は知らなかった

2本の脚が
ただの棒になって地面に転がっていた

六本脚の俺は びっこを引きながら

今度はもっと大きな羽をつけよう
次はもっと低いとこから始めよう

そう思った


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